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Nostalgia world online  作者: naginagi
第一章
35/370

鍛冶士ウォルター

相場の決め方って難しいですよね。

 昨日もう夜遅かったので一旦ログアウトして、今日リーネさんのところへ行きました。お店に入るとリーネさんはいたのですが、一瞬顔を引きつっていました。きっと何か厄介事が起こるんだろうなと予感してるんでしょう…。


「それで…今日アリスちゃんはどうしたのかな…?」

「リーネさん、一瞬どころか今顔引きつってますけど…」

「こんなタイミングで来るアリスちゃんに警戒しない程、私は愚かじゃないよ…」

「その発言に少し棘を感じますけど…こんなタイミングとは?」


 私が何をしたというのだ…。


「んー…掲示板見たらわかるけど、アリスちゃんやルカちゃん以外にも南で蚕を見つけたっていうプレイヤーが出たの。その件でアリスちゃんたちの装備をどうしようかなーって悩んでたところに、アリスちゃんが来たの」

「は…はぁ…」

「それで…アリスちゃんは今度は何見つけたの…?」


 リーネさんそんなに睨まないでください…悪い事してないのに…。


「えーっと…これ…なんですけど…」


 私は恐る恐るイカグモの糸を渡した。するとリーネさんはそれを受け取り頭を抱えた。


「もうホント…勘弁して…」

「りっリーネさん…?」

「なんでこうもポンポン新しい素材見つけてくるの…」

「そんな事言われても…」

「ちなみに聞くけどこれの入手はどこでどうやって…?」

「えーっと…」


 正直に言うとイカグモさんたちに迷惑かかりそうだしなぁ…。ついでにレヴィの事も言いそうになっちゃうし…。


「ちょっと今は内緒ってことにしたいんですけど…」

「……はぁ…わかったの…」

「それで…その…その糸で水着か海で泳ぐ用の服を作って貰いたいなーっなんて…」

「んまぁ…女性の初期装備のシャツとして作れば違和感はないと思うけど…。でもさすがに水着となると素材すら見つかってない現状で作ってしまうと注目されちゃうから…それをアリスちゃんが望むかどうかが…」


 まぁ今のところはシャツでいいけど、てかリーネさん水着の考察に入ってからブツブツ言い始めたけど大丈夫かな…?


「リーネさん…?」

「はっ…つい考え込んでしまったの…」

「えーっと、それで作って貰うのはシャツってことでお願いしたいんですけど…いくらになります…?」

「ちょっと待ってね。素材レベル確認するから…」


 そう言ってリーネさんはイカグモの糸を手に持ってじーっと見つめています。そういうスキルがあるのかな?


「うん、要求レベルとしては意外に低かったからいけそうなの」

「それでおいくらぐらいに…」

「んー…動物の皮で1500の麻と木綿で6000だから…これでどう?」


 リーネさんは一指し指を立てて一を表現した。


「えっと…一万?」

「うん。絹の方は1.5から2ぐらいになるかなって思ってるの。でもこれは追加効果がない場合で、今後追加効果が付くような素材を使う場合は元のから上がるの」


 そっか、まだ追加付加できるような素材がないから純粋な防御力とボーナスぐらいしかつかないんだ。例えばレヴィの鱗とかを使えば水系やスキルにある物理ダメージ軽減とか付くのかな? でもそんなの使ったら絶対疑問に思われるからやめておこう…。


「私としてはそれで問題ないです」

「じゃあ前金として半分の5000G貰っておくの。完成したら報告するの」

「ありがとうございます」

「そういえばアリスちゃん防具ばっかだけど、武器はどうしてるの?」

「初期のままですけど?」


 特に武器は変える必要ないから変えてなかったし…。私はリーネさんに5000Gを渡しながら答えた。


「アリスちゃん…武器もそろそろちゃんとしたのにしようなの…」

「しなきゃだめです…?」

「いつまでも初期武器じゃ恰好つかないの。ウォルターのところに行けばアリスちゃんならちゃんとしてもらえるはずなの」

「ウォルター…さん?」

「鍛冶でトップあたりにいる人なの。今は鉄が見つかったからってイジャードで武器作ってるはずなの」


 そんな事言われてもなぁ…。イジャードも中々広いから探すの大変なんじゃ…。


「場所わからないと思うけど、聞けば教えてもらえると思うの」

「そんなに有名なんですか」

「まぁ腕は確かだし、希望通りの武器作ってくれるから人気は高いの」

「ほえぇー…」


 そんなに凄い人なんだ。いきなり行って大丈夫なのかな?


「あー…あとは…」

「?」

「作って貰った後はちょっと一言言わないといけないんだけど…」

「感謝の言葉ですか? 当たり前ですよね?」

「んー…それはそうなんだけどちょっと変わったことをね…」


 ん? なんだろう?


