『最強』とは
どうもー。
清く正しくディセ新聞でお馴染みのディセでーっす!
さてさて、今回のネタは皆さんが気になってる事を書くつもりです!
MMORPGをやってる人ならば誰もが気になる『最強』の二文字!
まだ正式リリースして半年も経ってませんが、ゲーム内ではもう半年が過ぎましたし、ここいらで一度ランキングでも作ろうと思ったのですよ!
と、いうことで早速取材に街頭アンケートを取ってくるとしましょう!
「…はぁ…」
「おい、なんかディセさん疲れた顔してねえか?」
「行く前は超テンション高くて五月蠅かったのにな」
そこ!
麗しい乙女に五月蠅いとはなんですか!
「んで何かあったんすか? 最強ランキングの調査してたんですよね?」
「えぇ…まぁ…」
「ん?」
同僚二人はお互いの顔を見て首を傾げる。
まぁそうなりますよね…。
「もう…最強ってなんだかわからないです…」
「「は…?」」
「いやだって! 普通最強って言ったら腕自慢関係になるじゃないですか! 何をどうしたら生存特化が最強になるんですか!」
「いやまぁ生き残れば勝ちともいうし…」
「でも生存特化なプレイヤーなんて…あっ…」
「何か気づいたのか?」
「いや…俺の勘が正しければなんだが…」
どうやら彼も気づいたようですね。
えぇそうですよ!
私の頭痛の種はそれなんですよ!
「たぶんディセさんが言ってるのって【不沈棺】の事なんじゃないかなって…」
「…あぁ…」
どうやらもう一人も理解したようですね。
私も彼女については少しは知っています。
とは言っても直接会った事はないので噂程度の事ですが…。
まぁ事の発端は今から少し遡る。
「はーい! アンケートのご協力ありがとうございまーっす!」
よしよし、アンケートは順調順調。
私は最強と言っても地形とかも影響あると考え、地形別に最強の候補をアンケートしていたわけです。
平地、森、水の中、洞窟、火山、氷山、山といった今見つかっている地形でですね。
とまぁ森と水の中は大体私の予想通りでしたね。
森は【首狩り姫】でお馴染みのアリスさんがダントツのトップ。
そして水の中では【人魚姫】のライラックさんに、次点で【熱血漢】のダンさんの接戦でしたね。
ですが、ダンさんは女性に対する免疫が少ないようなのかライラックさんに対して苦手意識を持っているため、そこが勝敗を分けたようですね。
やはり第一陣というアドバンテージなのか、第二陣の名前はあまり上がっていませんね。
ですが、第二陣でも海花さん辺りの二つ名勢はちょいちょい名前が上がっているんですよね。
平地でも海花さんの名前も上がってますし、森でも上がってました。
とはいえ相手が悪すぎますねぇ…。
平地だと銀翼の方々の名前以外にも【高速剣】のアルトさん、更には【爆裂】のウェンディさんなどのソロプレイヤーの名前も上がってて激戦区です。
その他の場所もやはり有名所の名前が上がってますし、やっぱり二つ名勢はそれだけ注目されているんですね。
ですが、ここまでは街頭アンケートでの結果。
これからはその二つ名勢から直接聞ける時間です!
勿論アポは取ってありますし、時間が合う皆さんにはお願いして一つの場所に集まってもらっています。
それを何グループかに分けてお話を聞くわけですよ。
「では本日集まっていただきありがとうございますー!」
そして今私の前にはそうそうたる二つ名勢が揃っています。
「さて皆さんにも予定とかもありますでしょうし、ささっと進めていきたいと思います! では最初の質問です!」
Q:平地で一番強いと思うプレイヤーは誰?
「平地か…また難しいな…」
「平地となると広域殲滅魔法とかが使える人かしらね~?」
「リンかなー?」
「ウェンディさんかエクレールさんかしらね~」
「アリス。それ以外譲れない」
「ルカっ! あなた真剣に答えなさいよ! っと、あたしは【暴風】辺りの広域魔法勢だと思うわ」
「陸の事はあまりわからないわねぇ…」
「闘技イベントも出なかったから俺もあんまりわかんねえなぁ。てか女多すぎじゃね…」
「私はリンさんを押します」
「私もリンさんですかねぇ」
ふむふむ、やはり広域魔法を使うリンさんやウェンディさん、エクレールさん辺りって感じですね。
「では次の質問です」
Q:森で一番強いと思うプレイヤーは誰?
「「「「「「「「「アリス(【首狩り姫】/お姉様/さん)」」」」」」」」」
「……」
「はい、満場一致ということで決定ですね。ささ、次行きましょうー」
アリスさんが何とも言えない顔をしてますが、ぱぱっと進めてしまいましょう!
