お姫様は気難しい
「暑い…」
おかしい…もうそろそろ8月が終わるはずなのに全く暑さが変わらない気がする…。
本来ならばNWOにログインして気持ちだけは涼んでいるはずなのだが、メンテナンスの影響で現在ログインできないのだ。
どうやら次のイベントの準備だかなんだかのためのメンテナンスだという。
それでも正悟が言うには普通のオンラインゲームよりはメンテナンスが明ける時間はかなり早いとのことで、お昼には入れるとのことだ。
別に公式のお知らせを見るのがめんどくさくて正悟に聞いたとかじゃないからね?
「しかしイベントかぁ…」
一番新しいのだとミラをペットにした吸血鬼イベントだったよね?
それでその前は罠一杯のダンジョンからの脱出だから…次はどんなのが来るんだろ?
時期としては9月ぐらいになるからお月見とかかな?
でもゲーム内だと12月だから…クリスマスとか…?
そうなると耐寒装備とかを揃えておいた方がいいのかな?
「とは言ってもまだ時間あるなぁ…」
よしっ!
私はベッドから起き上がり服を着替えて部屋を出る。
---------------------------------------------------------------
「ふぁーぁ…」
昼までメンテ明けねえから暇だからって寝過ぎたか?
身体を起こして少し背伸びをする。
ってまだメンテ明けまで一時間ぐらいあんのか。
何すっかなぁー…。
「おはよ、正悟」
「あー…おはよー…」
…ん?
あれ?
今何かおかしくなかったか?
俺は寝ぼけている頭で声がした横を見てみる。
「どうしたの?」
「…なんでアリサが俺の部屋に…?」
「正悟のお母さんが入れてくれたから。ちなみに鈴は今日はお出かけしてて留守だった」
「あーはいそうですか…」
「ってことでメンテ明けるまで何か話でもしよー」
アリサは半袖の白のTシャツに青色のスカートを履いて俺のベッドに寝転んでおり、両足をバタバタと上下に動かしている。
「わかったからとりあえず足を止めて起き上がれ…」
「ん…? 足を止めて…起き上がる?」
アリサは俺の指示を復唱して姿勢を直す。
だがバタ足を止めたのはいいが…何故正座の姿勢になった…。
「これでいいの?」
「いや…普通にベッドに座れって意味で言ったんだ…」
「…あぁ!」
何「なるほどっ!」的な感じで理解してんだ!?
アリサが理解したところで俺もアリサの横に座り、アリサの方を向く。
「んで何話すんだ?」
「えーっと、次のイベントについてかな?」
そういや告知来てたな。
つかアリサに教えたの俺だけどな。
「んで、アリサはどんなのだと思うんだ?」
「一応この前はある意味防衛と攻撃が半々ずつのイベントだったし、次はキャンプの時みたいに過ごす系か撃破系のだと思うなー」
まぁ妥当なところだよな。
とは言っても前回のは将来的に俺らが行けるところだから、次のもそういう関係でもおかしくはない気がするんだよな。
そうすると前は西洋的だったから今度は和風ってところか?
できれば米があれば生産職は喜びそうだな。
まっ、それはアリサも一緒か。
「んっ。どうしたの?」
「っと、すまねえ。つい」
無意識にアリサの頭撫でてたわ。
「正悟に撫でてもらうの嫌じゃないからいいよ」
「そっそうか?」
嫌がってないみたいだしよかったわ。
「そういえば沼地って抜けれたの?」
「いや、まだだな」
足場悪いし下手に進みすぎると撤退が難しいからな。
まずはマッピング優先ってことにしてるしな。
せめて道が整備できればある程度はマシになりそうなんだけどな。
セーフティエリアじゃねえから難しいんだけどな。
「鈴にお願いしてあの霧をどうにかして貰えればなー」
「確かにあの霧は風使えるやつがいたら何とかできそうだしな」
つっても今銀翼は沼地方面よりも、戦力増強のために火山や雪山行ったり、新人の訓練してたりしてるっていうから忙しいらしいけどな。
「フェイトも泥攻撃喰らって怒ってたよ」
「あれ威力ない癖に無駄に数多く撃ってくるからうっとおしいよな」
「だから何とか対抗策考えてるんだよね」
「アリサはまだマシな方だろ。こっちなんてガウルは重くて足取られるわ、シュウと俺は機動力取られるわ、魔法組の二人は目標見つからねえわで大変なんだぞ」
特に女性陣二人は泥のせいで服がめっちゃ汚れるから嫌とか言ってるしな…。
「って、ルカって毒持ってんだから風持ってんじゃねえのか?」
「…えっ?」
俺が疑問に思った事を口にすると、アリサは驚いたようにこちらを向く。
もしかしてアリサのやつ…複合がどれとどれって把握してない感じか?
「派生で氷、嵐、毒持ってるやつは風が前提条件だしな。誰かしら持ってんじゃねえのか?」
「氷…そういえば海花の人形が氷持ってた気がする…」
おいおい…。
その二人ならアリサが頼めば喜んでついてくるじゃねえか…。
「…正悟の意地悪…何で教えてくれなかったの…」
「いや…だって知らねえとは思わねえじゃんかよ…。お前ら仲良しなんだからそれぐらい知ってるもんだとばかり…」
「むぅ…」
アリサは不貞腐れてそっぽを向いてベッドに倒れ横を向いて丸くなる。
その様子を見て俺はしばらく元には戻らねえなと諦めた。
結局、メンテが明けるまで俺はアリサのご機嫌を直す事に勤しむのであった。
やっぱりただのイチャップルじゃねえか!(憤怒




