百鬼夜行⑦
森へと帰還した私たちは、援軍に来てくれたショーゴたちにここで休んでもらえるように司令部に連絡した。
返答としては、少数な事もあるため構わないとのことだ。
なら少しぐらい労わってもいいよね。
「ってことで、ささやかながら軽く料理を用意したので、皆さん是非食べていってください」
私の待機拠点である木の上の家に皆を招待する。
「おいアルト! 何かすげえぞ!」
「ノイ…お願いですから落ち着いてください…。もう…こっちが恥ずかしくなります…」
何かノイさんはさっきからテンション高くて凄いなー。
まぁ対応はアルトさんに任せよう。
「うぉぉぉー! ショーゴについてきてよかったぁぁぁ!」
「【首狩り姫】の手料理が楽しめるとは思わなかったぁぁぁ!」
「俺…結婚するなら料理好きな子がいいなぁ…」
んな大袈裟な。
まぁお店で見たことないような人ばっかりだし、私の料理なんて食べてないよね。
「でもよかったのか? アリスだって出たんだから疲れてるだろ?」
「んー身体はともかく私自身はそこまで疲れてなかったから平気だよ」
「私自身? …あーそういうことか」
どうやらショーゴは察してくれたようだ。
さすがショーゴ。
「なぁアルト! 【首狩り姫】って結構良いやつなんだな!」
「えぇ、アリスさんは基本的には優しいです。ですので、その優しさに付け込まないようにしてくださいね? アリスさんが怒ったらもう止められませんから…」
えっと…アルトさん?
私ってどんな風に思われてるのかな?
そもそも普通に接してたらそうそう怒る事なんてないよ?
「アリスは聖女だからめったに怒らない」
「ルカ、その発言は誤解を生むからやめようね?」
「お姉様、聖女って何の話ですか?」
「海花も気にしなくていいから」
良かった…海花には知られてなかったようだ…。
ルカはまぁ…首狩り教経由で知られてるとして諦めよう…。
「そもそも俺は戦ってすらいないのだが…いいのだろうか…」
「いやまぁあれはアリスさんが凄すぎただけですし…」
「イベント開始当初の戦いは何だったのか疑問になってくるわね~…」
「アリスちゃんってやっぱり暗殺者とかそういう家系とかだったりするのか?」
いやいや…そんな家系なわけないでしょ。
少なくても忍の家系とかそういうのではないはず。
「ですが本日の夕方になれば折り返しになるはずですので、注意が必要ですね」
「ん、これまで出てきたのは小鬼とオーガのみ。そろそろ主力部隊が出てきてもおかしくない」
「鬼や妖怪で主力となりますと、烏天狗に中級の鬼といったところでしょうか?」
「最悪、酒呑童子とか九尾の狐とか鵺が出て来るかも」
九尾の狐とかどう考えても大型ボスだよね…?
うん、それだったら他の人たちに任せよう。
鵺は…どうなんだろ?
確かそこまで大型じゃないとか文献で読んだような気がするような…。
酒呑童子だと配下の四天王とかがいるからある意味戦力を分けれるからちょうどいいのかもしれないね。
まぁ酒呑童子が来る方角はドンマイということで…。
「あれっ? 鬼ってことは鈴鹿御前や滝夜叉姫や橋姫も入るのよね?」
「鈴鹿御前? 滝夜叉姫? 橋姫?」
何の事だろう?
「いや、滝夜叉姫と橋姫はともかく、鈴鹿御前はないと思う。さすがに第四天魔王の愛娘相手は敵のハードルが上がりすぎる」
第四天魔王?
えーっと…。
私はチラッとショーゴの方を向く。
「えーっとだな。つまり第四天魔王っていう神様の愛娘が鈴鹿御前っていう話があるんだよ。それが相手って事は、神様の軍勢が相手になるかもってことだ。しかも鈴鹿御前は配下を従えてというより一人で逸話を残してるっていうらしいから鬼を従えている事ではないだろうしな」
「えーっと、つまり神様の軍勢相手はあり得ないから鈴鹿御前はないってこと?」
「まぁそういうことだ」
なるほど。
「軍勢としてだったら滝夜叉姫はありかと思う。でもそれだったら魑魅魍魎が多いから鬼というのは少し合わない気がする。橋姫もそう。あれも一人での逸話。となると、やっぱり候補は酒呑童子や九尾の狐」
「なっなるほど…」
んまぁとりあえず、そのよくわからない姫たちの線は薄いって事ね。
とはいえ、【童謡】や【詩人】スキルを使う関係上色々と網羅していないといけないんだけど、さすがに逸話の一つ一つを網羅するのは厳しいわけで…。
うぅ…またそういう歴史書買って読まないと…。
歴史書って意外に高いんだよね…。
セールで売ってるの探さなきゃ…。
「まぁ重い話はここまで。アリスのご飯食べよう」
「あっうん、どうぞ」
もしかしてルカ、援軍に来てくれた人たちに気を使って食べてなかった?
別にそこまで気にしなくてよかったのに。
「そういや話変わるんだけどよ」
「んっ?」
「アリス、お前敵来た時に演説したんだって?」
「ごほっ!?」
何でそれが伝わってるの!?
少なくてもあの森にいた人しか知らな…。
私はルカと海花の方を向く。
すると二人はぱっと顔を反らす。
「えーっとですね…。あたしのファンの一人が情報を伝えるのを兼ねて…」
「ほっ報告は大事…だから…」
やめてー!
やったのはアリカだけど、結果的には私がやったことになるんだから!
「まっまぁそこまでショック受けるなって。さすがにそれをネタにアリスをいじるやつなんていねえだろうしな。…って、ルカ。何で顔を反らした…」
「べっ別に…」
「…ルカ…?」
「うっ…。…くっ首狩り教であの演説を教本に載せるっていう動きが…」
「えっ…? それってつまり…?」
「基本的に教本は首狩り教だけに配布されるはずだけど…。外に布教した場合…その…」
それが外に出されるってことだよね…?
あの凄く恥ずかしい演説が…?
街の住人とかに読まれる可能性があるってことだよね…?
「…ルカ…」
「はっはい!」
「その教本は門外不出ね…? わかった…?」
「いっイエス、マム!」
ふぅ…これで何とかなるはず…だよね…?
…って、なんでノイさんそんなに震えてるの?
私、ノイさんに何かしたっけ?
やっべ、kenshi楽しいです。時間経過やばい()




