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Nostalgia world online  作者: naginagi
第五章
261/370

純粋故に

「ってことで、カルディアの歓迎会という事でカンパーイ」

「「「「「「「カンパーイ」」」」」」」


 主催者という事で私の音頭で皆手に持った飲み物を飲む。


「料理もありますので皆さん是非どうぞ」


 一足先に店に戻ったトアさんが料理を作ってくれており、次々にテーブルに並んでいく。

 って、私も手伝わないと。


「お嬢様はゆっくりしていてください。料理の方はこのメイドにお任せください」


 そう思ったのだがトアさんにそう言われてしまったらどうしようもない。

 というかたぶん梃子でも動かない。


「にくぅぅぅぅ!」

「シュウは落ち着いて食え。がっつかなくても一杯あるだろう」

「まぁ女性陣の方が多いし、そうそう肉が無くなるわけ…」


 そう思ってからあげの皿を見たショーゴの目には、レヴィが勢いよく肉を丸呑みしている姿が映った。

 しかもその勢いは早く、からあげ一つ飲み込んだと思ったら次々に飲み込んでいき、次第にからあげの数が減っていった。


「とんだ伏兵がいやがった!? ガウルも急げ! レヴィに全部食われちまうぞ!」

「まさか海蛇と肉を奪い合う事になるとは…」


 あれっ?

 レヴィってからあげ好きだったっけ?

 それなら今度からレヴィのご飯にはからあげも考えないとね。


「このケーキ美味しいわね~」

「リアちゃんたち羨ましいですよー」

「むふふー」

「こらリア、口の周りにクリームついてるぞ」


 クルルたちはケーキを食べながらリアと喋っている。

 そのリアをサイが面倒を見ているといったところだろう。


 そんな中、カルディアは一人唖然とした表情で私たちを見つめている。


「どうかした?」

「貴女もだけど…この人たち…変…」

「そうかな?」


 特に変なところはないと思うんだけどなぁ?


「絶対変よ! 何で私を怖がらないの!? 何で気味悪がらないの!? 心を覗かれてるのよ! 普通気味悪がるでしょ!」


 カルディアは目の前で起こっている現状を全く理解できないのか狼狽えている。

 その発言はまるで今まで自分が向けられてた感情が当たり前(・・・・)だと言わんばかりだった。

 しかし、皆はその発言に首を傾げる。


「別に無闇に言わないって言ってるし気にしなくていいだろ?」

「男はどっしりと構えてればいいものだ」

「俺はカルディアちゃん可愛いからそれぐらいへっちゃらだぜ!」

「二人のペット見てると私も人型のペットほしくなるわね~」

「私は人型でも動物でもどっちでもいいですね。あっでもちょっと爬虫類は苦手なのでそこだけは…」

「ルカお嬢様が信用しているというのであれば、私も信用しているだけです」


 皆の発言にカルディアは驚く。


「嘘っ!? 全部本心で…言ってる!?」


 カルディアからしてみたら、人の本心など所詮繕っているだけのもので醜い感情ばかりなのだろう。

 しかし、ここにいる皆はカルディアにそういった感情など持っておらず、むしろ好意的な感情を持っている。

 きっとそれがわからないのだろう。


「カルディア」


 今まで黙っていたルカが口を開く。


「まだ会って数時間だから私はカルディアの全部はわからない。でも、少なくてもここにいる人は信用していい。あとついでにここにいない海花も」


 ついでって…。

 海花が聞いたら怒りそうだ…。


「そんな事言われても…」

「カルディアは今まで辛い目に遭ってたから、すぐには信じる事は出来ないと思う。でも、そういう人ばかりじゃないって事は知ってほしい」


 そう言ってルカはカルディアの短い緑の髪を下から優しくかきあげる。


「それにカルディアは可愛い。ネウラやミラやフェイトに負けないぐらい。いっその事カルディア教も作っちゃおう」

「ちょっと!? そしたら私のフェイト教はどうなるのよ! 信仰集めてお姉ちゃんの役に立ちたいんだから!」

「悲しいけど我が子の方が大事。でもアリスも大事。難しい」

「お姉ちゃん一択でしょうがー!」


 カルディア教が作られそうな流れにフェイトがストップを掛ける。

 だがルカも自分のペットが可愛いのもあるので、どうするか悩んでいるようだ。

 まぁあれは軽い冗談だと思うけどね。

 って、カルディアなんか照れてない?

 気のせい?


「きっ気のせいだからこっち見ないで…」


 そう言ってカルディアは顔を隠す。

 でも耳とか赤くなってるから隠してもわかるんだよねー。


「っ~!」


 心を読めるからダイレクトに私の考えている事が伝わり、カルディアは顔を隠したままぶんぶんと首を左右に振る。

 そんな中、ネウラがカルディアに近付いてきた。


「ほら、一緒に食べよー?」

「えっ? いや、私は別に…」

「料理美味しいよ? 食べないの? お腹空いてないの?」

「その…お腹が空いているとかそういう事ではなくて…」

「ネウラたちと食べるの嫌なの?」

「嫌ではないけど…」

「じゃあ食べよっ!」

「ちょっ!?」


 ネウラの触手に捕まったカルディアはそのままミラやアレニアたちがいるテーブルへと引っ張られていった。


「流石ネウラ。天然純粋ならアリスに匹敵するだけはある」

「…ルカ、いいの?」

「せっかくネウラが切っ掛け作ってくれたし、大丈夫」

「まぁネウラなら大丈夫かな?」


 ネウラは純粋故に裏表がない。

 つまり話している言葉そのものが本心ということだ。

 というかネウラが嘘付いた事ってあったっけ…?

 プレイヤーイベントの時も隠し事を普通に暴露してたし…。

 嘘が付けないっていうのもいい面もあるし損な面もあるなぁ…。


「まっ、あとはネウラたちに任せよっか」

「んっ。私は戦闘で疲れたからアリス成分を補給」


 そう言ってルカは私に抱き着いてくる。

 まぁカルディアの件で色々とあっただろうし、少しぐらい好きにさせてあげよう。


 その後、カルディアの歓迎会は夜遅くまで続き、途中お酒も入った事でログアウト時間がなかなかやばい事になり、一部の参加者は翌日あわふたとする羽目になった。

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