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Nostalgia world online  作者: naginagi
第六章
296/370

嫉妬VS神の光②

 レヴィのお父さんの住まう海底神殿から出た後、私は急いでリーネさんのお店へと向かった。


「リーネさーん」

「おっ来たにゃ。奥についてきてくれにゃ。ウォルターも待ってるにゃ」


 私が来た事に気付いたリーネさんは、店の方を店員に任せて私を奥へと案内する。

 奥の部屋に入ると、ウォルターさんが座って飲み物を飲んでいた。


「これはこれはアリス嬢、お早いご到着で」

「いえ、こちらもタイミングがよかったので」

「タイミング? もしかしてアリスちゃんもあの天使に挑むのかにゃ?」

「挑むというか…その…」


 私は事情を知っている二人に事の経緯を話す。


「にゃるほどー、だからあの天使が出現したって事にゃのかー」

「それでアリス嬢、お話を聞く限り天使はかなりの者という事ですが勝算はあるのでしょうか?」

「色々と情報は聞いたのであとは実際に戦ってみない事には何とも…。ただ最初の時にある程度の動きは見たのでたぶん何とかなるかなぁと」

「なるほど。それでタイミングがよいということですな」

「はい」

「ならばさっそくお渡しいたしましょう」


 そう言うとウォルターさんは鍵の掛かったケースを机の上に置く。

 それをリーネさんが持っていた鍵で開けてケースを開ける。

 ケースの中には青い着物が綺麗にたたまれて置かれていた。


「こちらがアリス嬢からお譲りしていただいたリヴァイアサンの鱗を使って作製した着物となります。どうぞご着衣ください」


 私はウォルターさんに言われたまま着物を手に取る。

 そして私の所持品扱いとなったため、装備を変更して着替える。

 デザインとしては色が青くなったこと以外は以前のとあまり変わっていない…というか結構気に入ってた部分があったため同じようなのと言っていたせいもあるが、模様がユリの花から別の花に変わっていた。


「えっと、これは何の花なんですか?」

「それはセリにゃ。花言葉は清廉で高潔にゃ。大罪の素材で作られた装備でもアリスちゃん自身は花言葉のような人という事で変えたにゃ」


 なるほど…。

 でも私ってある意味欲に塗れてるから清廉という事ではない気が…。

 それにしてもこの着物、効果が凄い。



 リヴァイアサンの着物(蒼)【装備品】

 製作者:リーネ、ウォルター(合作)

 DEF+70


 追加効果:ダメージ軽減(中)、火・水属性ダメージ軽減(中)、自動回復(小)、隠蔽

 詳細:未成熟のリヴァイアサンの素材を多く使われて作られた着物。見た目は着物であるが、内側には鎖帷子のようになっているため金属製品と同等の防御力を誇り、多くの素材を使われたため素材となったモンスターの能力が多く出ている。追加効果の隠蔽により何の着物かは他人からは視ることができない。



 以前と比べてDEFが二倍ぐらいになってる。

 その分DEXはなくなってはいるが、その代わりの追加効果がこれまた凄い。

 ダメージ軽減に加えて自動回復まで付いている。

 つまりこれでアリカを出すことの負担が減ったという事だ。


「いやーこれを仕上げるのは大変だったにゃー」

「そうですね。いくらアリスさんが防衛イベントを優先させるようにと言ってくださいましたが、ここまで待たせてしまったのは心が痛みました」

「他のプレイヤ―の分は割と早く作れたんだけどにゃー」

「流石に一部位ならともかく、全身防具ですからね。それも着物と合わせたものですからかなり手間取りました。ですがおかげで未成熟のリヴァイアサンの鱗の加工はもう大丈夫です」


 どうやら私の防具の影響でウォルターさんの腕がまた上がったようだ。

 これ以上腕が良くなったらどうなってしまうのだろうか?


