プレイヤーイベントは恐怖とともに③
くそっ!
マジで始めやがったよ!
とりあえずチェックポイントを探さねえと…。
『あっ、そういえばチェックポイントの場所を言うのを忘れてたにゃ。マップを見てもらえばわかるけど、東西南北にそれぞれマークがされていると思うにゃ。それが全参加者にボーナスとして知らされてる場所にゃ。他にも複数あるから一杯探してポイントゲットしてにゃ!』
よし、それなら全参加者で協力してできる限りチェックポイントの場所を把握して…。
『あと景品について言ってなかったにゃ。今回、なんと景品には未成熟のだけどあのリヴァイアサンの鱗があるにゃ!』
「「「「「「「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」」」」」」」
全参加者で…協力…して…。
俺はガクリと膝と両手を地面につける。
リヴァイアサンの鱗なんて超特大の餌ぶら下げられて協力するやつなんていねえだろうが!
どいつもこいつも我先にとチェックポイントに群がるだろうが!
リーネの野郎…悉くこっちの作戦を潰しにきやがって…。
「ショーゴ、ともかくどこかの方角のチェックポイントに向かうぞ。こんな状態だ。先行組ならともかく後続組はチェックポイントに群がるだろう。そうなったらアリスが動き出してしまう。その前にどこか少しでもこちらに有利になりそうな場所を探すべきだ」
「ガウルの言う通りだな。少なくても混乱している場所なんてアリスちゃんの餌場だ。ともかくこの場を離れた方がよさそうだな」
「でも…どの方角に行きましょうか?」
「下手するとあの子と即鉢合わせになるわよねぇ~…」
確かにそれはそうだが、動かない事にはどうにもならんしな…。
「鬼ごっこということだし、鬼門とかそういうのが関係してるんじゃねえか?」
「鬼門っつーと…方角はどこになるんだ?」
「確か北東だったと思いますけど…」
「じゃあ南西方面に行くか?」
「…いえ、ここは北西に行かないかしら~?」
「えっ?」
なんで鬼門の反対側じゃなくて北西なんだ?
「鬼門と逆の方角は裏鬼門っていうのよ~。こんな参加者を釣る運営サイドがわかりやすい方角にあの子を置くとは思えないし、いっそのことどっちからも離れた北西か南東がいいと思うのよ~」
裏鬼門なんてもんもあんのか…。
確かにリーネのあの様子だとアリスを鬼門に配置したりっていうのがなさそうだしなぁ…。
ここはレオーネの案に乗ってみるか。
「じゃあここはレオーネの案通りに北西に向かうぞ」
「さぁ鬼が出るか蛇が出るか…」
俺らは少し急ぎ気味で北西方面へと向かう。
俺らと同じ考えでまずはアリスから離れる事を考えたのか、何組かのパーティの姿も見える。
中にはわかっているチェックポイントよりも、見つかっていないチェックポイントを見つけて把握しておいた方がいいという判断をしたやつもいるだろう。
でもなんか引っかかってんだよなぁ…。
初めに出されたチェックポイントは四ヶ所…んでアリスは鬼役だから鬼門か裏鬼門に配置されているとする…。
でも鬼役をいくらアリスでもこの人数を相手にするのは流石に大変だ。
だとすると他にも鬼役はいてもいいはずだ。
それがいないってのが引っかかんだよなぁ…。
リーネは鬼役のアリスと言っていた。
その時他の鬼役がいたとしたらあの流れで紹介しないという事はないだろう。
だとすると残るのはアリスの眷属だが…。
いくら育てたと言っても、数十人相手ならばあっという間に倒されてしまうだろう。
それにも関わらず鬼役がアリス一人…?
一体リーネは何を考えている…?