「そのね…作って貰った武器の説明を聞いた後、『パーフェクトだウォルター』って言う必要があるの…」


 ……どういうこと…?


「なんかどこかのゲームだかアニメだかのロールプレイかでやってるらしくて、それをしたいがためにキャラ名もそれにしたとか…」

「まっまぁどうやるかは人の自由だし…」

「必ずしも言わないといけないってわけじゃないんだけど……言うと値引きしてくれるっていうだけで…」


 値引きしてもらえるならそれぐらい言ってもいい気がするけど…。まぁリーネさんも勧めるし、お金もギルドの依頼受けたおかげで結構貯まってるから大丈夫かな?



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 ポータルでイジャードへ飛んだ後、近くのプレイヤーにウォルターさんがどこにいるかを聞いてみたところ、結構有名なのか直ぐ着くことができた。まぁ着けたのはいいんだけど…。


「これって…えーっと…確かたたら製鉄だっけ…?」


 ウォルターさんがいると言っていた場所には、大きな炉が組み込まれた施設と何人かの職人さんが今も汗を流しながら働いている姿が見えた。すると手が空いていたのか、一人のおじさんがこちらに気付いて寄ってきた。


「おっ、お嬢ちゃんどうかしたかい?」

「えっと…ウォルターさんという異邦人を探していて…」

「大将なら今そこの店ん中にいるぜ」

「あっありがとうございますっ!」


 私は教えてくれたおじさんにお礼を言い、ウォルターさんがいるというお店の中に入った。


「おや、誰ですかな?」

「あの…いきなり訪ねてしまってすいません…。うぉっウォルターさんですか?」

「いかにも。私がウォルターでございます。可憐なお嬢さん。本日はどのようなご用件で参られたのでしょうか?」

「その…リーネさんに武器を作って貰うならウォルターさんのところがいいと言われまして…」

「リーネ嬢がそのようなことを…。このウォルター、感激でございます」


 話してる分には普通…というよりむしろ良いおじ…いさん…? なんだろうけど…。なんだろう…何で…執事服なんだろう…。鍛冶屋なんだよね…? 執事服で鍛冶ってやりずらくないのかな…?


「それでお嬢さんは何を作製してほしいのでしょうか?」

「あっ私の名前はアリスです。武器は脇差をお願いしたいんですけど…」

「これはこれはご丁寧にありがとうございます。さてアリス嬢、脇差を作る上でサイズや重さはどのように致しますか?」


 サイズに重さかぁ…。今使ってる初期武器がちょうどいい感じがするから同じにしてもらえばいいかなぁ? 急にサイズとか変わると動きとか崩れそうだし。


「この初期武器のと同じぐらいでお願いします」

「畏まりました。では少し調べさせていただきたいので、脇差を抜いて構えて頂けないでしょうか?」

「えっ? わっわかりました…」


 ウォルターさんに脇差を抜いて構えるように言われたので、脇差を抜いて構えます。その様子をウォルターさんはじっと見つめています。


「アリス嬢、少しお手を拝借してもよろしいでしょうか?」

「はっはいっ!」

「ありがとうございます。では失礼」


 ウォルターさんは私が脇差を持っている手をゆっくりと掴んでじっと見ている。なんだか服の採寸してるみたいで緊張する…。しばらくするとウォルターさんは私の手から手を離した。


「ありがとうございます。アリス嬢の持ち方は他の方に比べると少し(つば)寄りですな。となりますと、鍔寄りに握るところを合わせたほうがよろしいですな」


 今の動作にそんな意味がっ!? 細かいところにまでこだわりを持つ…。これが…職人っ!


「どうかなさいましたかな?」

「あっすいません! えっと! それでお願いします!」

「畏まりました。では材質は鋼でよろしいでしょうか?」

「はっはい! それで…お値段の方は…」

「そうですな…三万当たりで考えて頂ければ大丈夫かと。よろしいですかな?」

「だっ大丈夫です!」

「では完成しましたら連絡をしますので、よろしければフレンド登録をお願いします」

「こちらこそお願いします!」


 私はウォルターさんにフレンド登録を申請した。


「完成まで大体あちらの時間で一週間掛かると思います。なにぶん予約が他にもありましてな」

「だっ大丈夫です。では楽しみに待っています」

「ありがとうございます。では、またのお越しをお待ちしております」


 私はお辞儀をしてお店を出た。

 ウォルターさんかぁ…。あんなお歳の人でもゲームやったりするんだね。てか外見…というか年齢って変えられたっけ…? まぁそこまで気にしなくていいよね。

ゲリラ豪雨はホントに勘弁してもらいたいです…。

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