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Nostalgia world online  作者: naginagi
第五章
221/370

後夜祭③

「悪い、遅くなった」


 なんだかんだアリスと話ながら一緒に歩いてたら少し集合時間に遅れちまった。

 ステージエリアの集合地点には既にガウルたち四人が待っていた。


「なんだ二人一緒だったのか、こりゃ邪魔しちゃいけなかったな」

「くっそ! いっつもショーゴばっかり!」

「さっきまで殺し合ってたと思えないぐらいの仲良しよね~」

「まぁ二人の仲ですし」


 四人はニヤニヤと笑いながら俺らの様子を見ている。

 そう、俺は今アリスから腕に抱き着かれて歩いているのだ。

 この四人だけでなく、道行くやつらからの視線がめっちゃ痛かった。

 露骨なやつは唾吐いてたしな…。

 俺だって好きでこんな歩き方してねえんだよ…。

 でもアリスがよぉ…「ダメ…?」とか首傾げながら見上げてくるから断るに断れねえんだよ…。

 くっそあざといんだよ!

 しかも別に狙ってやってるってわけじゃなくて、素でやってるんだから質が悪い…。


「んで? いつ始まるんだ?」

「今は各自好きな場所の席取りって感じだな。やっぱりステージ前側は人気で埋まりそうだったから少し後ろの方を取っておいた。それにしてもPT単位で席取れるのは便利だな」

「って、アリスちゃんいるなら席もう一つ確保しないといけなくねっ!?」

「何だったらショーゴの膝の上にでも座っちゃう~?」

「キャー!」


 おいこら何好き勝手に言ってやがる。

 つっても確かにアリスの席どうすっかなぁ?


「あっ、私出演者の方だから大丈夫。待機席の方に行くから」

「えっ? お前何か出し物すんのか?」

「うん。ルカと海花と一緒にね」


 ルカと海花との共同の出し物…。

 天然と無口とツンデレの…。

 ダメだ全く想像が付かねえ。


「って、いてててっ!?」

「…今、失礼な事考えなかった?」

「いっイエナンデモ…」


 俺の考えを読んだのか、アリスに服の上から腕をつねられてしまった。

 すぐにつねるのをやめてくれたが、アリスのSTRホントたけえなぁ…。

 普通に痛かったわ…。


「じゃ、私行ってくるね」

「おう、頑張れよ」

「うん」


 そう言うとアリスは俺の腕から離れて待機席があるであろう場所に向かって行った。


「さて、新婚夫婦のいちゃらぶも終わったし行くとするか」

「俺もそんな彼女が欲しかった…」

「シュウもいい子が見つかるわよ~」

「私は…えっとえっと!」

「誰が新婚夫婦だ!」


 俺はさっさと席を取った場所に向かう四人を追いかけた。



 観客席でしばらく待つと、ステージの上に司会者であろうリーネが現れた。


「さーって皆ー楽しんでるかにゃー?」

「「「「ウォォォォォォー!」」」」

「「「「おっおー…」」」」


 明らかにテンションが違うので分かれてるが、正直テンションが低いのはあのイベント参加者だろうな…。

 まぁ俺たちは既に切り替えてるからそこまでではないが、やっぱり後輩たちはまだ切り替えがうまくいっていないようだな。


「じゃあこれから後夜祭を始めるにゃー!」


 リーネの始まりの合図と同時に、複数人のプレイヤーが現れて空中に杖を構える。

 そして杖の先から様々な魔法が打ち上げられ、まるで花火のように色取り取りのエフェクトが発生した。


「ほう」

「おー」

「あら~綺麗ね~」

「凄いです凄いです!」


 複数人による魔法の連携でああいう事もできるのか。

 たぶん結構練習したんだろうな。


 開演の演出が終わると、複数人のプレイヤーによるアクションショーが行われ、現実ではできない動きや演出をする事で観客を盛り上げていった。

 しかもよくあるわざと攻撃を受けるとかじゃなくて、結構ガチな戦いの感じなのでこちらにも真剣さは伝わってくる。

 恐らく何度も動きを練習しつつ、本番同様にやった結果あのようにすることができたんだろう。


 時間にして十分程ではあるが、最後は敵役のプレイヤーがやられた演出と同時にアクションショーは終わった。

 その出来は十分凄かったと感じたため、次々と拍手が沸き起こった。


「さーって盛り上がってきたにゃ! 続いていくにゃ!」


 すると今度は見た目重視の装備を着たプレイヤーや、様々なコスプレをしたプレイヤーが一人ずつ出てきてステージをゆっくりと歩き中央で止まってポーズを決めていく。


「アクションショーの次はファッションショーか」

「やっべ際どいの見たから鼻血出そう…」

「シュウ…お前ピュアすぎね?」

「それじゃあ彼女できても大変ね~…」

「でもああいう服装可愛いですよね!」


 まぁ…確かに可愛いコーデもあるな…。

 あれをアリスやリンが着たら…って何考えてんだ俺は!?