「では地形別はこれぐらいですね。では最後に最も強い人は誰か聞きたいと思います」
私が最後の質問をすると、皆さん悩んでしまいました。
まぁ当然ですよね。
地形という条件があったから多少は決めやすかった部分もありますが、今度はその条件がない。
そうなれば簡単には決まりませんよね。
「最強…か…」
「どの定義を持って最強かっていう話なのよね…」
「倒れないってのはある意味最強になるのかしら~…」
「倒れない…最強…」
「あの人…嫌い…」
「ちょっ!? しっかりしなさい! ってお姉様までっ!?」
「生理的にあの方は無理ですわ…」
「流石の俺もあれにはドン引きだったぜ…」
「何度爆発させたことか…」
「皆さん物騒ですね…。まぁ私も人の事言えませんが…」
…あれ? なんか皆さんの様子が…。
「えっと…皆さん…?」
「あぁすまない。ちょっと最強と聞いて嫌な事を思い出しただけだ…」
「嫌な事…ですか…?」
「なんであの人首何回も斬ってもすぐ復活するの…? 意味が分からない…」
「私なんてアレニアの能力完全解放して何度も殺ったのに喜んでた…怖い…」
「お姉様もルカもしっかりしてください! 確かにあれは得体のしれない化け物ですが、きっといつかは倒せるはずです!」
「「ホントに…? ホントにそう思う…?」」
「うっ…」
何故だかアリスさんとルカさんの目が暗黒面に堕ちそうな感じの暗い感じの目になってますが一体何が…。
「あー…ディセさん」
「はい、アルトさんなんでしょうか?」
「恐らくここにいる皆さんが同じ目に遭ってると思うのですが…」
「はぁ…それで原因は一体…」
「えっと…あの様子からすると実は私たち全員【不沈棺】にPKを挑まれてまして…それでその…」
PKを挑む?
PVPじゃなくて?
「文字通りPKです。理由はPVPだと一デッドで終わってしまうからなんです…」
「へ…?」
「彼女の二つ名である【不沈棺】。彼女は文字通り『決して沈まない棺』なんですよ…」
「つっつまり…?」
「彼女…持ってるスキルが異常なくらいに死亡してからの復活系統に傾いているんですよ…。死亡時教会に戻らずにプレイヤーとモンスターがいない近くの場所で復活する【死体回収】に、復活時HPを回復する【黄泉返り】といった具合に…。その他にもそれ系統のスキルを…」
なっ何その特殊なスキル!?
えっ?
つまりそれって…。
「文字通り倒しても倒してもすぐ復活するんですよ…。首を斬られようとバラバラにされようと燃やされようと塵にされようと何をされても復活するんです…。ですが弱点はあるんですよ…? 復活できないイベント系では死亡したら終わりですからね…。ですがそれ以外だと…」
「え…えーっと…それ迷惑行為とかセクハラ関連でBANできないんですか…?」
「あくまで彼女はこちらに実害は与えてないんですよ…。単に私たちの攻撃を喰らいたいだけなんで…」
「えっ…?」
粘着的な攻撃をするんじゃなくて攻撃を喰らいたい…?
…もしかして…。
「…彼女って…ドMなんですか…?」
アルトさんは小さく頷く。
「ですがそれを差し引いても【死体回収】なんてすぐ復活できるスキルなんて誰でも欲しがると思いませんか…?」
「えぇ…確かに…」
街に戻らずに復活できるならとっても良いスキルですよね?
「でも…その【死体回収】スキルの装備条件が痛覚制限最大の50%であることっていうのがあるんですよ…」
「なっ!?」
ということはその痛みを常に感じながら復活していると…?
「それは…とっても厄介ですね…」
「はい…。しかも彼女…二つ名が付いた人に片っ端から挑んで攻撃を喰らって喜んでるんですよ…。ですが一度挑んだ相手にはもう挑んでこないので、ある意味二つ名が付いている人たちからは洗礼という形で収まっているんです…」
「なるほど…」
それで全て納得した。
何故死亡時からの復活系統にスキルが傾いているのかを。
ただ単に敵からの攻撃をより受けたいがためだけにそういった復活系スキルを取っているのだと。
確かにこれでは通報はできない…。
あくまで彼女は攻撃を喰らっているだけなのだから…。
抱き着いてセクハラをしているわけでも粘着的に付け回しているわけでもない。
ただそれだけに通報内容としては不十分なのか…。
もしこれでBANならば、PKをしているプレイヤー全員BANという形になるかもですしね…。
「それで最初の話に戻るわけですが…」
「えっあっ、はい」
「最強って…やっぱり何度でも復活して襲い掛かってくる人だと思うんですよね…」
アルトさんが急に虚ろな目をし始めた。
これはやばいと思って私は急いで取材を切り上げることにした。
「でっでは皆さん! 本日は取材に付き合っていただきありがとうございました!」
私は取材のお礼を言ってすぐさま移動する。
この後に入っている別のグループからも嫌な予感を感じながら。
結果としては別のグループも同じ返答だった。
最強は誰かという質問になると、皆さん虚ろな目をして【不沈棺】と答えた。
一部の方は「次こそあのアマぶち殺してやる」とか狂気に満ちていましたけど…。
『最強』って…一体なんなんでしょうね…。
要約
皆のトラウマ:アリス
二つ名のトラウマ:【不沈棺】
気が付けば投稿から一年経ってましたが、一周年記念として人気投票とかそういうのをした方がいいのだろうか…。




