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Nostalgia world online  作者: naginagi
第六章
328/370

悪霊たちの宴⑦

 翌日、一旦三人と高級ホテルで別れ、私は一人女王様たちと一緒にお城へと向かう事となった。

 道中は護衛の兵士さんたちがそれとなく警護しており、誰も私たちがお忍びで来ている女王様一行だとは気付かれてはいないはずだ。


 しばらく歩くとお城の入り口が見えてきて、その入り口の側には女王様の夫である第三王子が兵士たちと一緒に立っていた。


「やぁエリー。昨日はよく眠れたかい?」

「えぇ、ぐっすり眠れたわ」

「そうかそうか。メアリはどうだった?」

「はい、しっかりお休みできました!」

「それはよかった。アリスさんもゆっくり休めましたか?」

「は、はい!」

「そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ。では行こうか」


 そう言って第三王子は女王様の手を取りゆっくりと歩き始めた。


「…えっとメアリちゃん…。もしかしてエリーっていうのが女王様のお名前なのかな?」

「はい! お母様のお名前はエリザベートって言います!」


 なるほど、だからエリーなのか。


 私たちは第三王子の案内の下、この国の王様が待つ謁見の間へと向かう。

 道中に城の中を巡回している兵士さんやメイドさんともすれ違ったりしたが、向こうは私のことを女王様の付き添いと思われているのか、特に注目された様子がなかったのは幸いだった。

 …まぁもしくは騒がないように言われているだけかもしれないけど…。


 「さぁここです。中で父たちが首を長くして待っています」


 いやあの、私はそんな首を長くして待つほどの人間じゃないですからね!?

 そんな私の緊張などお構いなしに第三王子は謁見の間の扉を開けて中へと入る。

 それに続いて女王様、メアリちゃんと入っていき、私も遅れないように後ろをついて部屋の中へと入る。


 謁見の間は以前入ったフェアラートのところよりは豪華さは控えめだが、飾り付けたような豪華さではなく、きちんと部屋の塗装やそれに合わせられたような纏まった内装となっていた。

 そんな部屋で床に引かれた真っ赤な絨毯の先にはどこか第三王子に似た優しそうな顔をした年配の男性が座っていた。


 「遠くからようこそいらっしゃった」

 「陛下もお元気そうで何よりです」


 私が内装に気を取られていると、声を掛けられた女王様が挨拶とともに服の裾を軽くつまんで挨拶をする。


 「メアリも元気そうでなによりだ」

 「はい、メアリは元気でございます」


 メアリちゃんも女王様と同じように服の裾を軽くつまみ挨拶をする。


 「そして後ろにいるのが例の異邦人の少女ですかな?」

 「はい。名をアリスと申します、陛下」

 「はっはい! アリスです!」


 急に名前を呼ばれてビクンとなって変な声が出てしまうが仕方ないだろう。


 「アリスさん、そんなに緊張しなくて大丈夫ですよ。本日は堅苦しいことは抜きにしようと父もおっしゃっておりましたので」


 いや、そんな事を言われても…。


 「さて、堅苦しい挨拶はこれぐらいにして移動するとしようか」


 そう言って王様は席を立ち、それに続いて護衛の騎士さんたちも行動を開始した。


 王様たちの案内で近くの部屋へと移動すると、既に中に王様と似たような少し華やかな服を着た男性が色々と食べ物や飲み物を用意していた。

 それを見た第三王子が小さな溜め息をついて口を開く。


 「兄上、そういうのはメイドたちにさせるように言われているでしょう」

 「あぁすまんな。ついお前の恩人が来るというので張り切ってしまってな」


 第三王子のお兄さんって事は、あの人は第二王子か第一王子ってことなんだろう。

 てか王子様で世話好きってことなのかな?