「おいショーゴ、いきなり首を横に振りだしてどうした?」

「大方あのコーデをアリスちゃんたちが着たらとか考えたんだろ? このリア充が!」

「うっさいわ!」


 まったく…。

 しかも参加者は女だけじゃなくて男もいるしな。

 にしてもあれだけの量の服をリーネ一人で用意したのか?

 すると俺の疑問に答えるように、リーネが説明に入った。


「ちなみにこのファッションは私じゃなくて他の生産職が作ったにゃ! しかもそこまでスキルレベルも高くない子が作ったのもあるにゃ! だから皆も気になったら作ってみるのにゃ!」


 ほう。

 つまりスキルレベルだけじゃなくてセンスやアイデア次第でああいうのも作れるってことか。

 しかもそれは裁縫だけに限った事じゃなくて他の生産スキルにも言える事だ。

 ある意味生産職のモチベーションアップに使ったということか。

 リーネのやつ考えてんだな。


 ファッションショーも終わり、会場の空気もかなり温まってる。

 さて、次は何が来るんだ?


「さーってみんな―! やっぱりステージと言ったら演奏は外せないと思うにゃ! ということでここからはライブステージの時間にゃー! 皆立つにゃー! じゃあ運営さんお願いしますにゃ!」


 リーネの指示通りに俺らが席を立つと、今まで座っていた席が消える。

 そしていつの間にか手の上に何本ものサイリュームが現れた。


「じゃあ盛り上がっていくにゃー!」


 すると最初の演奏グループが現れた。

 そして自分の使用する楽器を出現させて演奏が始まった。


 演奏が一曲で終わるグループもあったり、三曲やって終わるグループもあった。

 どうやら時間の関係上、一グループ三曲までっぽいな。

 にしても楽器アイテムなんてどこにあったんだ?

 もしかして作ったのか?


「さて、名残惜しいけど次が最後のグループにゃ!」


 おっ次で最後か。

 他のグループも結構演奏上手かったし、楽器にそういう補正掛かっているんだろうな。

 んにしても最後のグループって事は一番上手いんだろうな。

 そしてステージに現れたのは…。


「あっ…アリスゥゥゥゥゥゥ!?」


 しかも他のメンバーは海花にルカ、それに小さくはなってるがミラと…あと一人誰だ?

 身長はアリスと同じぐらいだが、服装がアリスの装備に似てるが髪の色が黒で狐のお面を被ってて顔が見えなくて誰だか全くわからねえ。


 五人はそれぞれ担当する楽器を出して準備をする。

 海花がマイク持ってて、謎のお面とルカがギターでミラがピアノのアリスがドラムか。

 まぁ海花はネットアイドルだったっていうし、歌は得意なんだろ。

 にしてもアリスがドラムか…。

 全く想像付かなかったわ…。


 しかし始まってみると圧巻の一言だった。

 先のグループから補正は入ってるとは思ったが、普通に上手い。

 特にミラなんてプロなのかと思うぐらい綺麗に弾いてみせてる。

 海花もネットアイドルやってるだけあって歌うめえし、何だこのグループ。

 マジでレベルちげえじゃねえか!


 三曲目が終わり一瞬静かになった次の瞬間には拍手と歓声が沸き起こった。

 その沸き上がりの様子を嬉しく思ったのか、海花だけでなく、ルカとアリスも笑顔になっていた。

 アリスたちがステージから出ていくとリーネが出てきて閉会の言葉を告げる。


「さて、後夜祭の全スケジュールはこれにて終了にゃ。皆楽しんでもらえたようでよかったにゃ! この後夜祭を見てわかったと思うけど、工夫次第で色んなことができるにゃ。だから皆もやりたい事にたくさん挑戦してほしいにゃ! って事でイベントステージでの催し物は終わったけど、外のフィールドではまだやってるから騒ぎ足りない人は時間一杯まで騒ぐにゃ! ではこれにて、プレイヤーイベントの全スケジュールの終了を宣言するにゃ!」


 こうして、怖くて楽しいプレイヤーイベントは幕を閉じた。

ふぅ長かった…。

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― 新着の感想 ―
どう考えても面付けてるのアリカなんだよなぁ…
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