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Nostalgia world online  作者: naginagi
第四章
176/370

吸血鬼イベント⑬

「んっ…」


 どうやらいつの間にか気を失っていたようだ。

 目を開けると、ここ数日見ていた天井や部屋の風景ではなく、陽の光が部屋の中を照らし、家具なども全く異なっていた。


「…どこ?」


 首を傾げて身体を起こしてみると、すぐ横でルカが横になっていた。


「おっおおう!?」


 どうやら私はベッドで寝ていたようだ。

 それにしても何故ここにルカが?

 私がイマイチ状況を把握できないところにメアリちゃんが部屋に入ってきた。


「あっアリスさん、目が覚めたんですね」

「メアリちゃん…? ここは…」

「はい、本城の山城の中です。古城からアリスさんを運びました」

「そっか…って、吸血鬼たちは!?」

「全て異邦人の方々が討伐してくれました。戦闘に参加した騎士団の方に若干の被害はありましたが、吸血鬼の規模に比べたら些細なものです」

「そっか…」


 なら一先ずは安心だね。

 それにしても私の方の戦闘が終わったからって気を失っちゃうとは…。

 反省しないと…。


「ところでルカはどうしてここに?」

「はい、アリスさんのペットがお母様に事情を話してルカさんをこちらまで案内しました。その後は…えっと…」


 ちょっと待って。

 なんでメアリちゃんそこで頬赤らめるの。

 一体何があったの。


「えっメアリは何も見てませんからっ!」

「むしろ何があったか教えてほしいんだけど!?」

「そっそんな恥ずかしい事メアリの口からはとてもっ…」

「恥ずかしい事だったの!?」


 ルカ…あなたって子は寝てる私に一体何を…。


「いっいくら女性同士だからと言って、抱きついたりするのはどうかと思います!」

「…えっ?」

「そっそういうのは愛する殿方や家族にしかしてはいけませんのに…」


 メアリちゃんは身体をモジモジさせて恥ずかしそうに話す。

 ここで私は一つ勘違いをしていた。

 はっきり言って私は一般人で、メアリちゃんは王族だ。

 つまり気軽なスキンシップといったことは王族としてはあるまじき行為であり、そういう事をするのは家族や婚約者に対してだけなのだろう。

 だからメアリちゃんはルカが私に抱き着いてきたのを恥ずかしい事と言ったのだろう。

 おそらくだが、メアリちゃんは国勢や王族としての立ち振る舞いなどの教育を優先されていたのだろう。

 母親である女王様が亡くなった場合、国を動かすのはメアリちゃんになるからだ。

 だからそういったスキンシップについてや、夫婦の営みといったことは大雑把にして詳しい事は後回しにされていたのだろう。


「ふふっ」

「なっ何かおかしな部分がありましたかっ!?」

「ううん。でもこれからは女王様にちゃんと教われるね」

「えっ?」

「だってもう吸血鬼はいないんでしょ? ならメアリちゃんがすぐ女王になるわけではないでしょ?」

「えぇ…」

「だからルカが私にやったこととか、色々女王様に教えてもらえばいいんだよ。その時間はもう一杯あるもんね」

「はいっ!」


 おっ、やっとメアリちゃんが笑ってくれた。

 やっぱり子供は笑顔が一番だよね。


「んんっ…」


 っと、話し声でルカが起きたようだ。


「ルカ、おはよう」

「おはよ…」


 どうやらまだ寝ぼけているようだ。

 身体を起こして私に抱き着いてうーうー言ってる。


「二人とも起きたようですし、そろそろお母様の元に参りましょう」

「女王様の元に?」


 一体何の用だろう?


「たぶん褒美…?」

「褒美?」

「吸血鬼退治の…上位は…お城に呼ばれて…貰える…」

「そうなんだ」


 ルカが眠そうに目を擦りながら身体を私に預ける。


「私は上位じゃなかったけど…アリスとのPT補正もあって…気が引けるけど貰えた…」

「ちなみに何貰ったの?」

「んーと…状態異常耐性が付く指輪貰った…」

「ってことは少しスキル枠に余裕ができそうだね」

「うん…」


 結構良いもの貰ったねルカ。

 でも私は特に本隊の方には参加してないし、上位ってのはイベント全体でってことだろうから私は含まれてないと思うんだけど…あれかな?

 女王様護衛できた報酬ってことかな?


