後夜祭②
「はぁ…」
「ショーゴ、どうかした?」
「どうかしたってなぁ…」
「んっ?」
「いやなんでもねえ」
こいつにとって俺とのあーんは普通っていう認識があるからなぁ…。
それを指摘したところで治せないだろうしなぁ…。
むしろ「他の男の人にはやらないよ?」って言われて終わりだろうしなぁ…。
に、してもだ…。
「それよかあっちの方が問題だろ」
俺はアリスに現在問題が起こっているテーブルの方を指差す。
「ですから貴方はもっと自覚を持つべきなのですよ」
「キュゥ! キュゥゥ!」
「あのイベントを見て何も思わない方がおかしいでしょうが!」
「キュッ! キュゥゥゥ!」
「いくらアリスさんが喜んでくれるからと言っても限度というものがあるでしょうが!」
つかなんでタウロスとレヴィが喧嘩してんだ?
二人に接点は…あぁあったなそういや迷宮イベントで。
「何かあったのかあの二人」
「んー…イベント開始前に二人で何か話し合ってた気がするけど、詳しい事はわかんない」
「それだけであーなるのか…?」
会場見学に来ていたタウロスがたまたまアリスを見つけて声を掛けたと思ったらこの有様だ。
最初はレヴィを説教してたタウロスも次第に悪口になってるし…。
「全くこれだから大罪は…」
「キュゥゥ! キュッキュゥゥゥ!」
「この駄蛇…」
「キュゥ…」
えーっと…あれ…タウロスだよな…?
いっつも紳士的に対応してるあいつがこんなに感情剥き出しにするってのも珍しい…というか初めてじゃねえのかこれ。
つかぼそっと大罪って聞こえたぞ?
大罪ってあれだろ?
七つの大罪の事だろ?
そうすると…サタン、ルシファー、ベルゼブブ、マモン、ベルフェゴール、レヴィアタン、アスモデウスの七悪魔だよな。
その中でレヴィに当てはまるのって…どう考えてもレヴィアタンだよな?
あれって確かリヴァイアサンの別名だし。
って…あれ…?
つまり今回のイベントの報酬の鱗って…。
「ショーゴ…?」
「っ!?」
アリスから声を掛けられてついビクンと反応してしまった。
そうだ、それなら納得がいく。
リヴァイアサンの鱗なんていう超レアアイテムをアリスが欲しがらない理由。
いや…これは俺の胸の内に隠しておこう…。
幸い俺以外に周りに関係者はいないようだしな…。
それにアリスを変な騒動に巻き込ませたくねえしな。
しかし、気づく原因になったタウロスには少し注意しておくか。
俺は席を立ち、タウロスたちがいるテーブルに近づく。
「タウロス、レヴィも少し落ち着け」
「っ! これは失礼しました。少し熱くなってしまったようです」
「キュゥ…」
「レヴィ」
いつの間にかアリスもついてきていて、レヴィを抱き抱える。
「レヴィ? どうしたの? タウロス君と仲悪かったの?」
「キュッキュゥ…」
「いえ…仲が悪いというわけではないのですが…」
そういやタウロスって黄道十二星座の一つだしな。
しかもタウロスはゼウス関連、つまり神関連の子供みたいなもんだしな。
そりゃ悪魔とは相性悪くもなるわな。
「それよかタウロス。少し発言には周りに気を付けて注意しとけよ?」
「えっ? …あっ! あっアリスさん申し訳ありません!」
「えっ? 何が?」
「いえ…その…」
「んっ?」
「いやまぁ…タウロスが言いたいのはレヴィの正体についてだな。さっきのちょっとした発言で何となくだがわかったって感じだからな」
「でも正直ショーゴの事だから薄々気づいてたんじゃないの? 今回のイベントの事もあったし」
「まぁな…」
「それに他の人にも聞かれなかったし、ショーゴだけだったしいいかなって。ショーゴなら言いふらすことないだろうし」
「そりゃ軽々しく言える案件じゃねえしな。黙ってるよ」
つか喋ったらこっちでも現実でも何されるかわかったもんじゃねえ…。
「って、そろそろステージエリア解放される時間じゃねえか」
「あっホントだ」
「にしてもこの残った料理どうするか…」
「じゃあ私が【収納】で入れておくからショーゴは表で待ってて。すぐ行くから」
「あぁ、わかった」
確かに俺は【収納】なんてスキル持ってねえしな。
ここはアリスに任せるか。
「ふぅ…」
「…本当によかったのですか?」
「こっちこそごめんね? 急に頼み事した上にタウロス君を悪者にしちゃって」
「いえ、こちらもその駄蛇には思うところがありますから」
「キュゥ!」
「それにしてもヒントとはいえ教えてよかったのですか? 私が言うのも難ですが、大罪についてはかなりデリケートな部分があります。それを貴女の必殺技を破った隠し報酬にするというのは…。幸いそれが貴女の幼馴染の彼だったからよかったものを…」
「うん、いいの。それぐらい自信があったんだから。…でも正直ね、悔しかったの。それが初見で破られた。ホントショックだったなぁ…」
「どんな技にも弱点やリスクというものはあります。それにたまたま彼は気づいただけです。実際、あの技を喰らって防げる者はそうはいません」
「タウロス君に言われるとなんか照れるね。でも…ショーゴってやっぱり強いね…」
「えぇ。戦闘技術に状況判断、それに精神面も高く評価できます。むしろ彼に二つ名が付いていない事の方が驚きです」
「まぁショーゴは目立たない動きばっかりするからね」
アリスはそう言いながらペットを引き連れて食べ残しを【収納】していく。
「じゃあ私は行くね。タウロス君もよかったらステージ見に来てね」
「はい、楽しみにさせていただきます」
食べ残しを全て【収納】したアリスは、ショーゴの待つ表へと向かった。
「全く…私からしたらあんな技を作るアリスさんの方に嫉妬すら覚えますよ…」
そう言ってタウロスも後に続いてステージエリアへと向かっていった。
隠し報酬をアリスアリカからの頬へのキスとか血迷った事を考えたけど踏みとどまりました(謎の意志




