悪霊たちの宴⑭
「あうーぐるんぐるんするー…」
何とか飛鳥ちゃんを捕まえ解呪する事に成功し、私たちは一息つく。
「飛鳥ちゃん大丈夫?」
「だいじょうぶー…あううー…」
うん、まだダメっぽいね。
とはいえさっきから引っ切り無しに乗っ取られたプレイヤーによる騒ぎが聞こえてくるので落ち着かない。
幸いに騒ぎと言っても家が破壊されたり怪我を負ったなどといったことではなく、ただ単に乗っ取られたプレイヤーが好き勝手に動き回ってるだけという。
では放置してしまえばいいと思うが、放置していると今度は乗っ取られたプレイヤーが仲間を増やそうとしてくるのだ。
つまり私たちは乗っ取られたプレイヤーを放置することができず、その対処に追われてしまっていた。
「とりあえずアリスは絶対に乗っ取られないで、お願いだから」
「お嬢様、後生ですからお願いしますね?」
二人からは必至な形相でお願いされるのだが…実際どう防げと…?
乗っ取るって事はその人の精神を眠らすとか封じ込めるとかそういう事だとして…私を眠らせて安心したところをアリカに襲わせて身体の主導権を取り返す…とか?
でもこれは賭けになるからわざと乗っ取られるわけにもいかないからなぁ…。
まぁ一応アリカにお願いしておこう。
「お姉様ー!」
未だ乗っ取られた影響で不調な飛鳥ちゃんを介抱していると、海花が私の事を呼んで近付いてきた。
「海花、どうしたの?」
「はい! お姉様を見つけたので声を掛けに来ました!」
「あ、うん」
「この六日間、お姉様もコインを集めるのに忙しいと思いまして会うのを控えていましたが、そろそろお姉様成分が不足し始めたので…」
海花が身体をくねらせてモジモジし始めたのを見て、私はまたかと察した。
最近…と言っても結構前からなのだが、ルカや海花は事ある毎に私成分の補充と言って抱き着いたりして来るのだ。
それも私と会えない期間が長ければ長いほどその傾向が強くなっている。
「それより海花たちは悪霊の乗っ取りとか平気?」
「はい! あたしに掛かれば来る前に追い払うことなんて造作もありません! なんなら悪霊の十や二十が来ようとも…きゃっ!?」
どや顔をしていた海花の頭上に突然飛鳥ちゃんが被された布が現れ、海花を覆う。
「海花!?」
「即堕ち2コマとかサイテー」
そして海花も例に漏れず乗っ取られ、奇声を上げながら街を走りだした。
「申し訳…ありません…」
「ほんと、海花ってバカ」
「まぁ海花は足遅くて助かったけど…」
正直小柄な飛鳥ちゃんの方が捕まえ辛かった部分はある。
「一先ず海花は飛鳥ちゃんと一緒に大人しくしててね? セルトさんには私から連絡しておくから」
「はい…」
横になってダウンしている海花を一瞥し、私はセルトさんへ現在の状況を簡単に連絡する。
返ってきたセルトさんからの返信によると、どうやら私を見つけた海花が単独行動をしてしまったらしく、少し困っていたようだった。
セルトさんの方でも乗っ取られたメンバーがいたらしく、その対処をしていて海花と合流できなかったとのことだ。
そういう事情なら仕方ないため、海花はこちらで預かることにした。
「ということで、海花はしばらく私たちと一緒に行動します。…ルカ、そんな露骨に嫌な顔をしないの。飛鳥ちゃんも見てるんだから」
「我慢する」
「あなたねぇ…こっちはその喧嘩買ってもいいのよ…?」
「買わなくていいから海花は大人しく体調を治す」
「はい…」
「やーいアリスに怒られた―」
「ルカも煽らないの」
「はーい」
全くこの二人は…。
「それにしてもここまで妨害されるとは思いませんでしたね」
「これだけの騒ぎになると探し物を探すどころじゃないね…」
「それもありますが、一つ気になることが…」
「気になること?」
「はい」
トアさん曰く、クイーンハロウィンが探し物を手伝わせる目的ならば、私たちを妨害するのは少しおかしいとのことだ。
「となるとクイーンハロウィンとは別の勢力が妨害をしてるってこと?」
「可能性の一つとしてはあります。ただ、クイーンハロウィンの探し物が見つかるとその勢力にとって都合の悪い物のためこういった妨害をしているというのだと、このプレイヤーの行動を妨害する動きにも色々と納得できることがあるので…」
確かにクイーンハロウィンが私たちを手伝わせるならこんな妨害をする必要がないもんね。
クイーンハロウィンもこれだけ大きな騒ぎになっているならば気付いているはずなのだ。
にも関わらず悪霊たちが我が物顔で好き勝手している事から、この騒ぎとクイーンハロウィンに関係はないだろう。
となるとトアさんの言った別の勢力となるのだが…霊界の王と敵対している勢力って何だろう…?
「あっ飛鳥!? 何してるの!?」
ふと海花の慌てた声が聞こえたのでそちらの方を見てみると、飛鳥ちゃんがふわふわと空へと飛び始めたのだ。
「飛鳥ちゃん!?」
「飛鳥!?」
「飛鳥お嬢様!?」
私たちの制止など聞かず、飛鳥ちゃんはそのまま上空へと浮かんでいった。
私は慌ててフェイトとリエルに飛鳥ちゃんの側に行くように指示をする。
一体飛鳥ちゃんはどうしたんだろう…?
突然の行動(類友感




