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Nostalgia world online  作者: naginagi
第六章
323/370

悪霊たちの宴③

「さて、これでハロウィンコインは一枚手に入ったわけですね」


 ミニゲームのダックアップルをクリアーし、私たちは全員ハロウィンコインを一枚ずつ手に入れることができた。

 ただ、先程の事から連続で同じミニゲームをクリアーしてもコインは手に入らないようだ。

 とは言っても、私はそこまで今回のイベントに関しては焦ってはいないし、のんびりとやるつもりだ。

 ルカやトアさん、それに飛鳥ちゃんもそこまでハロウィンコインに固執していないようで、一緒に楽しみながらイベントをやろうということになった。


「まぁのんびり歩いてればミニゲーム見つかると思う」

「飛鳥、仮装とかしてみたーい」

「仮装かー…」


 ハロウィンでの仮装ってなると基本的には魔女とかカボチャ被ったりとかだっけ?

 いやまぁテレビで見る渋谷とかのあれはちょっとやりすぎな気もするけど…。

 確かハロウィンの仮装ってお化けとかに人間として見つからないように紛れるためとかなんとかだったような…。

 んーわからないし今度調べておこう。


「それにしても本当に広い街ですね。少し歩いただけですが、案内板などによれば農業地に住宅地に商業地、それに役場といった具合にきちんと整備されています。余程土地に余裕がなければそのように区切って開発はできないでしょう」

「プレイヤー側からしたらそうやって区切られた方が移動とかしやすいから楽だからいいけどね」

「確かに。バラバラだと探すの大変」

「飛鳥はお買い物は基本的に通販だから色々回るのも好きだよー」

「…飛鳥、今度買い物行こう」

「ルカお姉ちゃんと買い物だー」


 うん、ホントルカと飛鳥ちゃん仲良くなったなー…。

 まぁルカは元々こういう気遣いできる子だもんね。

 …少しぶっ飛んでるけど。


「では一先ず農業区へと向かいますか? ハロウィンは元々収穫祭ということでしたし、何かしらのミニゲームがあるかもしれません」

「収穫でミニゲーム…」

「お芋掘り?」

「それは…多く掘った人の勝ちってこと?」

「…たぶん?」


 …ま、まぁ行ってみればわかるよね。


 私たちは農業区とされている方向へ進むと、いつしかいくつもの畑や果樹園が道なりに並ぶ道へと出てきた。


「一杯作物あるー」

「美味しそう…じゅるり」

「確かに十分熟しているようですし、食べごろですね」

「皆、無断で取っちゃダメだよ? 特にルカと飛鳥ちゃん」

「も、勿論わかってる」

「りんごー…」

「リンゴなら今度私のお店で食べさせてあげるから」

「なら我慢するー」


 ふぅ、これで無断で取ったりしないだろう。

 さてと、ミニゲームをやってそうな場所はあるかなー?

 道なりを進みながら周りを見ていると、ルカが何かに気付き、私の服の裾を軽く引っ張る。


「アリス、アリス、あれかも」

「んー?」


 私はルカの指差した方を見る。

 遠めではっきりとは見えないが、ルカの指差した方角から少し騒がしい声のような楽しそうな声が微かに聞こえてきた。

 ともかく行ってみようという事で私たち四人はその声がする方へ向かった。

 するとそこにはカボチャの被り物を被った状態で作物を穫ったりしている人たちの姿が見られた。


「これは悪霊が作物を穫ってるって事かな?」

「その割には穫り方が丁寧に見える」

「これは一体…」

「カボチャ美味しそー」


 私たちに気付いたのか、一番近くにいたカボチャを被った人がこちらへ近付いてくる。


「おや、新しいお客さんですかな?」

「えーっと…」

「あぁすいません。被り物を被ったままでしたね」


 そう言ってカボチャの被り物を外して顔を見せたおじさんは私たちに説明を始めた。


「この農業区ではいつからか収穫の時にはこのようなカボチャの被り物を被りながら収穫をするという文化があるんですよ。まぁ何でかは知らないんですけどね」

「そう…なんですか…」

「それに悪霊たちの悪戯なのか、収穫物をいくらとっても次から次へと生えてきちゃうんですよ。それで今お客さんたちに遊びも兼ねて収穫を手伝ってもらっているんです。遊び内容としては30分でどれだけ穫れたかを競うという形にしてね。皆さんもやってみますか?」