「ではアリスさん、ついてきてくださいませ」

「うん。ほらルカ、そろそろ起きて」

「んー…」


 寝ぼけながら歩くルカを道中支えながらメアリちゃんの後ろを歩く。

 移動中周りを見ていると、気のせいか城内の人が少ないように感じた。


「ねぇメアリちゃん。なんか城内の人少ない気がするけどどうかしたの?」

「はい。今城下では吸血鬼を無事撃退できたため、お祝いの宴を行っています。なので最低限の兵士以外皆さん出ているのです」

「ってことは他のプレイヤ―たちも?」

「はい。各国も宴をしているという報もありますし、今頃異邦人の方々も参加していると思います」


 んっ?

 ってことは他の人は参加してる中、私は寝てたってこと?

 美味しい物残ってるかなぁ…。

 そんな私の不安をメアリちゃんは察したのか、説明を続けてくれた。


「ご安心を。宴は今日一日行われますので、この後向かえばいいと思います、」


 夜までとはそれは嬉しい情報だ。

 ではこの後行くとしますか。


「では二人とも少しお待ちください」


 謁見の間の扉前に着くと、メアリちゃんは一言断って先に部屋の中に入った。

 しばらくすると、メアリちゃんが部屋から出てきて私たちを中に案内する。

 謁見の間では、最初に女王様に会った時と異なり、近衛兵の数もかなり少なくなっていた。


「お母様、お二人を案内致しました」

「ご苦労様。メアリ、こちらへ」

「はい」


 私たちは頭を下げて膝をつき、女王様の命を待つ。

 メアリちゃんが椅子に座ったのを女王様が確認し、私たちに声を掛ける。


「二人とも、面を上げなさい」


 女王様の命で顔を上げてよいと言われたので上げると、先ほどまでは緊張して気づかなかったが、女王様の傍にメアリちゃんとは違った金髪ロングのお人形のような女の子がいた。


「まずは今回の件について感謝を述べたいと思います。私だけでなく、メアリの未来まで守ってくださったこと大変感謝しております」

「いっいえっ! 当然の事をしただけです!」


 おおぅ!?

 女王様からそんなこと言われて気が利いた返し方なんてわからないよ!?


「それとそちらのルカさんにもアリスさんの事で要らぬ心配を掛けました事、誠に申し訳ありませんでした」

「そっそんなことは…あわ…あわわ…」


 ルカのこの様子から、報酬の時は本当に報酬の話しかしなかったのだろう。

 めっちゃガクブルしてるし…。


「お二人ともそんなに緊張しなくても大丈夫ですよ。お母様もあまりお二人をいじめたらいけませんよ?」

「あらメアリ、私はただ感謝と謝罪をしているだけよ?」

「でしたらあんな言葉遣いしなくてもよいではないですか」

「だって二人があんな畏まってしまうんですもの。私もつい言葉遣いがああなってしまったのよ」


 えっ?

 一体何が…?

 私とルカはお互い顔を見て何が何やらわからなくなっていた。


「ここにいる近衛兵たちは皆お母様の事情を知るものたちです。だからそこまで畏まらなくて平気なのですよ」

「でもメアリちゃん最初に…」

「あれはお二人がどのように対応するのかを私は見ていなかったので、少し見てみたかったのです」

「ってことは…」

「はい、異邦人の言うドッキリ大作戦です!」


 誰だメアリちゃんにそんな作戦吹き込んだやつ!?


「まぁおふざけもこれぐらいにしましょう。ではアリスさん」

「はい」

「こちらの紙に記載されている中からお好きな物を一つ選んでください」


 侍女の一人が女王様から紙を受け取り、それを私に渡す。

 どうやらアイテム名が書かれた紙のようだ。


「ルカさんにお話を聞いて、アリスさんの欲しがりそうな物をリストアップしたものです。もしリストになくてこういったのが欲しいというのであればおっしゃってください」

「はい…」


 能力アップ系の装備品にハウジング関係のアイテム…それに何か国宝みたいな名前の武器もあるんですけど!?

 しかも性能高いし!

