【特別編】クリスマスの奇跡
「「「メリークリスマース」」」
毎度恒例ながら俺の家でクリスマスパーティを行うわけだが…。
「アリサに鈴。その恰好はなんだ?」
「サンター」
「可愛いでしょ~?」
「いやまぁ可愛いけどさぁ…」
二人はサンタのコスプレをしてパーティに参加しているのだが、如何せんスカートが短いしヒラヒラしているので嫌でも目に付く。
しかも鈴なんてチラチラ見えそうで見えないようにスカート動かしやがって…。
仕舞いには襲うぞこん畜生…。
…はい見栄張りましたすいません本当はそんな度胸ありません。
「でももう今年も終わりね~」
「早かったような遅かったようなー…」
「俺らも来年は三年になって研究室かー…」
なんだかんだ早いもんだ。
研究室入ったら忙しくなるんだろうなー。
そんな事を考えていると、アリサが何かを持って俺の目の前にすっと手を伸ばす。
「正悟、チキン美味しいよ?」
「おっおう、ありがとな」
アリサからチキンを受け取ろうと手を伸ばそうとすると、アリサは更にチキンを俺の口元へと近づけてくる。
「んっ」
「えっと…アリサさん…?」
「あーん」
「いや…自分で食べれ…」
「あーん」
「…あーん…」
俺は観念してアリサの持っているチキンを一口食べる。
「美味しい?」
「あぁ…美味いよ…」
いやまぁ美味しいんだけどさ…。
なんで自分で食べさせてくれねえの!?
めっちゃ恥ずかしいんだけど!?
てかそこっ!
何にやけてんだ!
鈴は女だから別に問題ないけどさ!
こっちは男だから色々とあるわけよ!
「たくっ…」
ケーキやチキンを俺に食わせるアリサがようやく解放してくれたので口直しにビールを飲む。
にしてもアリサも鈴も毎年のように俺の部屋来てパーティ開くが、家族でやんなくていいのか?
疑問に思ったのでその事をアリサに聞いてみることにした。
「えっ? お母さんたちは正悟と鈴のお母さんたちと一緒に私の家でどんちゃん騒ぎしてるよ? だからゆっくりしてても平気なんだって」
「しかもわざわざ鯛の刺身とか色んな食べ物持って行ってるらしいわよ~。あと赤飯とか。いいわね~お刺身~」
「ハマチ食べたーい」
「私は甘エビかしらね~」
いや待てお二人さん。
鯛の刺身だけじゃ何かわからなかったが、赤飯って聞いて嫌な予感しかしないんですがそれは…。
なんでこの二人はそういう関連については鈍いんですかねぇ…。
「ふぁーぁ…」
「あれ? 正悟眠いの?」
「ちょっと深夜遅くまでインしてたからな。ちょっくら仮眠するから一時間くらい経ったら起こしてくれ」
「なんなら私が膝枕する?」
「…いえ大丈夫です…」
「一瞬迷ったわね」
鈴さんそこは言わないのが優しさというやつですよ。
俺はベッドに潜って一眠りすることにした。
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「―ゴ…」
誰かが呼んでる気がする…。
あぁ…そういえばアリサに一時間経ったら起こしてって言ってたんだったな…。
「正悟、起きなさい」
「しょーご、朝だよ」
なんだ鈴もいんのか…。
てか朝か…。
完全に寝ちまってたみたいだな…。
「今起きるー…」
俺は未だ覚めない身体を無理矢理起こすために身体に力を入れる。
冬だからこの布団の温い感じは恋しいが、アリサたちをほっといて寝ちまったから頑張って起きねえと…。
「まったく、やっと起きたのね」
「しょーご寝坊助ー」
「あー…わりぃわり…い…?」
あれ…?
俺寝ぼけてんのか?
なんでアリサが二人いるんだ…?
「んっ? どうかした?」
「ほら、起きたならしゃんとしなさい。って、どうしたの?」
「いや…なんでアリサが二人なのかなって…」
「ん?」
「何寝ぼけてるのよ。あたしはアリカでしょうが。それに双子なんだから似てるに決まってるじゃない」
「…は…?」
はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?