「まぁ収穫するだけなら問題ないし、皆もいいよね?」


 私が皆に尋ねると、頷いてくれたのでやることにした。


「ではこちらに置いてあるカボチャの被り物を各自被ってください。ちゃんと目の部分はくり抜いてあるので周りも見えるので心配ないですよ」


 それを聞きルカと飛鳥ちゃんが飛び出すように思い思いのカボチャの被り物を選び始めた。

 私とトアさんは二人の様子を眺めつつ、適当なカボチャの被り物を手に取りそれを被る。


「おぉ、結構視界が狭まるね」

「確かにこれは横が見えないので周りに気を付けないといけませんね」


 くり抜かれたと言っても、被り物ということなのでくり抜かれた穴と目までは距離がある。

 正直言って横は見えないと言ってもいいだろう。


「さて、では皆さん被ったようですね」


 ふと声がした方を向くと、先程私たちに声を掛けたであろうおじさんもカボチャの被り物を被っていた。

 うーん、これはもう声でしか相手を判断できないなぁ…。


「ではこれから30分でどれだけ収穫できるかを競ってもらいます。穫れた物は近くに置いてある籠に入れて交換所と書かれている場所へ持っていってください。では始めてください」


 よーし、頑張るぞー。

 ルカたちは近くの作物を穫るようだし、私は安全も兼ねて少し離れたところで取ることにしよう。


 「さてと、この辺でいいかな?」


 私は腰を下ろし、作物の葉を見て収穫しても良さそうな物を選んで穫ることにする。

 恐らく何でも収穫すればいいという事ではなく、収穫するには早すぎる作物も埋まったりしているのだろう。

 さて、まずは様子見として作物を傷付けないように周りを掘ってっと。

 っと、これは大根っぽいね。

 ある程度掘ったら葉を両手で掴んでっと、そして垂直に抜く!

 垂直に抜くように力を入れると、ポンっと音を出して大根が穫れる。

 うん、この音は何回聞いても気持ちいい。

 この調子で作物を穫っていこう。



 結構楽しく収穫していると、もう30分経ったのか終了の笛が鳴り響いた。


 「はーい、皆さんお疲れさまです。では収穫した作物を持って交換所へ向かってください」


 あら、もう終わりなんだ。

 結構楽しかったからもっとやりたかったけど、時間なら仕方ないね。

 私は収穫した作物を籠に入れていく。

 すると近くに気配を感じたため、気配のした方を向くと、カボチャの被り物を被った小さな子供が立ってこちらを見つめていた。


 「君、どうしたの?」

 「お姉ちゃん、作物一杯穫れたね」

 「うん。君は案内してくれたおじさんの子供かな?」

 「違うよ」


 そう言って男の子は私の横をすれ違うように歩み始めた。

 そしてすれ違いざまに小さく呟く。


 「でもこれだけ一杯穫れたら僕の時みたいに飢え死にしなくて済むよね」

 「…君は…」


 私がすれ違った男の子の方を向くと、そこには誰もおらず、ただ作物が埋まった畑があるだけだった。

 私は男の子が去った方向を少し眺めた後、交換所へと向かうことにした。


 「もしかしたら収穫物が次々と生えてくるのって…」


 その言葉に答える者は誰もおらず、爽やかな風がくり抜かれたカボチャの穴を通して私の頬を撫でていった。

ぷしゅー…(空気が抜ける音

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