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Nostalgia world online  作者: naginagi
第五章
223/370

その二人、仲睦まじく

 いやぁイベントが無事に終わってよかったよかった。

 それにしてもやっぱり五人だけであの人数を追いかけるのは大変だったよね。

 まぁそれはいいとして…。


「二人はどこで嗅ぎつけたの?」

「アリス成分を補給しにきたらこうなってた」

「同じくです」

「まぁ一杯あるからいいけど…」


 お店の方で食べ残したデザートなどをサイやリアたちと食べようと準備していると、ルカと海花の二人がお店に入ってきた。

 そしてテーブルの上に置かれたデザートに気づき、じっとそちらを見ていたため誘ったわけだ。


「このプリン美味しい」

「こっちのケーキも美味しいです!」


 ケーキはホールで作ってもらったし、プリンも大きめのお皿に置かれているため、正直一人では食べきれない。

 それが倒した十二人分もあるのだから結構な量だ。


「ご主人様美味しいです!」

「こんなに食ったらちょっと栄養バランスがやばい事になりそうだな…」


 サイ、それは言わないお約束だよ。

 って言っても二人はこっちでの生活に影響されるし、そこら辺も気を付けているんだったね。


「ところで海花」

「ふぁい?」

「イベント中全く姿見えなかったんだけど、どこにいたの?」


 そう。

 森中探していたはずなのだが、海花の姿どころか親衛隊の人すら見当たらなかったのだ。

 エリア指定はされてたから外には出れなかったはずなんだけどなぁ…。


「んっ。えっと、それは藍花の【鏡魔法】のおかげですよ。あの子に壁のように展開してもらって最外周のエリア外の景色を映し出して移動してました。まぁ安全第一で動いていたのでポイントはあまり取れませんでしたけどね。それと途中でウィルとクオたちを見かけたので保護しておきました」


