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Nostalgia world online  作者: naginagi
第六章
322/370

悪霊たちの宴②

「んっ…」


 突然の転移に驚いて咄嗟に閉じていた目を開けると、そこにはレヒトのような華々しさや吸血鬼イベントの時に所属していたフェアラートのような古風な感じではなく、穏やかな気候と優しい風を感じる何とも落ち着いた雰囲気のある街が映っていた。


「ここが今回のイベントマップかな?」

「なんか田舎っぽいけど落ち着く」

「お日様ポカポカする―」


 近くにいたルカと飛鳥ちゃんも周りの景色を見ながら思い思いの感想を口にする。

 てか飛鳥ちゃん、そんな道の真ん中で寝っ転がっちゃダメでしょ…。

 私は飛鳥ちゃんを起き上がらせて一先ず辺りの様子を伺う。


「とりあえず襲撃系のイベントっていう事じゃなくて安心かな?」

「まぁ社長もハロウィンコインを集めるイベントと言っていましたし、さすがにそういうのはないかと思います」

「じゃ、俺は適当にぶらぶらするかー。じゃあな嬢ちゃんたち」

「またねー」


 早速単独行動を開始するアワリティアに飛鳥ちゃんが手を振って見送る。

 あれ? トアさんはいいのかな?

 チラッとトアさんの方を見ると、深いため息をつくがすぐに表情を戻して私たちの方を向く。


「ここでじっとしているのもあれですし、少し歩いてイベントやらミニゲームやらを探すとしましょうか」

「そうだね。ルカと飛鳥ちゃんも一緒に動く?」

「もちのろん」

「飛鳥もお姉ちゃんたちと行くー」


 よし、なら四人で行動かな。


 少し歩いていると、草原のように草が敷かれている広場が見え、そこにはいくつもの水の張った小さなビニールプールが置かれていた。


「何だろあれ?」

「さすがに泳ぐには小さいし時期的に悪い」

「なんだろう?」

「ともかく行ってみますか?」

「そうだね」


 広場へ入ると、少なくない人数の人たちが何やらビニールプールに向かって顔を突っ込んでいる姿が見えた。

 私たち四人は何の儀式かなと不思議そうに首を傾げていると、突然目の前にカボチャの被り物を被ったお化けが現れた。


「うわぁっ!?」

『ケケケ♪ お嬢ちゃんたちもリンゴ取る? 取る?』

「り…リンゴ?」

『あそこ♪ あそこ♪』


 カボチャの被り物を被ったお化けはビニールプールを指差す。

 とりあえずお化けに攻撃する気はないようだ。


『口だけで取る♪ 取る♪ 歯立てちゃダメ♪ 取れたらコインやる♪』


 お化けの言葉にトアさんが納得したように頷く。


「どうやらこういったものがミニゲームのようですね」

「口だけでリンゴを取るって事は、ダックアップルかな」

「飛鳥知ってるよ。確かハロウィンのイベントだよね」

「ほへー…」


 皆詳しいなぁ…。

 感心している私を後目に、お化けは新たに広場へ来たプレイヤーたちの方へ移動して説明をしている。


「まぁダックアップルなら危険はなさそうですし、気楽にできますね」

「じゃあ飛鳥からやるー」


 そう言って飛鳥ちゃんは近くで空いているビニールプールへ近付きちょこんと腰を落とす。

 ビニールプールにはリンゴが何個か浮かんでおり、同時に何人もプレイできるようになっていた。


「お姉ちゃんたち見ててねー、えいっ!」


 飛鳥ちゃんは勢いよくビニールプールへと顔を突っ込み、リンゴを咥えようとする。

 だが飛鳥ちゃんがリンゴを咥えようとすると、リンゴの表面で滑って上手く咥えられず逃してしまう。

 しかし何度かリンゴを咥えては逃すのを繰り返すと、コツを掴んだのか、飛鳥ちゃんは見事リンゴを咥えて取ることができた。


「ふぉふぇふぁー」

「飛鳥ちゃんおめでとう」

「おめでとうございます」

「飛鳥、頑張った」

「えふぇふぇー」


 飛鳥ちゃんがリンゴを咥えながら照れるように頭を掻いていると、咥えていたリンゴが消え、宙から金色のコインが飛鳥ちゃんの手の上に収まるようにゆっくりと落ちてきた。


「やったー」


 なるほど、クリアーすると咥えたリンゴと交換って感じなんだね。

 って事はここで何度もやれば一杯手に入るのかな?

 そう思って周りを見てみると、私と同じことを考えたのか連続してリンゴを口に咥えているプレイヤーがいた。

 だが、そのリンゴは消えるだけでコインが落ちてくる気配はなかった。


「どうやらミニゲームにも再挑戦…というよりコインを取得できるリキャストタイムみたいなものがあるようですね」


 まぁ簡単なミニゲームをそう何度もやってコインを集められたら簡単すぎるもんね。


「うぅー…飛鳥リンゴ食べたかった―」


 せっかく手に入れたリンゴが消えた事にがっかりしたのか飛鳥ちゃんが少ししょぼくれる。

 するとそんな飛鳥ちゃんの手に上にリンゴが出現した。

 どうやら食べたい欲求とかがある場合はコインと交換後に再度出現するようだ。


「じゃあアリス、今度は私と一緒にやろう」

「そうだね、仕様はわかったし同時でいいかもね」


 飛鳥ちゃんがリンゴを美味しく食べてる間、今度は私とルカがやることになった。


「えいっ!」

「んっ」


 私たちは同時にビニールプールへと顔を突っ込む。

 てか水冷たっ!?

 よく飛鳥ちゃん平然としてたなぁ…。

 まぁリンゴの取り方は飛鳥ちゃんのを見てたから何となくはわかった。

 あんまり強く咥えすぎず弱すぎずぐらいで…っと!

 私は飛鳥ちゃんを参考にしたおかげでスムーズにリンゴを咥えることができた。

 リンゴを咥えてビニールプールから顔を出して少し経つと、咥えていたリンゴが消えてコインが手の上に落ちてきた。

 よし、どうやらこれでクリアーのようだね。


 私に遅れてルカもリンゴを咥え、ビニールプールから顔を出してコインと交換する。

 さて残りはトアさんだ。


「では失礼して…」


 結果からトアさんもリンゴを咥えることができた。

 ただ…なんだかやけにリンゴを咥える仕種が色っぽくて少し見とれてしまった。

 そして何故かギャラリーもいてリンゴを咥えていたトアさんも首を傾げていた。

 うん、やっぱりトアさんは仕種も大人だ。

大人の色気(意味深

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