未熟と成熟
「てかショーゴ、この子たち一人で相手にしてたの?」
「まぁ…そうだな…」
私は寄ってきた女の子を抱き抱えながらショーゴに聞く。
見たところ子供の数は八人程。
今まで隠れていたのか、それとも遠慮していたのか、構ってくれる人が増えたとわかって残りの子供たちが私たちに近付いてきていた。
「子供っつってもアリスが今抱えてる子みたいに俺には寄ってこなかった子供もいるしな。全員を全員相手にしてたわけじゃねえよ」
「まぁたぶんショーゴは男性だし、恥ずかしかったんじゃないかな? ねっ?」
私が尋ねると、女の子は小さく頷く。
小さい子って言ってもリアとは違った感じで少し新鮮だ。
雰囲気的にはルカに似てるかな?
ぎゅってしがみついてきて可愛い。
リアもこんなふうに甘えてきてほしいなぁ…。
「にしてもアリスは子供の相手慣れてるなぁ」
「家に二人もいますから」
「いや、どや顔されても…」
二人ともいい子だからそんなに手間掛からないけどね。
というよりもう少し我が儘を言って欲しい部分も…。
っと、なんだかトアさんの方が少し騒がしいね。
どうやらトアさんを取り合って、男の子たちが少し喧嘩になりそうな雰囲気だ。
私とショーゴは止めようと思って近付こうとするが、その前にファナティクスさんがニコリと微笑みながら子供たちに話し掛ける。
「こらこら、友達に対してそんなふうにしてはいけませんよ。皆さん仲良くしましょう。お姉さんも困っていますよ?」
ファナティクスさんに言われて男の子たちは、困り顔のトアさんを見てしゅんとしてしまう。
それを見てファナティクスさんは男の子たちの肩に手を掛ける。
「落ち込むことはありませんよ。そのように相手を気遣えるのは良い事です。ですからそのように優しい心を持って相手に接してあげましょう」
「「はいっ! 神父様!」」
「いい子ですねぇ。ではお互いに謝りましょう。そして仲良くお姉さんと遊んでもらいましょうねぇ」
ファナティクスさんの仲介により、男の子たちは仲直りして二人でトアさんの元へと向かった。
「ファナティクスさん凄いですね…」
「いえいえ、この程度褒められる事ではありませんよ」
「いやいや…」
仲介って失敗すると余計に仲がこじれたりするもんね。
「あの子供たちも寂しいのでしょう。しかし彼らの親はこの街作りで忙しくてあまり構ってあげられないのでしょう。なので少し大人の雰囲気がある女性のトア様に甘えたいのでしょう」
「まぁ確かにトアさん大人っぽいですもんね…」
…って、あれ?
「一応私も成人女性に入るんですけど?」
「…ハッハッハ。使徒様は今抱えていらっしゃる女の子の相手をしていますからね。あの子たちも気を使ったのでしょう」
「っぷ…」
「ショーゴ! 今笑ったでしょ!」
「いや…笑ってねえよ…くくっ…」
「むぅー!」
まるで私が子供っぽいみたいじゃない!
ちゃんとお姉さんしてるんだから!
私とショーゴのやり取りで私たちを交互に見て不安そうにしているこの抱えている子を見事安心させてみせる!
「大丈夫だよー。喧嘩とかじゃないからねー」
「んっ…」
まずは優しく背中を撫でて落ち着かせてる。
そして落ち着いてきてしがみついてきたら私もぎゅっとしてあげる。
仕上げに頭を撫でてあげれば…!
「んぅ…お母さん…」
どやぁ!
ショーゴ見た?
私だってお姉さんできるんだよ!
「お、おう…」
「お見事です、使徒様」
ふっふーん。
「つかさ」
「んっ?」
「お母さんって…お姉さんとはまた別じゃね?」
「…はっ!?」
いやでもお母さんと呼んでくれたって事はお姉さん以上という事であり、以上ということはお姉さんも含まれているということであり、つまり私がお姉さんという事には違いない!
「つまり私はお姉さん!」
「いや、どこもその証明にならねえだろ」
「うっ…」
「ハッハッハ! お二人は本当に仲良しのようですねぇ」
「仲良し…?」
抱えている子が顔を上げて首を傾げる。
「そうだね、私とショーゴは仲良しだよ」
「まぁ幼馴染だしな」
「…結婚してないの?」
「…へ?」
「は…?」
えーっと…?
「何で結婚になったの?」
「だって…お父さんとお母さんも仲良しだから結婚したって…」
「えっとね? 別に仲良しだからって結婚するっていう事じゃなくてね…?」
「でもお母さん、お姉ちゃんと同じぐらいの歳で結婚したって言ってたよ?」
「んーっと…」
やばい…私そんな恋愛経験があるわけじゃない…というか、全くないから何て説明したらいいのかがわからない…。
ショーゴにヘルプを求めようと見るが、ショーゴはぱっと顔を背ける。
一応ショーゴ恋愛経験あるでしょ!?
助けてよ!
「お姉ちゃん、お兄ちゃんじゃやなの?」
「えーっと…嫌っていうことじゃないんだけど…」
そんな恋愛経験なんてないし、結婚なんて考えた事ないから急に言われてもわからないよ!
私がどう対応すべきか困っていると、ファナティクスさんが助け舟を出してくれた。
「結婚というものはですね、仲良しだからといってすぐ結婚するわけではないのですよ。結婚というのは大切な行事です。ですからお互いの事をより知らなければそうそう結婚にはいけないのですよ。貴女のご両親も長い時間を掛けた果てに結婚したのでしょう。ですので他人がそう急かすものではありませんよ? いいですか?」
「うん…。お姉ちゃん、お兄ちゃん、ごめんなさい…」
「ううん、大丈夫だよ」
ふぅ…。
ファナティクスさんのおかげで何とかなった…。
でも結婚かぁ…。
二十歳になったし、そろそろそういうのも考えないといけないのかなぁ?
でもそういうのって求める条件とか考えないといけないんだよね?
…まぁいっか。
そういう難しい事は後々考えるとしよう!
って、そもそも何でそういう話になったんだっけ…?
いやぁ古戦場は大変でしたね(やり切った感




