表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Nostalgia world online  作者: naginagi
第六章
334/370

悪霊たちの宴⑬

 まずは情報収集という事で、私たちは近くにあった装飾品を売っているお店へと入る。


 「いらっしゃいませー」


 中に入ると女性店員が迎えてくれたので、一つ質問をしてみることにした。


 「すみません、クイーンハロウィンについて聞きたいんですけれどもいいですか?」

 「あら、あの子今年も現れたのね。お店の中にいて気付かなかったわ」


 どうやらクイーンハロウィンの出現についてはこの国の人々はそこまで大きなことではないようだ。


 「それで今クイーンハロウィンの探し物を探しているのですが…何か心当たりとかってありますか?」

 「探し物ねぇ~…んー…」


 店員さんはうーんと考えるが、特に気になった事などはないようだった。


 「特にお店の中に入ってきたわけでもないし、私たちが売っているような物はお目当ての物じゃないのかしらねー?」

 「そうですか…」


 んー…ってことは装飾品は探し物じゃない…?


 「そういえばクイーンハロウィンは毎年出現しているのですか?」

 「そうね、ここ数年前から現れ始めたわ。まぁ悪霊騒ぎはもっと前からなのだけれどもね」


 トアさんの質問からすると、悪霊はもっと前から現れていて、クイーンハロウィン自体はここ数年前から来始めた。

 ということは別に悪霊を抑えるためとかそういう事ではなく、ただ単純に探し物ができたから出現したという事で間違いないのだろう。

 ではその探し物とは…ということになってしまうわけだが…。


 「あんまり力になれなくてごめんなさいね」

 「いえいえ! 貴重な情報ありがとうございます」

 「ありがとうございます」

 「ありがとーございます」

 「ございます」


 情報をくれた店員さんにお礼を言い、私たちはお店を出ようとする。

 すると店員さんが何かを思い出したように「あっ」と声を出す。


 「関係あるかはわからないけれども、どのお店にもクイーンハロウィンが入ったり寄ったりしたことはないようよ」

 「どのお店にも?」

 「えぇ、女の子が好きそうなあまーいお菓子とかが売ってるお店でも、クイーンハロウィンが寄ったり買ったりしたことはなかったそうよ」

 「そうなんですか」

 「あまり役に立ちそうもないことで呼び止めてしまってごめんなさいね」

 「いえいえ、こちらこそ色々教えていただいてありがとうございます」


 装飾品を見るわけでもなく、スイーツを食べ歩くわけでもなく街へ出現したクイーンハロウィン。

 なら…クイーンハロウィンはこの街のどこを歩き回ったのだろうか?



 「何軒かに聞いてみましたが、最初のお店と同じような状況でしたね」

 「そうだね。どのお店にもクイーンハロウィンが寄ったことはないし、見つめていたわけでもないもんね」

 「となると、クイーンハロウィンの探し物は既製品じゃない?」

 「そうなら飛鳥は落し物だと思うー」


 落し物かー…。


 「クイーンハロウィンが何年も掛けて見つけれない落し物を探すのかぁ…」

 「物によりますが、小物だった場合下手をしたら埋まってるなんてことも…」

 「いくらプレイヤーがいても見つからないと思う…」

 「んー…んー…」


 脇道に逸れて悩んでいると、飛鳥ちゃんが唸るような声を出しながら両手の人差し指でこめかみを押さえている。


 「飛鳥ちゃん、どうかしたの?」

 「ねぇお姉ちゃん」

 「ん?」

 「そのクイーンハロウィンに直接探し物を聞くのってダメなの?」

 「えっ…?」

 「だって探し物を探してるんだよね? なら聞いた方が早いんじゃないかなって飛鳥は思うよ?」

 「確かにそうだけど…」


 そもそも聞いたところで答えてくれるのかな…?

 てか取り合ってくれるかどうかのところからのような…。


 「まぁここで悩んでいるよりも、飛鳥お嬢様がおっしゃったように物は試しです。失敗したならば失敗したでまた違う方法を考えればいいかと」

 「失敗八割ぐらいで行けばダメージも少ない」

 「ルカ的には二割は上手くいくんだ…」

 「まぁ、私たち異邦人(プレイヤー)だし、現地人と比べたらまだいけるかなと」


 二人とも飛鳥ちゃんの意見に賛成のようだ。

 といって私も特に意見があるわけでもないし、飛鳥ちゃんの意見に従ってみよう。


 「ならまずはクイーンハロウィンを探さないとね」

 「「「おー」」」


 さて、クイーンハロウィンは今どこにいるのかな?

 空を飛べるミラとフェイトとリエルに探してもらうのがいいかな?

 あっ、でも霊界の女王と天使のリエルは相性が悪そうだから、ここは同じ霊体…というか土地神のフェイトにお願いしようかな?

 そう思って顔を上げて空を見ると、飛鳥ちゃんの上空に何か布のような物が落ちてきているのが見えた。


 「あっ飛鳥ちゃん! 上から物がっ!?」

 「えっ? わぷっ!?」


 上から落ちてきた白い布が飛鳥ちゃんを包み、飛鳥ちゃんは布から出ようと暴れるが、布は一向に飛鳥ちゃんから離れる様子はない。

 さすがに不審に思った私たちは布の端を掴んで剥がそうとするが、布を掴もうとするとまるで意思を持ったように私たちの手から逃げていく。

 そして飛鳥ちゃんの動きが次第に大人しくなっていくと、布が小さく薄紫色の発光をするとゆらりと布を被った飛鳥ちゃんが立ち上がる。


 「飛鳥…ちゃん…?」

 「『ケケケケケ!』」

 「飛鳥!?」

 「飛鳥お嬢様!?」


 布で全身を覆われた飛鳥ちゃんは奇声を発しながら私たちから逃げていき、大通りへと出て行った。

 私たちは慌てて飛鳥ちゃんの後を追うことにした。

 それと同時に通知が入り、内容が表示された。



 ・追加クエスト【女王の探しモノ】+α



 クイーンハロウィンの出現に加え、悪霊たちが活発になった。

 その影響で悪霊がプレイヤーを襲い、乗っ取ろうとする動きがある。

 悪霊に乗っ取られたプレイヤーに対し、直接触れて『ディスペル』と唱えると乗っ取りを解除することができる。



 「これって…飛鳥ちゃんが悪霊に乗っ取られたって事だよね…?」

 「早く飛鳥を助けないと」

 「とはいえ人が多すぎて捕まえるのにも一苦労しそうですね…」


 そう、飛鳥ちゃんが大通りに逃げたせいで追いかけるのも一苦労なのである。


 「とりあえず速度は飛鳥ちゃんのステータスのままっぽいからたぶん追いつける! 問題は私たちも悪霊に乗っ取られないようにしないとだけど…」

 「特にアリスが乗っ取られたら洒落にならない」

 「誰も追い付けることはできないでしょうしね…」


 もう!

 そういうのは後でいいから!

 今は飛鳥ちゃん!


 「全く…ただの物探しじゃ済まなそうだね…」


 私たちは溜め息をつき、悪霊に乗っ取られた飛鳥ちゃんを追い掛けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 悪霊からの解放にディスペル… つまりバフの一種だった説(グラブル脳
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