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Nostalgia world online  作者: naginagi
第五章
231/370

一体何者

「ご主人様。調合で使う鷹の爪の数が少し減ってきたので取ってきてもらえますか?」


 リアにそうお願いされ、以前ヒストリアの方で見かけたブレットホークを狩りに行くことになった。

 初見ではあの貫通付きの嘴に手こずったが、今の私には頼りになる味方がいる。


「お母さーん。こんな感じでいいー?」

「うん。ありがとねネウラ」


 ネウラの蔓によって捕まったブレットホークが次々に私の前に置かれる。

 それを私は首を刎ねて仕舞う作業をするだけだ。

 一先ず十匹ぐらい狩れば数は足りるかな?

 でも鷹の爪って料理でも使うし、その倍ぐらい確保しとこっか。


 結局二時間ぐらいブレットホーク狩りをし、私は帰路についた。

 エアストへ飛び、お店の前に戻ると何やら中から怒鳴り声が聞こえた。

 私とネウラは首を傾げながら少し顔を見合わせてお店に入る。


「だから売れっつってんだろ!」

「ですから販売できる数はお一人様ずつ限りがあって…」

「そんな事どうでもいいんだよ!」

「ひっ!?」

「リアっ!」


 お店に入ると、客の男から怒鳴り声を上げられ萎縮してしまっているリアがいた。

 更に男は机を強く叩いたため、リアが余計に怖がってしまっている。

 私はリアを庇うように抱き寄せる。


「ごっご主人様ぁ…」


 リアはガクガクと震え、薄っすら涙も流している。

 その様子を見て私は少しぷっちんして客の男を睨みつける。


「…私のところの店員に何か…?」

「お前がこの店の店長か! だったらさっさとレッドポーション二百個売れつってんだよ! 金ならあんだよ!」

「この店では一人十個までって事にしてるから。一人ならそれ以上売れない」

「売れるならいいだろうがよ!」

「売る売らないの問題じゃない。私の店ではそういうルールだから。守れないなら売らないだけ」

「くそがっ!」


 客の男は私の物言いに苛立ち、顔を真っ赤にする。

 一触即発な空気の中、お店の扉が開く。


「申し訳ありませんリアお嬢様。少し混んでいて遅れて…」


 お店に入ってきたトアさんが今の現状を見て何かを察し、私の方に近づいてくる。


「リアお嬢様。レジは私が行いますので薬室へどうぞ」

「えっ…?」

「あっお嬢様もリアお嬢様と薬室へ。ですが鷹の爪を取らないといけないですし調理室ですかね?」

「えっあっその…」

「後は私にお任せください」


 トアさんに押され、私とリアはお店側から追い出されてしまった。

 リアは不安そうな顔をしているが、これ以上揉め事に関わらせるのも嫌なので声を掛けて薬室に避難させた。

 でもさすがにトアさんだけに任せるっていうのは店長として情けない。

 そう思って私はお店側に戻ろうとする。


「ですので、お客様一人に対して最大購入数が十個です。これはこのお店での決まりです」

「だから何で一杯あんのに制限掛けんだよ! 売れりゃいいだろうが!」

「より多くのお客様に購入していただくためのお嬢様のお心遣いです。売れればいいというのとは違います」


 トアさんと客の男は口論を続け、トアさんが冷静に返答しているが客の男は完全にイライラしている様子だ。


「テメェ…ふざけてんのか!」

「ふざけてなどおりません。購入できない理由をお話しているだけです」

「その態度がふざけてるっつってんだろ! 売らねえってならこの店どうなっても知らねえぞ!」

「……」

「俺らのギルドに掛かりゃこの程度の店なんてなぁ!」

「…れ…」

「あぁ!?」

「黙れと言っている」

「っ!?」


 突如トアさんの雰囲気が変わり、静かだが殺気が周囲に漏れる。


「さっきからうだうだうだうだと…。この店を…お嬢様の店を潰す…?」


 トアさんのいきなりの豹変具合に、客の男も後ろにたじろぐ。


「これだからラグナロクの連中は…。その傲慢さのせいで他の生産職からアイテムを売って貰えなくなったのでは?」

「なっ!? なんで俺の所属しているところを!? つかなんでそれを知っている!?」

「えぇ、よく知っています(・・・・・・・・)。所詮ウロボロスからついていけなくなった者たちの溜まり場。その癖プライドだけは高く、他者を見下すことしかしない。その結果、このような事になっているのでは?」

「ぐっ…くそっ!」


 客の男は痛いところを突かれたのか、慌ててお店を出ていく。

 男が出ていくと、トアさんから漏れ出ていた殺気が消え、いつもの温厚な雰囲気に戻る。


「……」

「…申し訳ありませんお嬢様」


 トアさんは私の方へ向くと、深々と頭を下げる。


「つい頭に血が上ってしまい、あのような暴言を吐いてしまいました。お嬢様のメイドとして失格です」

「えっと…私もトアさんが言ってくれてすっきりしたというか…私こそ任せてしまってごめんなさい」


 結局トアさんに全部任せてしまったので私も頭を下げる。


「お嬢様が謝る事ではありません。私がもっとうまく対処できていればよかっただけなので…」

「私だって最初からちゃんと対処できてればトアさんに迷惑掛けなかったし…」

「いえいえ。私こそお嬢様にご迷惑を掛けてしまいましたので…」

「ううん。私だって…」


 しばらく自分が悪い合戦をしていたが、お互いどこか馬鹿らしくなってしまいクスっと笑い合う。


「ふふっ。でもリア大丈夫かな?」

「リアお嬢様については本当に申し訳ありません。私がいない間にあのような客が来るとは思いませんで…」

「私もそういうお客来た事なかったから油断してたよ。でもトアさんってあの客のギルドの事知ってたの?」


 私がその事を聞くと、トアさんは一瞬ピクンと反応したがすぐに平静を装って答える。


「はい。メイドたるものお嬢様の必要な情報は手に入れておくものですので」

「へっへー…。メイドってすごいなぁ…」


 んー…?

 誤魔化された…?


「それと先ほど覗き見していたから聞いていたと思いますが、あの男がこのお店を潰すと言っていましたが、実際にはそのような事はしませんのでご安心ください。ただの口だけです」

「そうなの? よかったぁ…。このお店無くなったらサイとリアが困っちゃうよ」

「念のため入室禁止設定をしておきますか?」

「あーうん、そうだね。二人の身の安全もあるからね」


 私はハウジング管理の画面を開き、入室禁止設定をする。


「えっと、所属ギルドが…ラグナロク…でいいんだっけ?」

「はい、大丈夫です」


 私はトアさんの指示通りに設定する。

 とりあえずこれで一安心かな?

 でもトアさんって一体何者なんだろう…?

さぁ一体何者なんだこのメイド…。

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― 新着の感想 ―
[一言] 鷹の爪がガチの鷹の爪だったよ… 唐辛子みたいなやつじゃなかった。秘密結社の方だと収集つかなくなるけども。
[気になる点] あははは;鷹の爪って鳥の爪?唐辛子?料理で鳥使うのガラ出汁とかだから間違いないのか…
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