嫉妬VS神の光⑤
私は元の巨大な大きさに戻ったレヴィの頭の上に乗る。
レヴィはそれを確認し、ウリエルの元まで飛ぶために尻尾をバネのように溜め、その巨体に見合わぬ速度でウリエルへ突っ込む。
「まさかリヴァイアサンとは思わなかったわ! でもっ!」
ウリエルは持っていた炎の剣を大きくし、突っ込んできたレヴィの巨体を受け止める。
「くっ! 流石に硬いわね!」
驚いたのはこっちの方である。
まさか巨大化しているレヴィの突撃を受け止めるなんて思わなかった。
やはりレヴィと対なだけはある。
「GYUUU!」
「っ!」
頭を抑えられていたレヴィはそこを支えにし、今度は尻尾を鞭のように使い振り降ろす。
だがウリエルはその攻撃に気付き、既の所で回避する。
そして支えを失ったレヴィはそのまま落ちていき、地面へと落下する。
正直私は振り落とされないようにするのでいっぱいいっぱいである。
「ふっ、さすがに飛べない以上この戦い私の方が有利ね!」
「GYU…GYUUUUUUU!」
レヴィは悠々と空を飛んでいるウリエルを見つめ、一息ついた後、大きな鳴き声を上げる。
私は咄嗟に耳を塞ぐが流石に至近距離に近いため少しバランスを崩して膝をつく。
叫ぶなら叫ぶって教えて欲しかったな…。
「ならお母さんは私がフォローするね!」
いつの間にか出てきたネウラが蔦を伸ばし、私を固定するようにレヴィの身体に巻きつかせる。
「ありがと、ネウラ」
「うんっ! それよりレヴィお兄ちゃんも本気になったっぽいよ」
「えっ?」
ネウラが指を差した海側を見ると、大きな津波がいくつもこちらに迫ってきているのが見えた。
「なっ!?」
ウリエルは更に上へ飛び津波を避ける。
だがレヴィはその津波に向かって勢いよく突っ込む。
「ネウラっ! 息を思いっきり吸い込んで!」
私とネウラは息を思いっきり吸い込み、津波に備える。
しかし、その津波はレヴィを避けるように空間が開き、レヴィはその津波の上を泳ぐように上へと登っていく。
そして津波にできた空間の出口へと着き、レヴィはそのまま津波の上でじっとウリエルを見つめる。
「嘘でしょ…!?」
「まさか大罪の力がここまでとはねぇ…」
「レヴィお兄ちゃん凄い!」
レヴィが作り出した津波はそのまま山脈を襲うように流れていくのではなく、まるで意思を持ったように宙に留まり、いくつもの太い水の通路を作っていた。
ただ全ての水が宙に留まっているというわけではなく、一部は山脈の低い部分を覆うように水没させていた。
「GYU…」
「くっ!」
「さて、これで空中での優位性は無くなったかな?」
むしろ水の通路が展開されているため、レヴィの方が有利だろう。
ウリエルもその事を悟ったのか、苦虫を噛み潰したような表情をする。
「さぁどうする? 今なら天界へ逃げても見逃すよ?」
「うるさいっ! 少しぐらい不利を覆したぐらいで調子に乗らないで!」
そう言ってウリエルは両手を上に伸ばす。
「これでも喰らいなさい! 『メテオフォール』!」
ウリエルが唱えると同時に、空から直径5メートル程の隕石がいくつも降り注いで来た。
「っ! レヴィっ!」
「GYUU!」
流石にあれが全て落下した場合、少なからず王都にも影響が出るだろう。
私はレヴィにあの隕石を迎撃するように指示をする。
レヴィは思いっきり息を吸い込み、溜めた後水弾を落ちてくる隕石の数だけ撃ちだす。
「ふぅ…」
レヴィのおかげで隕石は全て撃ち砕くことができた。
まさか土系統の魔法であんなことまでできるとは。
曲がり形にも土を司る天使といったところだろうか。
「それにしてもウリエルは…」
隕石の方に気を取られてウリエルを見失ってしまったため、私は周りを見渡すが見つからない。
となると…。
「ふんっ! いくら大罪が強くても契約者さえ仕留めれば問題ないんだからね!」
恐らくレヴィの作り出した水の通路に隠れながら私たちの背後に迫ったのだろう。
奇襲が決まったと思ったウリエルは炎の剣を私目掛けて振るう。
「なっ!?」
ウリエルの剣を私は振り向き様に打刀で受け止める。
いや、そんなに驚かなくても…。
てかやっぱりこの子、STR自体はそこまででもないんだね。
よくよく考えれば最初の時は未解放状態のミラと競り合ったけど、あれは炎の剣による熱でミラの槍が溶かされただけだから力負けしたわけではないんだよね。
それにレヴィのお父さんも言っていたウリエルの【忍耐】スキル。
あの能力はHPの減少具合で威力が上がるっていうだけで、与えるダメージは上がるけど筋力や頑丈さといったSTRやDEFには影響ないんだろうね。
それなら私のSTRで十分押し切れる!
「なんで反応できるのよ!」
「私も視覚外からよく攻撃するからそういうのには注意してるんだよね」
そもそもあんな大きな声出してるんだもん。
気付くなって方が無理だよね。
奇襲が失敗したことで少しムキになっているのか、ウリエルは私と鍔迫り合いしたまま引こうとはしない。
だったら!
「レヴィ! 私ごとそのまま水没してるところに押し込んで!」
「GYUU!」
「はぁっ!?」
私と鍔迫り合いしているため、下手に引くと斬られかねないこの状況。
私はウリエルに逃げられないようにギリギリの力加減で鍔迫り合いを続ける。
そしてレヴィが私の位置が変わらないようにうまく身体をウリエルが下にくるように動かし、そのまま落下を開始する。
「ぐっ!」
「さぁ今度は水中戦だよ!」
「ん…な…もん! やるわけないでしょ! 『アースグレイブ』!」
「GYU!?」
突如水没地点から飛び出てきた太い土の槍がレヴィのお腹の辺りにぶつかり、レヴィの動きが一瞬止まる。
その隙を突き、ウリエルは私に斬られるのを覚悟で身を反転させる。
ウリエルが身を反転させた際に一斬りできたが、このままじゃ私が一番下になってしまう。
まずいと思った瞬間、私が水面に叩きつけられないようにレヴィが身をねじる。
レヴィの身体が強く水面に叩きつけられ、私も揺れで飛ばされそうになるが、ネウラのおかげで何とか飛ばされずに済んだ。
「レヴィ、大丈夫?」
「GYUUUU!」
レヴィは首を左右に小さく揺らし、もう大丈夫という感じで鳴き声をあげる。
「危なかったぁ…」
一人何とか回避できたウリエルは安堵の声を漏らす。
あの土の槍が間に合わなかったり、レヴィに効かなかったら水中に引きずり込めてワンサイドゲームになってたかもしれなかったのに…残念。
水中では少なからず【水術】スキルを持ってる私の方が有利だし、さすがに水中じゃあの炎の剣は使えないだろう。
それにしても土魔法…結構エグイの多くない?
隕石に太い槍って…。
元々攻撃系が少ないと思ってたんだけど、もしかして上になっていくと範囲系の攻撃魔法が増える感じなのかな?
「ふんっ! 私に一発与えるとはやるわね!」
「それはどうも」
さて仕切り直しと行きますか。
辛い(何がとは言わない