「しょーご、本当にどうしたの?」
「寝ぼけすぎて何か変な物でも見たのかしら?」
一体どういうことなんだ…?
クリスマスパーティの時に一眠りして起きたら鈴の姿はなく、代わりにアリサとそっくりなアリカがいて、しかもアリカは双子って言った…。
一体どういう事なんだ!?
「ねえアリカ、しょーご本当にどうしたんだろ?」
「んー…ちょっとごめんね」
そう言うとアリカは俺のおでこに自分のおでこをくっつける。
「なっ…!?」
「んー…熱はないっぽいけど…」
アリカはすっとおでこを離してアリサの方を向いて話す。
「じゃあ熱はないけど眩暈とかかな?」
「となるといきなり起きたからそれが原因かしらね?」
「ならもう少し横になってゆっくりさせた方がいいよね」
「そうね。休みなんだしゆっくりしててもいいわよね」
そしてアリカは俺の背中と肩に手を掛けてゆっくりと横に倒す。
「じゃあ私も一緒に寝るー」
「はぁっ!?」
俺が布団に入ったのを見て、アリサが突然俺の右腕側に入ってきた。
「あら、アリサだけずるいわね」
「じゃあアリカも入ろー」
「そうね、まだ寒いし一緒に布団に入れば暖かいわよね」
アリカはニヤニヤしながらアリサと同じように俺の布団の中に入ってきた。
いやいや!
確かに俺のベッドは比較的広めのだけどさ!
三人も入ればだな…その…どうしても密着度がだな…。
って言ってるそばからアリサさんは俺の右腕に抱き着いてくるし!
「しょーご、暖かいね」
ちょぉぉぉぉ近い近い!
しかもアリサの吐息が耳に掛かってぞわぞわするんだけど!?
なんなん!?
俺の理性ぶち殺しにきてんの!?
それを見たのか、アリカもアリサと同じように俺の左腕に抱き着いてきた。
「ホントね、暖かいわ。しょ・う・ご」
アリカお前狙ってやってんだろ!
しかも耳元により近づけてやりやがって!
「んー…なんだか眠くなってきたぁ…。…すぅ…」
「あらあらアリサ寝ちゃったわね」
「まったく…一体何なんだよこれ…」
もう何がなんだかわからねえよ…。
これ夢なのか…?
それとも今までのが夢だったのか…?
そんなことを考えていると、アリカが俺の左腕をよりぎゅっと抱き締める。
「…正悟」
「ん?」
「これからもアリサをよろしくね」
そう言ってアリカは俺の左頬にそっと口付けをした。
その感触とともに俺の意識は薄れていった。
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「―ご」
「んっ…」
「ほーらー、一時間経ったよー?」
薄っすら目を開けるとともに、誰かが俺の身体を揺すっているのに気付く。
「アリ…サ…?」
「うん、そうだよ?」
「あれ…? アリカは…?」
「んっ?」
ふと呟いた言葉にアリサは首を傾げる。
「アリカはNWOじゃないと出てこれないでしょ?」
「正悟ったら寝てる時までNWOやってるなんて~」
「あっ…いや…」
あれは…夢だったのか…。
まぁそうだよな。
アリカはあっちじゃないと出てこれないんだから現実世界にいるわけねえよな。
にしても随分変な夢だったな。
そういや夢って願望が出てくるんだっけか…?
という事は俺は無意識にアリサとアリカの二人を…!?
「…ねえ鈴ぅ…正悟どうしたの…?」
「さっさぁ…? なんで頭を抱えてるのかしらね~…」
よしっ、あれは夢だ!
だからあれは俺の願望とかそういうのじゃない!
でも…。
俺はそっと左の頬に手を当てる。
夢でアリカが口を付けた部分は、どこか熱を持ったようにほんのりと暖かかった。
血反吐を吐きつつ何度全消去を思いつつ書いた事やら…(吐血