「ちなみに最近アリス嬢と同様に【切断】スキルを持ったプレイヤーが多くなっているので、その対策としてアリス嬢に教えていただいた切断部分である関節部を柔軟性を保持したまま保護するようにしております。勿論首回りの僅かな襟にも柔軟性を兼ね備えつつ切断されない工夫をしております」


 言われて襟を確認してみると、確かに金属っぽい何かが入っているようだ。

 しかもきちんと触れて確認しないと気付かないぐらいで。


「襟にもこんな工夫をして大変じゃなかったんですか?」

「いえ、依頼を受けた以上制作者は完璧に熟すことを求められます。勿論実際に切断されないかも試し済みです」

「あれ? ウォルターさんって【切断】スキル持ってたんですか?」

「以前は持ってなかったので取りました。そしてリーネ嬢に着ていただいて試してみました」

「えっ!?」

「いやぁー流石に自分が対象になるのは怖かったにゃー。アリスちゃんが皆のトラウマって呼ばれる所以を再確認したにゃ」

「どういう事ですか!?」


 でも対【切断】スキル用に関節部まで工夫してくれるなんて…。


「えっと、それで結局お代はいくらになるんでしょうか? 以前渡すときに言うって言っていたので…」


 一応イベント等で貯めたお金があるからある程度は払える!

 ただ全身加工でかなり大変だったって事を考えると普通に考えて百万ぐらいしそうだよね…?


「その事にゃんだけど」

「私の方はお代は結構です。そのお代に変わる物を既に受け取っておりますので」

「えっ!?」

「まぁアリスちゃんも流石に無償って事になると気が引けると思うから、一応私が20万Gで手を打つことにしたにゃ」

「いやいや! もっと掛かりますよね!?」


 百万としても一人頭五十万だし!


「そのお代の分の経験をさせていただいたのですよ。アリス嬢からお預かりしたリヴァイアサンの鱗、これは今までの水属性の素材とはランクが違いました。そのため加工がより大変で何個か失敗して無駄にしてしまいました。ですがおかげ様で水属性の素材の扱いをより上手く熟せるようになり、今まで試せなかった事もできるようになりました。つまり、他の水属性の素材の扱いを上手くできない生産職に比べ、私は何歩も前を進める事になったのです。これが如何ほどの価値になるか、リーネ嬢ならおわかりになりますよね?」

「そうにゃ。有名ににゃる、様々な加工ができるってのはネームバリューににゃるのにゃ。それはつまりお店の人気にも繋がるし、スキルを上げる経験にもにゃるにゃ」

「おかげさまで私も【加工】スキルから派生した新たなスキルである【水属性素材加工】という今までに見つかっていなかったスキルを手に入れることができました。全てはアリス嬢が加工を私に依頼していただいたおかげです」

「いっいえ…私はそこまで大層な事は何も…」

「何をおっしゃいますか! アリス嬢が――――――」



 ウォルターさんのマシンガントークがようやく終了し、何とか落ち着いてくれた。


「申し訳ございません。つい熱くなりすぎてしまいました」

「いっいえ…大丈夫です…」


 さっきから褒められすぎてもう私の顔は真っ赤である。

 私はもう他に何も言われないようにリーネさんにお代の二十万を渡す。


「うん、確かに受け取ったにゃ」

「あう…」

「でもアリスちゃん気を付けるにゃ。いくら防具の性能がよくにゃっても相手は手強いにゃ」

「はい。ですので油断せずに行きます。というか…」

「というか?」

「本気の本気でやるので絶対周り巻き込みます…」

「Oh…」

「アリス嬢の本気の本気…となりますと、プレイヤーイベント以上にという事ですか?」

「それぐらいしないといけないぐらいって思ってもらえればいいです」


 出し惜しみとかしてる余裕ないからね。


「とはいえ、流石に他のプレイヤーがそれで納得するかどうかが問題ですね」

「それにわざとじゃなくても無差別にPKなんてしたら、その後アリスちゃん大変にゃことににゃると思うにゃ」

「もうそれも覚悟済みです」


 私の言葉にリーネさんとウォルターさんが顔を見合わせる。


「…わかったにゃ、アリスちゃんがそれほどの覚悟で赴くなら私たちは何も言わにゃいにゃ」

「まぁ一種のアリス嬢のペットの個人イベントと思えばいいでしょう」

「てかさっきの話からすると、本来はその天使と一緒に行動するプレイヤーがアリスちゃんと戦闘するっていう流れにゃ気がするし、もうそういう意識で巻き込んじゃえばいいんじゃにゃいかな?」

「いきなりぶっ飛ばないでください…」


 いやまぁ確かに私もその可能性はあるかなーって少しは思ったけどさ…。

 ともかく、これで後はミールド山脈に行くだけだ。

(何がとは言わないが)止まるんじゃねえぞ…(止まらないとは言っていない

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