百鬼夜行④
「武器とアイテムの補充が終わった人から随時休憩してね」
「じゃ、私はまた警報起動しに行く」
「うん、ルカよろしくね」
森に侵入してきた敵を殲滅後、私はアリカと入れ替わって後片付けをしつつ指示をする。
その最中にルカが警報の起動準備を私に伝え、森の入り口付近へと向かっていった。
にしてもまさかこれだけ戦果上げるとは…。
アリカも途中からノリノリになってたし…私そういうキャラって思われないだろうか…。
「お姉様ぁぁぁぁ!」
「わぷっ!?」
突然後ろから抱き着いてきた海花のタックルを受けて変な声が出てしまった。
「海花…どうしたの…」
「えっとですね…その…頑張ったご褒美が欲しくて…その…」
何か海花がもじもじと身体を動かして上目遣いで私を見つめてくる。
ご褒美って言われてもなぁ…。
悩む私を海花はじっと私を見つめ続ける。
「こっこれでいい…?」
「はぁぁ~…」
とりあえず頭を撫でてみたけど…何か海花の目がとろんってなってるのは気のせいだろうか…。
最近首狩り教から特訓受けてて疲れてたのかな…?
「使徒様、少しよろしいでしょうか?」
「ひっ!?」
海花の相手をしていると、返り血をところどころに浴びているファナティクスさんが近付いてきた。
すると海花はファナティクスさんを見るなりびくりと反応し、背筋を伸ばす。
海花…一体何があったの…。
「おや、これはこれは海花様。どうかいたしましたか?」
「なっ何でもないです! お姉様! あたしはこれで失礼します!」
「あっ海花…」
そう言って海花は脱兎のごとく走り去っていった。
どれだけ首狩り教にしごかれたんだ…。
「海花様は一体どうなされたんでしょうかねぇ?」
「さぁ…。ところでファナティクスさんはどうしたんですか?」
「えぇ。少し牽制の意味を兼ねて狩った首を森の入り口に並べるのはどうでしょうかと提案に参ったのですが」
「えーっと…」
さっきから首狩り教の面々が首を集めてると思ったらそういう事考えていたのか…。
いやまぁ牽制の意味では正しいかもしれないけど…。
「すっ少し保留で…」
「畏まりました」
ファナティクスさんは私の指示を聞いてこの場から移動する。
保留、そう保留だ。
現実逃避を考えて言ったわけじゃないんだ。
「お嬢様も大変ですね…」
「トアさん」
今度はトアさんが苦笑しながら私に近付いてきた。
「はい。お嬢様、少し休憩なさってはいかがですか? ずっと動きっぱなしではないですか…」
「まぁ確かに身体は動きっぱなしだったけど、私自身はほとんど動いてないから元気と言えば元気なんだよね」
正直先の戦闘の精神的疲労はアリカがほとんど受け持ってたからね。
私は要所要所で出てただけだし。
「ですが指揮官が休んでいるところも見せるのも大事です。指揮官が忙しいという事はそれだけで部下に緊張感を与えてしまいますから。時には余裕を持っているのを見せるのも大事です」
「うっうん…わかった…」
私はトアさんに言われるがままにいつの間にか用意されたウッドチェアに座る。
そしてどこからか取り出した紅茶を私に渡す。
まぁとりあえず飲もう…。
「そうですお嬢様。その余裕を見せることが大事なのです」
「と言いつつそのスクショ連射っぽい動作はなんなの…?」
「…はっ!?」
海花が私のスクショを撮る時に写真を取るような感じの動作をしてたからツッコんでみたらまさか撮ってるとは…。
しかも無意識に…。
「ところで、他の戦況はどうなってるの?」
「はい。今のところ敵影は確認できませんが、暗視持ちが警戒を続けています」
「敵は妖怪だから飛行型もいるって事も忘れてないよね?」
「はい、そこは大丈夫なようです。問題は夜襲ですが、来るとしたら丑の刻…つまり深夜一時から三時が怪しいと考えています」
「まぁ妖怪だもんねぇ…」
しかも深夜のため見えにくいから対処も少し遅れるだろう。
となると一割は中に侵入する可能性も考えられる。
「指揮官の一人か二人は生け捕りにするべきだったかもね」
カルディアがいる限り隠し事はできないからね。
「狩ってしまった以上後の祭りです。対策を考えましょう。まぁ森にはしばらく来ないとは思いますが」
「なんで?」
「…お嬢様。3000の前線基地設営部隊が急に連絡が途絶えたのですよ? 普通に考えて再び来るにしても二の足を踏みます」
「…そういうものなの?」
「そういうものです。仮に大将が豪胆な方で、より多くの軍勢を差し向けて来るとしましょう。我々は30倍の敵に勝ちましたが、あくまで敵はそこまで強くないモンスターばかりでした。ですがこれからは多少手強くなってくるでしょうし、そう上手くいくとは限りません。ですがこの森が制圧されて我々のリスポーン地点が街に戻される頃には敵の戦力は半数以上は消える見込みです。そんなところに私でしたら兵を迂闊に送りたくありません」
そこまで言うほどなのかな…?
「何か私たちの戦力って過剰に評価して言ってる気がするけど…」
「過剰ではありません。そもそも首狩り教はやられてもデスペナによるステータスダウンを負ったとしても、一撃必殺できる事には変わりません。それが何度も何度も襲い掛かってくるのですよ? 間違いなく敵は減る一方です。そして仮に森を制圧したところで全快した我々が再度森に迫ってくるのですよ? もはや森を制圧して前線基地にするというメリットが見つからないのです」
トアさんの説明で何となくわかったけど…私たち結構やらかした感じなのかな…?
「とはいえ、敵が攻めてこないという事でしたらそれはそれで好都合です」
「好都合?」
「はい。司令部が求めている遊撃部隊、それを行う事ができます。とは言っても行ける範囲は北か東のどちらかぐらいですけどね」
「…実は私たちって結構忙しい立ち位置?」
「それだけお嬢様が信頼されている証です」
…本当かなぁ…?