 あー…道理で見つからないわけだ。

 エリア外には出れないってところを利用されてそこを映し出してたわけか。

 確かにそれなら私たちもスルーしてた。

 ってことはどこかしらですれ違ってはいたのか。


「海花のチキン」

「せっ生存第一に考えた結果よ! 誰が悲しくてお姉様たちからの蹂躙を受けなきゃいけないのよ!」

「私…アリスの必殺技喰らった…」

「そっそれはドンマイとしか…」


 まぁルカはある意味私の必殺技の実験体みたいなもんだったからね。


「アリスの嘘に騙された…」

「それはそういう技なんだから仕方ないでしょ?」

「むぅ…」

「全く…。ほらルカもいじけないの」


 ルカの隣に座っている黒髪のアリス似の女性がルカの頭を撫でて慰める。


「んぅ…。アリカだって本気だったくせに…」

「だって本気でやらないとアリスが怒るでしょ?」

「むぅ…」


 黒髪のアリス似の女性―アリカの慰めもあまり効果がなく、ルカは頬を膨らませながらデザートを食べる。


「それにしてもホントびっくりしましたよ。まさかアリカお姉様が実体化するなんて思いませんでしたし」

「んっ。それは同意。演奏の時驚いた」


 後夜祭の時に二人には一応紹介したが、二人はまじまじとアリカを見つめる。

 一見双子と言われてもおかしくないぐらい似ているからね。

 まぁ似ているのは私を元に作っているから当たり前なんだけどね。


「そりゃぁあたしだってビックリしてるわよ。まさかこうやって実体化してアリスと一緒に肩を並べられるとは思わなかったからね…」


 アリカはそう言うと私の右肩に頭を乗せて目を細める。

 私はそんなアリカの乗せてきた頭に寄り添う様に頬をスリスリと擦らせる。


「だってアリカだって私だもん。現実では無理だけどこっちの世界ぐらい隣にいてもいいでしょ?」

「もう…アリスったら…」

「…なんかとっても興奮してきたわ…。このまま銀花も呼んで三姉妹に…」

「傍から見ても仲のいい双子にしか見えない。しかもイベント中は髪も染めてなかったし見分けが付かなくて当然」

「ご主人様が二人だよお兄ちゃん!」

「おっおう。落ち着けリア。っにしても…見てるこっちが恥ずかしくなりそうな絵面だなこりゃ…」



 しばらく肩を貸してると満足したのか、アリカが頭を肩からどかして姿勢を正してデザートを食べるのを再開する。


「それにしてもこのパイ美味しいわね」

「うん。でもアリカの味覚もちゃんとなっててよかったよ」

「まぁあたしとアリスは二心同体だからね。魔法で作られた存在だとしても、制約の影響で食べ物を食べればアリスの満腹度も増えるし、怪我をすればアリスにダメージが入るからね。でも五感はそれぞれ独立しているようだから、あたしが食べたパイの味はアリスには行ってないでしょ?」


 確かに実際イベント中にアリカが負傷したときにダメージこそ負ったものの、痛みは来なかった。


「ですがお姉様のその魔法って実際かなり凄いですよね」

「そうなの?」

「考えてもみてください。お話を聞いたところ、確かに燃費などは悪いです。ですが能力値が同じでほぼ同一人物です。森で姿を隠して入れ替わったとしても誰も気づきません。しかも実質二人で戦う事も可能ですし、一人が戦闘している間に罠を仕掛けにいけたりもできます。更にこの魔法の強みは敵に知られたとしても全く弱点にならないんです」

「えっ? でもショーゴに必殺技破られたよ?」

「あの男は例外です。そもそも何故あの状況で二人とも実体という発想に至ったのかが謎すぎます。変人ですかあの男は…」


 本人の知らぬところで変人扱いされてるショーゴ…ドンマイ…。


「ともかく、お姉様が二人いるという事を知られても、どちらが本体かなんてわからないんです。二人とも姿を消して一人を追いかけていたら突然消えて後ろからっなんてこともできますから、どちらかを追いかけるなんて賭けにしかならないんですよ。正直その状態のお姉様とタイマンして勝てるプレイヤーの方が稀だと思いますよ。あたしは絶対戦いたくないです! 断固拒否です!」


 そこまで拒否しなくても…。

 でもあの魔法って知られても弱みにならないんだ。

 正直必殺技の時ぐらいしか戦闘時は使うつもりなかったんだよね。


「ねぇアリカ」

「いいわよ」

「いいの?」

「別にあたしは戦えないなんて言ってないし、アリスだけを戦わせるのもなんかあれだし…。そっそもそも実体化できるようになったんだから、使える時は呼び出して頼ってもいいんだからねっ!」

「アリカ、ありがと」


 私は再度アリカにお礼を言うと、アリカは少し照れて頬を赤らめる。


「…なぁ…なんで今のでわかるんだ…?」

「お姉様たちの以心伝心というやつでしょうか…もはや「んっ」だけで通じるんじゃないかと思ってきましたわ…」

「いくら元々同じって言ってもそこまでわかるもんなのか…?」

「あたしだって二重人格とかじゃないだからわかるわけないでしょっ!」

「俺だってそんな事ないからわからねえよっ!」


 …なんでサイと海花は二人でヒソヒソ話してるんだろ?


「ねえルカ、二人はどうしたの?」

「んー…。アリスとアリカの仲の良さが羨ましいから、その相談…?」

「別に二人とも仲良くしてると思うんだけどなぁ…」

「んっそうだね。ってことで私もアリスたちと心を通わせたい」


 そう言うとルカは席を立ち、後ろからゆっくりと私とアリカに抱き着いてきた。


「アリス成分二倍補給中ー…」

「成分って…」

「あたしもいるから二倍って事なの…?」

「まぁルカには色々やっちゃったし…少しぐらい…」

「あれは仕方ないのもあったし…。…まぁいいかしらね…」


 その後、ルカのしている行為に気付いた海花が「今度はあたしっ!」と言って騒ぐのでさせてあげた。

 これがイベントの反動だとしたら、もう敵役は無理かな…?

 ごめんねリーネさん…。

 この二人の反動を受け止める方が敵役をやるよりずっと大変だよ…。

あれ…?

この作品って恋愛物だったっけ…?(書いてて困惑

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