一種の呪いなのでは?
「レヴィ、気持ちいい?」
「ギュゥ!」
今私はクラー湖に訪れて、大きくなったレヴィの身体を洗っている。
普段は小さいままのレヴィで身体を洗ったりしているのだが、たまには大きくなった状態で身体を洗ってあげている。
ネウラやミラ、フェイトと違ってレヴィには手がないため自分で洗えないので私たちが洗ってあげるしかないのだ。
まぁ別に嫌ではないので構わないんだけどね。
「それにしてもホント大きいわねぇ」
「以前一度見ただけですけど本当に大きいですね」
「ふふんっ! レヴィお兄ちゃんは凄いんだよ!」
二人の先輩であるネウラが誇らしそうにするが、別にネウラが偉いわけでもない気もするが…まぁいっか。
レヴィも洗ってもらえて気持ちよさそうだし。
私たちがレヴィを洗っているのに気づき、イカグモさんたちも湖から顔を出してその様子を見ているし、いやー平和っていいなぁ。
「それにしてもここってホント静かねぇ」
「ある意味避暑地みたいな場所でしょうか。周りも荒れた様子はないですし」
「言われてみればそうかもね。私も三ヶ月…ってここでは九ヶ月か、それぐらいから来てるけどそういう感じはないね」
「微かに精霊…というか何かの結界のようなものが張られてる感じがするわね」
「結界?」
「えぇ、街でも張ってあったようなものと同質…かはわからないけど、それに似たものが張ってあると思うわ」
街と同じような結界…ということはここってセーフティエリアってことなのかな?
でも私最初にレヴィから攻撃受けたよね…?
ということは、クラー湖は外からはモンスターは入ってこない一時的な安全ポイントってことかな?
まぁこの先にエルフの里もあるし、中継地点扱いなのかな?
「でもレヴィお兄ちゃんってこれでも大きいのに、封印解除すると更に大きくなるなんて信じられないわよ」
「私もそれは見たことないので何にも言えませんね」
「ネウラはその時出してもらえなかったから見てないんだよねー」
正直あの時は私も我を忘れてたっていうのもあるし…完全にぷっつんしてたから後先考えてなかったのもあるんだよね…。
てか封印解除しようにももう対価となるスキルがないからなぁ…。
奥の手用に何かと入れ替えてまた少し育てといた方がいいかなぁ?
でもまたレヴィの封印解除する機会なんてそうそうないと…思いたいなぁ…。
「ギュゥ?」
「あぁうん大丈夫だよ、レヴィ」
「ギュゥ? ギュゥゥ!」
そもそも、レヴィの封印を解除すると敵というよりも周りに被害が出るんだよね…。
主に痛覚制限的な意味で。
だからレヴィの封印を解除する場合には味方が周りにいない時限定っていう条件があるんだよね。
そういう事を考えると、私の得意なフィールドが森っていうのはある意味都合がよかったのかもね。
だって、私が森に立て籠もるってことは全て殲滅すればいいってことになるもんね。
っと、余計な事を考えてないでレヴィの身体を洗わないと。
ゴシゴシっと。
ゴシ…ゴシ…ゴシ…ゴシ…バキッ。
…ん…?
バキッ…?
何やら急に右手に掛かる重量が重くなった気がしたので、ふと右手の方を見てみると、そこには青い鱗が洗濯道具と一緒にくっついていた。
「……」
私はその青い鱗とレヴィの身体を交互に見る。
あれー…?
この青いの…レヴィの身体の鱗と同じ色してるー…。
……。
「ヴェアァァァァァァァァ!?」
「お母さん!?」
「ご主人様!?」
「お姉ちゃんどうしたのよ!?」
「あわわわわわわ…こここここれ…」
私は狼狽えながらも手に持った青い鱗を三人に見せる。
「どどどどどどどどうしよう…」
「えっと…お母さん…」
「レレレレヴィにどう謝ったら…」
「レヴィお兄ちゃん…古い鱗の生え変わりの時期だったっぽいよ? だから今日広い場所で大きくなりたかったんだって。さっき聞いたんだけど…言うの忘れてた…かな…?」
「…え…?」
チラッとレヴィの方を見ると、何かあった? と言わんばかりに何も気にしている様子を見せない姿のレヴィが大きく口を開けて欠伸をしている。
その大きな欠伸を皮切りに、レヴィの身体からポロポロと青い鱗が剥がれて地面に落ちていった。
全ての鱗とは言わないが、半分から三分の一程の鱗が剥がれ、その部分から新しく一段と綺麗に光る青い鱗が生えてきた。
「ギュゥゥゥゥゥゥ!」
「あっ、生え変わりが終わったっぽいよ、お母さん」
「……」
「ギュゥ!」
「お掃除ありがとだって、お母さ…ん?」
「ギュゥ?」
「…固まってますね」
「全く…何してるんだか…」
「はっ!?」
「あっ起きた」
あれ?
私いつの間に寝ちゃってたんだろ?
確かレヴィの鱗を折っちゃった夢を見てたような…。
「まったく…急に気を失うからびっくりしたのよ?」
「あーうん、ごめんね?」
「もうっ、ほら早くレヴィお兄ちゃんの鱗片づけて」
「…え?」
あれって…夢じゃなかったの…?
ふと周りを見てみると、近くに綺麗に積み上げられたレヴィの鱗らしき青い鱗が置かれていた。
「一応数えておいたけど、全部で37枚程あったわ。残りはまた半年後ぐらいに生え変わるらしいわ」
「いや…あの…」
「どうかしたの?」
「ちょっと…その鱗取ってくれる…?」
「いいけど…」
私はフェイトからレヴィの鱗の一枚を受け取り、【鑑定】を掛けてみる。
リヴァイアサンの鱗(未成熟)【消耗品】
リヴァイアサンの鱗で高い物理耐性を持つ水属性の鱗。しかし未成熟体のものであるため効果は成体のものと比べて下がっている。
私は鑑定結果を見て崩れるようにがっくりとした姿勢を取る。
いやいやこれって絶対まずいやつじゃん!
リヴァイアサンってもうはっきり名前出てるじゃん!
隠しようないじゃん!
あぁぁぁぁどうすれば…。
ともかくリーネさんに相談せねば…。
てか皆…綺麗になったレヴィと遊んでるけど…結構これ一大事なんだよ…?
その事…わかってるかなぁ…?
あー…またリーネさんに何言われるやら…。




