作戦会議
沼地から戻った私たちは、一先ず対策を立てるべく自宅で会議を行うことにした。
「まずはあの霧だね。私は【風魔法】は持ってないから吹き飛ばせないし、皆もそういうの持ってないもんね…」
あの霧が物理現象や魔法だとしても、私たちにはそれを吹き飛ばす手段がないのだ。
童謡などの中に霧を晴らすやつがあるかもしれないが、私が覚えている中では見つかっていない。
次にあの泥で進みにくくなった地面だ。
あれに関しては【大地魔法】とかの地形操作でたぶん対処はできると思う。
でも視界が悪い状態でそれをすると、敵も動きやすくなったりする可能性がある。
それを考えると少し気が引けるんだよね。
「なら私が空から地上を制圧するのはどうですか?」
「敵を倒すだけならそれでいいんだけど、探索を考えるとあまり地形を荒らしすぎるのはちょっとね…。あくまで目的は素材探索だからね」
不特定多数の敵を倒すだけならミラの言った方法が一番手っ取り早いだろう。
事実、ミラの【血魔法】は範囲攻撃が多い。
それを活かした大規模攻撃はかなり有効だ。
だが、そうすると攻撃後の地形への影響がかなり出てしまうことになる。
なのでどうしてもあの沼地に適応しないといけないということに…。
「ともかく! あの霧さえどうにかできればいいのよ!」
泥攻撃を喰らったフェイトは今でもご機嫌斜めだ。
酷くご立腹のようだ。
「でも誰も風系統の技や魔法持ってないでしょ?」
「うっ…」
そう、結局そこなのだ。
歩きにくい沼地はともかく、視界を遮る霧が問題なのだ。
「リンにお願いするかなぁ…」
私がぼそっと呟くと、ミラとフェイトが誰の事? と不思議そうな顔をする。
そういえば二人は会った事なかったんだっけ。
「リンは私の幼馴染で風系統の魔法を使う魔法使いだよ」
「じゃあ今回の件にぴったりじゃない!」
「でもリンはギルドに所属してるから色々と行動が制限されてると思うんだよね…」
「ならばまずは予定を聞いてみてはどうですか? あとはご主人様の予定と合わせて沼地に向かえば問題ないかと思います」
「…うん、そうだね。まずは聞いてみるよ」
ミラとフェイトに言われるままリンへとメッセージを送ってみた。
しばらくするとリンからの返信が返ってきた。
どうやらプレイヤーイベント関連であまり余裕がないらしく、行けてもイベント後ぐらいになっちゃうかもとの事だった。
「んー…リンも忙しいから難しいって」
「それなら仕方ないわね。なら今度沼に行った時にあんな舐めた真似したやつらに仕返ししてやるわ!」
「ではこれからどうしますか?」
「んー…」
どうするかと言われてもなぁ…。
特にやることが決まってなかったから沼地に向かったのもあるし…。
私が腕を組んで悩んでると、ミラが両手を軽く合わせて私に提案をする。
「ならばこの空いている時間でリア様の調合の具合を見てあげるのはどうですか?」
「リアの?」
「はい。リア様も頑張っていますが、やっぱりご主人様に見てもらった方がモチベーションややる気も上がるのではないでしょうか」
言われてみればリアの調合の様子を見てなかったなぁ…。
「でも私が見て逆にプレッシャーとか掛からないかな?」
私が様子を見ることで、新薬の進み具合はどうなの? といった具合にならないかが不安なのだ。
「それなら大丈夫です。むしろリア様はご主人様に覗きに来てほしそうに時折入口を見てますよ。恐らくですが、リア様はあまり自分から成果を言うタイプではなく、聞かれて答えるタイプなんだと思います。もちろんちゃんとできたら言いますが、途中経過を言うのは気が引けるんだと思います」
「……」
正直驚いた。
まだ家に来てそんなに経っていないはずのミラがリアの事をそこまで見ていたということに。
常に周りを警戒しながら生活をしていた経験からの観察眼なのかはわからないが、サイの次にリアの事を知っているのはミラなのではないのだろうか。
「私も裏方が多いですし、それに女ですのでリア様とも見た目の年齢が近いのもあってよく話すだけですよ」
「えっ…? 私だって歳も見た目もそんなに変わんないけどほとんど話してないわよ…?」
「えっと…それは…」
フェイトが見た目が近いなら話しているという発言にショックを受け、ミラがなんとかフォローしようとするが、上手く言えないで口どもってしまう。
まぁ見た目ではミラとフェイトどっちと話しやすいかと言えば、物静かな雰囲気なお嬢様のミラだよね…。
フェイトも可愛いんだけど、ちょっとツンツンした雰囲気で小さい子からしたら話しかけ辛いというか…その…。
「まっまぁフェイトもこれから話掛けてみればいいじゃん。歳も近いなら話も合うでしょ?」
「そっそうね! じゃあ早速行ってくるわ!」
「あっ! ちょっと待っ…行っちゃった…」
「アハハ…」
「…リアってあんまりガツガツ来るタイプ得意じゃないよね…?」
「話した感じですとそうですね…」
「…何か…用意しておこうか…」
「一応お聞きしますが、どちらのためのですか…?」
「普通ならどっちのって賭けとかになりそうだけど、まぁ結果はわかってるし…」
「では苦めのお飲み物を用意しておきますね」
「うん、よろしくね」
数分後、涙目でこちらに来た少女は私たちの予想通りで、苦めの飲み物を泣きながら飲み干して大泣きしてしまうのであった。
だから待てって言ったのに…。
私は栗色の髪をした少女の頭を撫でて慰めてあげつつ、二人の関係をどう繕うか悩む事となった。
ツイッターと活動報告に完成版アリスを載せてありますので良かったら見てみてください。
2018/1/18 リンとの沼地の件を少し修正しました。




