ショーゴの不幸な日②
「それで…なんであの男が…女の子になっているんですか…?」
「海花…笑うの失礼…」
店にやってきたルカと海花の二人が笑いを堪えながら経緯を聞いてきた。
「えーっと…」
どこから話したらいいものか…。
「それで、何でショーゴが女の子になっちゃったの?」
「えっと…薄っすらなのですが、確か夜中のリアは何故かご主人様に褒めてもらう時にたまには男性バージョンになって褒めてもらいたいなーなんて思いまして…」
「そのノリで性転換薬を作っちゃったってこと?」
リアは小さく頷く。
どうやらショーゴの飲んだ薬は性転換薬で合っていたようだ。
「それでどれぐらい効力あるの?」
「確か少しの間褒めてもらうぐらいで考えていて、薄めてはいるのでそこまで長時間ではないと思いますが…」
「正確な時間はわからないってことね…」
「はい…」
「てかリアはどこで性転換薬の作り方なんて知ったの?」
少なくてもそんなレシピ存在していたなんて聞いた事ないし…。
「えっと、それはナンサおばあちゃんが昔に魔女さんを助けた際にお礼として作り方を教えてもらってて、ナンサおばあちゃんから貰った手帳にその作り方が書かれていたんです。でも作るには必要な材料がかなりあったのですが、ご主人様が集めてきた素材の中にその材料があって…」
「深夜のテンションで少しネジが外れて作っちゃったってことなんだね…」
「はい…」
恐らくナンサおばあちゃんも昔に書いた事だから忘れていたのだろう。
リアも正常な時ならば作ろうとはしなかっただろうが、深夜のテンションというのは正直言って自分でも何をするかわからない。
「とりあえず身体に毒ではないんだよね?」
「はい。性別を変える以外は人体には影響はないって書いてありました」
「ってことだから…ショーゴ…」
「あぁ…わかった…」
チラっとお店のテーブルの方を見ると、ショーゴが項垂れて落ち込んでいた。
「というわけないんだよね…」
「でもその薬って、本当はアリスが飲む予定だったんだよね?」
「はっ!? お姉様が…男性に…」
いや…飲んだとしてもリアの前だけだからね…?
私はそっと項垂れているショーゴに近づく。
「ショーゴごめんね?」
「お前が気にする事でもねえだろ…」
「でもリアがやっちゃった事だし、責任は私にあるもん…」
「別に永続的ってことじゃねえし時間で戻るんだからそこまで気にすんなって…」
「でも…」
「はぁ…」
そう言うとショーゴは顔を上げて私の頭を撫でる。
私は何故撫でられているのかわからず首を傾げる。
「そうやって身内の責任を負いすぎるのがお前の悪い癖だ。それに被害者の俺が気にすんなって言ってんだからそれでいいだろ?」
「うん…」
「それにあの子だってちゃんと謝ってくれたしな」
「んっ…」
私はすっとショーゴの胸に顔を埋めるように抱き着く。
それをショーゴは受け止め、ゆっくりと頭を撫でる。
「あの男…合法的にお姉様とイチャイチャして…」
「処す…? 処しちゃう…?」
その様子を見て嫉妬をする者もいたり…。
「ショーゴが女になったという事はああいうのはセクハラにはならないという事か」
「でも元は男ってわかっててああしてくれる女の子なんてそうそういねーしなー…」
「それだけの仲ってことよね~」
「でも一部の方には性転換薬は夢のような薬ですよねー」
冷静に二人の様子を眺めている者とで分かれていた。
「でもショーゴの見た目がここまで女っぽくなるとはな」
「興味本位で聞くんだけどさ、胸とかどうなってんの?」
「あ?」
シュウに気になった事を言われ、ショーゴは服の上から両手でそっと触ってみる。
「んー…痛覚制限のせいで細かくはわからねえけど、少し膨らんでる気はするな」
「一応外見的な特徴は変化するって事か」
「となると下も変化したってことだろうな。まぁ幸い俺たちはこっちではトイレに行く必要がないからいいが、こっちの住人が飲んだら大変だろうな…」
「そもそもこの薬作ったってのが魔女だしな…絶対ロクな事に使ってねえだろ…」
魔女の薬かー…。
「リアー。他には魔女の薬については載ってなかったの?」
「えーっと…他には惚れ薬ぐらいしかなかったですね」
「惚れっ!?」
「薬っ!?」
リアの発言にルカと海花が反応する。
「その薬ってすぐ作れる?」
「是非売ってください! 言い値で買います!」
「えっと…その…」
何故そんなに惚れ薬に反応した…。
でも惚れ薬って事は魅了のデバフが入る薬って考えればいいのかな?
だけど飲み薬だから相手に盛るとかじゃないと効果なさそうだしなぁ…。
「でも魔女っているんだね」
「そもそも魔法使いと魔女の違いって何なんだ?」
「俺としてはあんまり変わらないと思うけど…クルルとかはどう思う?」
「そうですねー…。私もあんまり大差はないと思うんですが、やっぱり魔女は女性だけっていうイメージですね」
ようはあんまり変わらないって事ね。
てかナンサおばあちゃん魔女にも会ってるとは…。
ギルド長とも知り合いだし、意外に人脈広い…?
「つか薄めてこれなんだから、原液とかだったらどうなってたことやら…」
「そこは最低限の理性の働いたリアに感謝しないとね…」
下手したら一週間や一ヶ月効果が続くとかありそうだもんね…。
「でもちゃんと時間調整したのなら出し物としても売れそうよねぇ~」
「ウィッグなら作れる」
「服なら作れますのでご要望があれば…」
「やらんからいいわ!」
「まったく…皆もあんまりショーゴいじらないのー」
ショーゴだって好きで女の子になったんじゃないんだから…。
「ショーゴここにいたらいじられちゃうし私の部屋で少し寝る?」
「はっ!? いやいいって!」
「別に遠慮する事ないでしょ?」
私はショーゴの腕を掴んで部屋に移動する。
ショーゴは大丈夫大丈夫と叫ぶが、あそこにいたらまたいじられちゃって可哀想だし、これぐらいしてあげてもいいよね。
その後、無事に元に戻ったショーゴと一緒に戻ってくると壁に寄りかかって放心しているルカと海花の姿があった。
一体何があったのだろうか…?
ルカ、海花「失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した…」