すると突如ビーっとアラームのような音が森中に鳴り響いた。
『おっ、誰かがチェックポイントに触れたようだにゃ。というわけで、皆もう始めちゃっていいにゃ』
リーネの許可の合図が出た瞬間、まだまだ距離はあるが俺らの前方方面で大きな地響きと土煙が立った。
「なっなんだ…?」
「まるで何かが投下されたようだが…」
そこで俺はリーネの説明の一つを思い出した。
『アリスちゃんには【自動回復】のバフが運営から付けられてるから全損して鬼役が消えるってことはないにゃ』
そう、リーネは運営からバフが与えられている。と言っていた。
という事は、それはプレイヤーであるアリスは勿論…その眷属であるペットたちにも与えられている可能性はあるという事だ。
って、やばい!
「ここから急いで離れるぞ! このまま西側に向かう!」
「えっ!? なんでですかー!?」
「ともかくショーゴの言う通り何かやばそうだ! 急げっ!」
あんなデカイ地響きと土煙が立ったって事は、アリスのペットの中でも大型系になれるレヴィの可能性が高い。
そう考えるとまだ地形把握も準備もできていない今の段階で当たるのは不味い!
一刻もこの場所を離れねえと!
離れている途中にチラっと後ろを向くと、先ほど俺らがいた辺りに大きな土煙が徐々に近づいているのが薄っすらと確認できた。
もしあのまま進んでたらと思うとゾっとするな…。
西のチェックポイントに向かう途中、たまたまチェックポイントの証である光るマークが付いている木を見つけたので俺らはタッチする。
するとタッチした手の甲にポイントが浮かんだ。
「えっと、10が浮かんでるってことはこれが今の俺のポイントか」
「西のチェックポイントの点数がわからんから高いのか低いのか判断できんが、これで一先ずは何もせずに失格になった参加者よりはいい物は貰えるだろう」
「ならさっさと向かうか。またいつ襲われるかわかんねえからな」
あまり同じ場所に留まっているのと、先ほどの土煙の主に襲われるかわからねえしな…。
しばらく進み、無事に西のチェックポイント着くと何組かのパーティがこの後の方針を話しているのが聞こえた。
「南西からこっちに来たやつらの話によると、南西には【首狩り姫】がいるらしいぞ。今は南方面に向かったからいいけどさ…」
「西方面に来られてたら終わってたな…」
「北西にはなんか三階建てのビルぐらいはあるでけえ植物の移動要塞みたいのがいたって言うし…一体どういうことなんだよ…」
西のチェックポイントにタッチしながら情報を収集しているが、植物の移動要塞ってなんだ…?
植物ってなると恐らくネウラの事だろうが、ネウラの大きさって精々人と同じぐらいだったよな?
それが何で三階建てのビルぐらいの大きさになるんだ…?
これも運営の強化バフの効果ってやつなのか…?
だが、アリスがこっちに来ないで南に行ったって言うのはいい情報だ。
今のうちに西の奥の方に向かってチェックポイントを探すか。
「ショーゴ」
「ガウルか。もうタッチしたのか?」
「あぁ。これで30になった。おそらくだが、チェックポイントは中心から遠くになればなるほど点数が上がるのかもしれない。今俺らは大体中心から西へ2km地点辺りにいる。それでこれが途中で俺らが見つけたチェックポイントだ」
ガウルはマップを俺に見せて二ヶ所のチェックポイントの場所を示す。
二ヶ所とも中心から大体2km程離れた場所であることから、ガウルの推測は当たっているのだろう。
「ならこのまま西を目指して高ポイントのチェックポイントを探すか」
「そうだな。むしろ鬼ごっこの鬼から逃げる役はこちらなのだろうから精一杯逃げてやるとしよう」
「んでクルルとレオーネとシュウは?」
「向こうで少し休んでるクルルとレオーネをシュウが警護してる。こんな精神をすり減らすようなイベントだ。休める時に休んどいた方がいい」
「まぁそうだろうな…」
アリスが別の方角に行った時点で、そうそう俺らに追いつくような移動特化のペットはいなかったはず。
だったら今のうちに少しでも気力を回復させるべきだな。
…さて、鬼のいぬ間にどれだけ稼げるかがカギだな…。
現在の情報
鬼役の初期位置
南西:アリス
北西:ネウラ?
北東:?
南東:?
あれれー? 一人足りないぞー? どこにいるんだろうなー(棒




