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Nostalgia world online  作者: naginagi
第五章
242/370

人を運ぶのは一苦労

「ちょっとこれは予想外かも…」

「んっ。やっぱりアレニアの糸で運ぶ案も考えないと」

「流石にそれはちょっと…」


 私たちの目の前には、難民らしき人々が疲れ果てて木々に寄りかかっていた。


「馬車もあるし、あの中にもまだいるとすると、たぶん三十人はいる」

「となると、今のネウラで精々運べて八人ぐらいだから…」

「私は人一人が限度ですし…」

「ネウラもそんな速くないから往復は時間掛かっちゃうよ?」


 そうなんだよねぇ…。

 幸い馬車があるからそれを引っ張ればある程度は運べるけど…。

 見たところご老人や子供ばっかりというわけではなく、成人している人たちが多めなので体力さえ回復すれば自分で移動はできそうではある。

 一先ずこの集団の代表者と話をしないと。

 私は近くにいた難民にこの集団の代表者を尋ねる。


「代表者ですか…? それならあそこに立って周りを見ている彼です…」


 私はお礼を言い、その代表者の元へと行く。


「すみません」

「あんたたちは…?」

「私たちは異邦人で、あなたたちを保護しにきました。それでまずは代表者のあなたと話をしようと思いまして…」

「そうだったか…」

「皆さんかなりお疲れなようなのですが、私たちも一度に運べる人数には限りがあります。なので重体な方や動けなさそうな方を優先して運びたいと思っています」

「ならあの馬車に乗っている者たちを頼む…。外で休んでいる者たちはまだマシな方だ」

「わかりました。それとこれを…」


 私は難民の代表者にポーションを渡してから馬車へと向かう。

 馬車の中には怪我を負っている者や足を怪我して歩けなさそうな人たちがいた。


「ミラ、私はこの人たちに軽い処置するから、その間に他の人たちにポーション渡してあげて。ネウラは私が処置した人を運ぶ準備をお願い」

「わかりました」

「はーい」

「じゃあ私がミラの手伝いする。ミラだけじゃ持てる数に限度ある」

「うん、じゃあルカお願いね」


 私はミラとルカにポーションを私、馬車の中で処置をする。

 基本的にはポーションや塗り薬等での処置ぐらいしかできないが、幾分マシになるはずだ。

 そして処置が終わった人からネウラの蔦で抱えて移動の準備をさせる。


「じゃあ先に街の方戻ってるね、お母さん。なるべく急いで戻るねっ!」

「うん、お願いね」


 怪我人を抱えてネウラは街の方へと一足先に向かう。

 残った私たちは、ポーションを飲んでもあまり回復しなかった人たちを馬車に移し、それ以外の人たちに馬車の周りに集まってもらった。


「ではこれから街の方へ向かいたいと思います。もし途中で歩けなくなりそうな人はすぐ言ってください」


 一応周囲警戒としてフェイトとアレニアを配置して、異変があったらすぐ伝えてもらう手筈となっている。

 とはいえ、さすがに初日から襲撃があるとは思えないので念のためだけどね。


 街へ向かっている途中、ネウラが戻ってきたので残りの難民を抱えてもらっての移動となり、少しネウラに街の状況を聞いたところ、仮設だが救護施設とプレハブ小屋がいくつかできているらしい。

 そして私たち以外にも何グループか難民を引き連れて移動しているらしい。


 街へ到着し、難民を施設に移動させることができたため、ようやく肩の荷が一つ降りた。

 ただ、同じように難民が多くの人数でいた場合、運ぶ手段がないのは辛いものがある。

 幸い私はネウラが巨大化できて数人を運ぶことができるため、少人数ならば問題ないが、もっと多い場合は運ぶにもかなりの時間が掛かってしまう。

 とはいえ乗り物がないのでどうすることもできないのだが…。

 すると先程保護した難民の代表者が私に声を掛けてきた。


「もしよかったらこの馬車使わないか?」

「えっ?」

「さっきのあんたたちのように人を運ぶのには苦労するだろう。異邦人は生き物はしまえないが、物ならしまえると聞いたことがある。だからこれを持っていくといい。植物のあの子を見た限り、あの子ならこれぐらい引くのは難しくないだろう」

「いいんですか?」

「何ならしばらく貸すという事でいい。それなら問題ないだろう?」

「…わかりました。ではお借りします」

「馬は他の異邦人に貸すとしよう。無いよりはマシだろう」


 私はお礼を言って馬車を預かる事にした。

 そして代表者の彼は他のプレイヤーを探してこの場を去って行った。


「まさか馬車貸してもらえると思わなかった」

「だねぇ…。てかネウラ、馬車引くの大丈夫?」

「うんっ! 任せてお母さん!」


 まったく頼りになる子たちだなぁ。

 それを聞いてか知らずか、突然レヴィが出てきて私の肩に乗ってきた。


「キュゥ…」


 どうやらかなり落ち込んでいるようだ。

 おそらく今回あまり役に立てていないからだろう。


「レヴィは大きくなると皆驚いちゃうから…防衛戦始まった時は一杯活躍してもらうからね?」

「キュゥ…」

「周辺警戒でも一応役に立てた私は良い方なのかしら…?」


 土地神のフェイトもあんまり表に出せるような子じゃないからなぁ…。


「なんなら私がこの土地管理して活性化してもいいんだからね!」

「それって大丈夫なの…?」


 そんな簡単に土地って管理できるもんなのかな…?

 私の疑問にネウラが言葉を挟む。


「たぶんだけどここの土地の力自体は低いし、フェイトがこの周辺の土地にいる精霊を管理すればいけるんじゃないかな? あとはフェイトの頑張り次第だとは思うけど、うまく活性化できればフェイト自身も強くなるんじゃないかな?」


 土や植物に関連するネウラがそう言うという事は、先程フェイトが言ったようなことができるのだろう。

 とはいえ、フェイトを土地神と話していいのだろうか…?


「なんならいっその事ここでフェイト教を作る」

「えっ?」

「土地神の事は隠して、フェイトの力でこの土地を活性化できます的な事を言って精霊を集める。そして活性化が上手くいって、そのままフェイトを崇めてもらえば更に土地が活性化する。永久機関の完成」


 そんなうまくいくかなぁ…?


「それに土地の加護があるのとないのじゃ全然違う。少しでも加護があれば作物も育ちやすいし、色々有効だと思う。それに結構昔の人ってそういうの信じてるし、試してみてもいいかも」


 んー…ルカがそう言うなら試して…みよっか…?

 チラッとフェイトの方を見ると…。


「いいわ! やってやるわ! 私の力で土地を活性化させてあげるわ!」


 わー…凄いやる気だー…。

 これはやめるなんて言えないね…。

 とりあえずリーネさんに相談かな…?

昔の人って人の運び大変だったんだなぁ…(しみじみ

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