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Nostalgia world online  作者: naginagi
第六章
325/370

悪霊たちの宴④

「ルカに飛鳥ちゃーん、新しいのできたよー」

「「はーい」」


 私は追加で出来上がったクッキーを二人に渡し、再び調理場へと戻る。


「トアさん、材料の方はどう?」

「はい。今別のを焼いている途中ですので、皮を剥いてるところです。それとは別に今煮ているのがそろそろ終わるはずです」

「わかった。じゃあ煮終わる方は私やるね」

「お願いします」


 さて、柔らかくなったカボチャをバターとか砂糖とか混ぜて混ぜ混ぜしてーっと。

 んであとは型を取ってオーブンで焼くっと。

 ふぅ、そろそろ途切れるかな?



 私たちは農場で作物を収穫し終わった後、商業区へと来ていた。

 そこで大量に余っているカボチャの山の消費を手伝ってくれとお店の人に頼まれ、カボチャのお菓子を作っているところである。

 それにしても…。


「途中から来る人がプレイヤーばっかりな気がするんだけど…」

「まぁぶっちゃければ女性の手作りクッキーを貰える機会ですし、男性でしたらそう言う事もあります」

「そう言う事ってどういうこと?」

「……」


 何故かトアさんに可哀想な子を見るような目で見られた…解せぬ…。


「男性って言ったらショーゴにお菓子渡したりするけど、特に何も問題ないよ?」

「……」


 更にもっと可哀想な子を見るような目で見られてしまった。

 私…何か変な言ったかな…?


「あートアさん、アリスにそう言う事期待しちゃダメよ。この子、そういうところ本当に鈍いから」

「アリカもレヴィたちにクッキー食べさせるのはいいけど手伝ってよー」

「そこまで調理場広くないんだから三人もいたら狭いでしょうが。あたしはここでレヴィたちとのんびりしてるからいいわよー」


 暇だからと出てきたアリカが席に座って出来上がったクッキーを持ってレヴィたちに食べさせている。

 まぁ確かにアリカも調理場に入ったら狭くなるんだけど…。


「ほらほらアリスはさっさとクッキー作ってー、レヴィが大食いだからすぐ無くなっちゃうわよー」

「キュゥ!?」

「いや、どう見ても一杯食べてるのアリカだよね? 次点でフェイトとリエル」

「「むぐっ!?」」


 全くこの子たちは…。

 確かにカボチャはまだまだあるし、なるべく他の材料を使わないように調整してるから当分は大丈夫だけど…。

 そんな中、厚手の黒にグレーの布地のコートに、つばの広く頭のところが高くなっている黒い帽子を深く被って目元辺りまで隠している魔女の恰好をした少女がお店の中へと入ってきた。


「トリック・オア・トリートです!」

「ほらアリカ、クッキー渡してあげて」

「そうね。あげなかったら悪戯されちゃうものね」


 そう言ってアリカは立ち上がり、持っていたクッキーを少女の口元へとゆっくり移動させる。

 少女は口元へ近付いたクッキーをパクっと咥える。


「美味ひいです!」

「そう、よかったわ」

「アリカ、作ったの私とトアさん」

「ふふっ、相変わらず元気そうね」

「へっ?」


 少女の後からお店に入ってきた女性は、先に入ってきた少女と同様に魔女の恰好をしていたが、その顔には見覚えがあった。


「なっななななんで貴女が!?」

「あら、そちらの女性は貴女の…お姉さんかしら?」

「いえいえ! それよりも何で女王様がここにいるんですかー!?」


 そう、私たちの前に現れた女性は吸血鬼イベントで出会ったフェアラートの女王様だった。

 って事はそっちの少女はまさか!?


「えへへ。アリスさん、お久しぶりです」


 深く被っていた帽子を取り顔を見せた少女は女王様の娘のメアリちゃんだった。



「ど、どうぞ…」

「ありがとう」


 女王様とメアリちゃんの対応のため、調理場をアリカと変わってもらい二人を席へと案内する。

 大量のカボチャの消費のため、一旦お店を閉めて外でルカと飛鳥ちゃんに出来上がったクッキーを配るという形を取っていたため、お店の中には私たち以外誰もいない。

 正直こんな形で二人と会うとは思っていなかったため緊張している。


「それで、あちらの貴女似の女性はどなたなのかしら?」

「えーっと…少し説明が難しいのですが…」


 女王様とメアリちゃんにアリカについての説明をする。

 メアリちゃんはわかっていなかったが、女王様は何となくわかったようだ。


「それにしても異邦人はそんな事もできるのね」

「たぶんアリカについては私限定な気もしますけど…。それにしても何故女王様たちがここに?」

「この国は私の夫がいた国なのよ。それで今日は収穫祭という事でお忍びでね」

「なるほど…」


 フェアラートの女王は別の国から婿を入れるって言ってたけど、それがこの国だったのか。


「あっそういえばメアリちゃん」

「はい、何でしょうか?」

「あの時ミラの事心配してたし、話してみる?」

「よいのですか?」

「うん、ミラもいいよね?」

「はい、勿論です」

「じゃあミラちゃん、向こう側の席で話しましょう!」

「わかりました」


 そう言ってミラとメアリちゃんは席を離れて二人っきりで話し始めた。


「ブルートの娘も元気そうでなによりです」

「ミラにはお世話になっています」


 主に良識人とストッパーとして…。


「それでフェアラートの方はどうですか?」

「えぇ、特に問題もなく平穏よ。つい先日も穏健派の吸血鬼たちと再び和平交渉を行いましたからね」

「ではもう吸血鬼問題は解決という形ですか?」

「概ねね。まぁ中にはまだ納得しきれていない市民もいますが、主な被害を受けていた王族がそれを良しとしていますからね」

「まぁ平和ならなによりです」

「そういえばあの時は貴女が目を覚ましたのも遅かったですし、そのせいであまり歓迎もできなかったし、次来た時は大々的に歓迎しましょうか?」

「けけけけ結構です!」


 絶対加減なんてしないで国を挙げて歓迎されそうな気がするし!


「ふふっ、冗談よ。まぁ貴女と貴女と一緒にいた女の子に関しては自由にお城へ入れるようにはしてあるから気軽に遊びにいらっしゃい」

「流石に気軽に遊びに行くのはちょっと…」


 また目立つことになるもん!

 てかまだフェアラートの場所もわかってないし…。


 それからしばらく女王様たちと話をし、二人はこの後旦那さんと合流するということで別れることとなった。

 ミラもメアリちゃんと一杯話したのか、珍しく満足気だった。

 意外な人と出会ったが、これもある意味悪戯なのだろうか?

 そう思うと少しおかしいが、こういった悪戯なら歓迎だ。

 さて、次はどんな悪戯が来るのだろう。

 少し楽しみになってしまう私がいるけど、これは内緒だ。

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