 「二人とも、それについては後でよかろう。今は客人を持て成すとしよう」


 王様の一声で二人の口論(?) は一旦止まり、私たちは部屋の中へ案内された。



 「相変わらず仲の良いご兄弟ですね」

 「恐れ入ります」

 「兄上は第一王子なのですからね? 今回はエリーたちだから良いものを…」

 「全くアンドリューは口うるさいな。私とてそういう場では勿論きちんとしているぞ」

 「当たり前です」


 どうやらあの男性は第一王子のようだ。

 その割には少し家庭的な一面もあるのか…。


 「っと、自己紹介が遅れましたな。私はこの国の第一王子のアルフォンスという。弟の妻であるエリザベート女王を助けていただき感謝する」

 「あっアリスです! 私も必死でやったことですのでその…」

 「そんな謙遜する事はあるまい。アリス殿のおかげで弟は悲しむ事がなくなったのだからな」

 「もっもったいなきお言葉です」


 うぅっ…やっぱり身分の高い人と話すと余計緊張するぅ…。


 「エリザベート女王よ。手紙で簡単な話は聞いていたが、実際はどうだったのか直接話を聞いてみたいのだがよいだろうか?」

 「えっ?」

 「えぇ勿論ですわ陛下」

 「メアリもお話します!」

 「ほう、それは是非聞かせていただきたいものだ」

 「私もせっかくだし聞かせていただこう。これはアルフレッドが聞いたら怒るだろうな」


 えぇー!?

 実際どうだったって…全部話すの!?

 女王様お願いだからやめてー!?



 吸血鬼イベントの詳細が事細かに話され続け、いつしか私の顔は真っ赤となり許容量を超えてぷしゅーと音を立てるようにしてぐったりとしてしまう。


 「ほう、それでは宝物よりもその少女を優先したということですか」

 「えぇ。先日も宿泊先で会いましたが大変元気そうで安心しましたわ」

 「私としてはフェアラートの騎士団の者たちより腕が立つといったことが気になりましたな。是非我が国の騎士団とも手合わせをしていただきたいものですな」

 「兄上、アリスさんもお忙しいのですからほどほどにしてくださいよ?」

 「手合わせでも何でもしますからそろそろ勘弁してください…」


 そろそろ恥ずかしすぎて悶え死にそうだよぉ…。


 「まぁ手合わせについてはこの騒動が落ち着いてからとしたいが、アリス殿はどれぐらいの期間この国に滞在するのだろうか?」

 「えっと、この悪霊たちの騒動が終わる頃なので…あと六日程です」

 「そうか、では手合わせは難しいな。騒動が終わる頃にはいつも通りクイーンハロウィンが来るだろうしな」

 「クイーンハロウィン…ですか?」


 直訳でハロウィンの女王だよね?


 「あぁ、彼の女王はこの騒動が終わる頃にやってきて街中を回るのだ。まぁ街中を回ると言っても悪霊たちの悪戯を止めるわけではないのだけどな」

 「んー…一体何なんでしょうかねぇ…?」

 「まぁクイーンハロウィンも女性であるからな。たまにはゆっくりと街を回りたいのだろうと思っている。危害も加えないため放置しているというのが正しいがな」

 「なるほど…」


 恐らくそのクイーンハロウィンが最終日のクエスト的なやつなんだろうけど…街を回るだけってなんだろ?

 探し物とかかな?


 「さて、では本題のアリス殿への感謝の品をどうするか決めるとしようか」

 「えっ?」

 「そうですね陛下、私も国からアリスさんが欲しがりそうな物をいくつか持ってきておりますので選んでいただきましょう」

 「いや、ここは息子の恩人という事で我が国が出すべきだろう」

 「それを言うなら私にとっては命の恩人なのですから私たちが出すべきですわ」

 「ははは」

 「うふふ」


 何故か突然女王様と王様の私への感謝の品をどうするかの勝負が始まってしまった。

 嫌な予感がして失礼しようと席を立とうと行動しようとしたが、それを察知したメアリちゃんにしがみつかれてしまって動けなくなってしまった。

 第一王子のアルフォンスさんや第三王子のアンドリューさんも私を逃がすつもりはないのか、出入り口を一緒に部屋の中にいたメイドさんに固めるように指示をしていた。

 あっこれ私完全に逃げ場ないやつだ…。


 「…えっと…メアリちゃん…」

 「はい、何ですか?」

 「例えばこの申し出を辞退するのは…」

 「無しです♪」

 「…はい…」


 メアリちゃんのにこやかな笑顔を見て、私は考えるのをやめた。

大変遅くなりました。


アリスへの贈り物…どうしよう…(頭を抱え)

べ、別に良い案出してくれたって良いんだからねっ!()

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