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Nostalgia world online  作者: naginagi
第六章
350/370

可愛いは紙一重

「えーっと、話によるとそろそろらしいんだけどなぁ…」


 依頼の内容からすると、湖の都市から南へ進むと川幅が広くなる辺りにリバーヴィードラが出現したらしい。

 そして私たちが今いるのがその付近なのだが…。


「それっぽい大型モンスターはいませんねぇ…」

「今空から見てみたけど、いたのは小動物っぽいモンスターだけね~。あとは岩とかが点在してるだけだったわ~」

「ふむ…代表からの依頼ということは誤情報というわけではないのだろうが…」

「んー…もしかして川の中にいるのかもしれないわね」


 なら先手必勝で一発川に打ち込んでみた方がいいかな?

 川への砲撃をどうしようか皆で試案していると、突然大きな揺れが発生し、私たちは周りを警戒する。

 だが、周りには何か動いているような生き物の姿はなく、代わりに私たちへと近付いてくるモノがあった。


「えっ…?」

「巨大な岩が…」

「動いてる…だと…!?」


 もそもそとゆっくりとこちらへ近付いてくる巨大な茶色い岩。

 それが動きを止めると中心からヒビが発生し、そのヒビが全体へと回って砕け、中から出てきたのは…。


「キュゥゥゥゥゥゥゥ!」


 4mはあるであろう巨大なカワウソだった。


「「「「あっかわいい…」」」」


 私も含めた女性陣は巨大なカワウソを見つめてつい呟いてしまう。

 仕方ないじゃん!

 だって可愛いんだもん!


「うーむ…これを退治するのか…」

「何言ってるんですか! こんな無害そうで可愛いのを退治なんてできません!」

「そうですそうです!」

「いや…だがな…」


 団長さんの呟きに、銀翼の他の女性団員が抗議の声を上げる。

 流石の団長さんも少し女性団員に押されているようだ。

 一方で、リバーヴィードラは私たちを見ながら首を傾げたり周りをキョロキョロとして様子を伺っている。

 その仕種に女性陣は更に高い声を上げて盛り上がる。


「キュゥゥゥ…フシャァァァァァァァ!」

「っ!?」


 だが次の瞬間、可愛らしい表情のリバーヴィードラが突然私たちに対して威嚇するような鳴き声を上げ、全身の毛を逆立て始めた。


「総員! 戦闘態勢に移れ! 急げ!」


 団長さんの掛け声で呆気に取られていた私たちは慌てて戦闘態勢に移った。

 だがリバーヴィードラはそんな私たちの陣形など嘲笑うかのように、巨大な尻尾を振り下ろしてきた。


「っ!? 総員回避っ!」

「なっ!?」


 エクレールさんの咄嗟の指示で皆横に飛び、リバーヴィードラの攻撃を避ける。

 実際エクレールさんの判断は正解だった。

 振り下ろされた尻尾は地面を砕き、周囲に亀裂が入るほどの威力だったのだから。


「レヴィの尻尾でもあんな威力出ないよね…」

「恐らくリバーヴィードラの尻尾はとてつもない重量か、もしくは硬度を誇っているのかと思います。少なくともあの尻尾には注意ですね」

「それに岩の中にいたってことは土属性と水属性ってところかな? 弱点が分かりにくい属性なことで…」

「下手をすると鋼鉄といったところかもしれませんね。それにリバーといったところから火も斬撃系も効きにくいのかもしれません」

「…それ私何にもできなくない?」

「まぁ…お嬢様なら何とかするでしょう?」


 全くもってトアさんは適当だね!

 私を何だと思ってるの!

 って、リバーヴィードラが尻尾を回し始めたけど一体何を…。


「タンクはすぐに盾を展開! 何か飛ばしてくるわ!」

「っ!? 『アースシールド』!」


 わたしはエクレールさんの指示を聞き、慌てて土壁を何重にして展開する。

 その次の瞬間、リバーヴィードラの尻尾から何やら黒い針のような細い物が私たち目掛けて降り注ぐ。


「くっ! 『遅延』!」

「『アースシールド』!」


 一瞬で前列の土壁が貫通され、それがあと何層かで私たちに届きそうになる前にトアさんが『遅延』で土壁が破壊される速度を遅くする。

 私はそれに合わせて更に土壁を展開させ、何とか防ぐことができた。


「エクレールさん!」

「こっちは全員無事です! アリスさんたちの方は!」

「トアさんのおかげで無事です!」


 それにしてもまさか攻撃の一発一発がここまで高威力で貫通持ちとは思わなかった。

 ここに来て一気にモンスターのレベルが跳ね上がった気がする。


「お嬢様、これを見てください」


 トアさんがリバーヴィードラが飛ばしてきた針を手に取って私に見せる。


「この針…いえ、体毛の硬度を見てください。まるで鋼です」

「完全にリバーじゃないよねこれ。鉱山の方が合ってるんじゃない?」

「もしや川の中にある鉱物を食べることで体毛が変化したのではないでしょうか」

「ってことはやっぱり…」

「はい、お嬢様の攻撃は効きにくいかと」


 本気でどうしようか…。


「フシャッフシャァァァァァァ!」


 リバーヴィードラは突然猛り狂ったかのように咆哮し始めた。

 もしかして私たちが攻撃を避けたり防いだりしたのが気に食わなかったってこと…?


「完全に怒ってますね。最初から激昂モードとか勘弁ですね」

「言ってる場合じゃ…って来るっ!」


 リバーヴィードラは勢いよく銀翼のタンクたち目掛けて突進を仕掛ける。


「前衛! 気合を入れろ! 『キャッスルウォール』!」


 団長さんたちタンク勢がスキルを使い、リバーヴィードラを受け止める。

 その止まった隙を突いて後衛の魔法勢が額目掛けて攻撃を放つ。


「キャウンッ!?」

「かったいわねぇ~」

「でも一点集中なら何とか行けそうね」


 リバーヴィードラはリンたちの攻撃を受けて後ろにのけぞるが、すぐに首を左右に振り、再びこちらを睨みつけてくる。


「これは高火力の魔法で削るのが一番良さそうですね」

「ってことは私たちはサポートってところかな」


 はてさて、苦労しそうな戦闘になりそうだ。

大変遅くなりました…。

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