 リストを見ているとふと視線を感じたのでそちらを見てみると、女王様の傍に座っている金髪ロングの少女がこちらを見ていた。


「女王様、その子は…?」

「そういえば紹介していませんでしたね。この子は…ブルート―アリスさんが倒した吸血鬼の娘です」


 女王様がそう言うと、私と少女はびくっと反応する。

 私は驚いた表情をし、少女は何か悲しそうな表情をした。


「でもなんでここに…」

「ブルートとの約束でしたから…。アリスさんが気を失った後、ブルートから聞いた地点にこの子が住んでいたのです。そしてブルートの遺言通りに保護したわけです。ですが…」

「何かあったんですか?」

「見ての通りこの子は少し顔色が悪く、話を聞いてみたところここしばらく食事を取っていなかったらしいのです」

「食事を!?」

「はい。ブルートが動けなかった事もあり、この子も下手に動けば異邦人に見つかるということもあったため残っていた食料で食い繋ぐしかなかったようです」


 吸血鬼探索で色々歩き回っていたプレイヤーは多い。

 吸血鬼―ブルートもその事を理解してあの子に大人しくしているよう指示したのだろう。


「でも何故その子は今回の襲撃時に動かなかったんですか?」

「この子は今回の襲撃とは無関係なんです」


 無関係?

 どういうことだろう?


「ブルートから今回の件について聞きました。今回事を起こしたのは過激派の吸血鬼だったのです」

「過激派?」

「はい。過去にこの国から逃れた吸血鬼の一族の内、復讐を誓う過激派と旧政権が倒れ、一族を奉り罪を償うということで水に流して平穏に暮らそうとする穏健派がいました。しかし、長い年月が経ち過激派を段々と抑えられなくなってきた穏健派は、このままでは一族全てが排除されてしまうという危機感を感じ、一つの賭けを行いました」

「賭け…ってまさか!」

「はい。異邦人に過激派を排除してもらうという賭けです。そしてそのために穏健派のブルートが過激派を説得して時間を稼いでいたのです。どうやら穏健派に神託のようなものがあって、百年以内に異邦人が多く現れるという事を知っていたらしいです」

「だからここ最近になって…」


 そして実際に私たちプレイヤーは現れた。

 神託というのは運営からのお知らせのようなものだろう。

 今回のイベントを起こさせるために行動を起こさせるための…。

 確かに過激派を抑えられなくなった場合、いずれ全てを討伐しなければならなくなるだろう。

 だが、今回のように過激派だけを倒せば穏健派は静かに暮らしているだけで何もしてこないだろう。

 ある意味大を生かすために小を殺すということだ。


「そして今回、計画通りというのでしょうか…。過激派は全員倒され、穏健派が襲ってくることもないでしょう」

「めでたし…というわけにはいかないですね…心情的に…」

「そうですね…。元はと言えばこの国が起こした問題です。責められる謂れはあれど、向こうを責める道理などないのですからね…」


 どちらが正義でどちらが悪だという簡単な話ではない。

 だが、どちらかが滅びるまで争いを続けるのは間違っているとは思う。

 だからこそどこかで折り合いをつける必要がある。

 今回の事件も、ここで折り合いがつけばいいけど…。

 そう思って吸血鬼の少女の方を向くと、椅子に座っているにも関わらず何やらフラフラとしていた。

 そしてそのまま身体が前に倒れそうになったのを見て私は少女の元に駆ける。


「危ないっ!」

「アリスっ!?」


 床に倒れそうになった少女の身体を何とか受け止めることができた。


「大丈夫?」

「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…」


 受け止めてみて少女の呼吸が荒い事に気づいた。

 私はハッとなって女王様に尋ねた。


「女王様! この子に食事は!?」

「…食べないのです…。軽いものから何やら用意させましたが…警戒して口に入れようとしないのです…」

「そんな…」


 父親であるブルートを人間に殺されて信用できないのであろう。

 料理を用意されても毒殺されるのでは、と言った懐疑心から食事を取ろうとしないのだろう。

 とはいえ、このままでは死んでしまうかもしれない。

 いくら不死性の高い吸血鬼と言えども、食事を取らなければ弱っていく一方だ。


「何か手は…この子に毒なんて入ってないって信用して貰える方法…」


 生もの…はだめだ、毒を塗られてると思われる…。

 でも調理してあるものなんて余計ダメだし…。

 いや、一つ大丈夫なものがある!


 私は脇差を抜いて刀の先っぽで指の先を少し斬った。

 斬った先から血が少しずつ垂れていく。

 吸血鬼の少女は血の匂いに反応したのか、目を開いて私の指先に視線を動かす。


「これなら大丈夫だよね? 毒が入ってたら私は生きてないし、血なら何より匂いで判断できるよね?」


 少女は少しずつ顔を指に近づけ、舌をゆっくりと伸ばしてきた。

 少し経って口に血が垂れている指を含むと、夢中になって舐め始めた。

 しばらく夢中になって舐めていると血が出なくなったのか、顔を上げて私を見つめる。

 私は着物の右肩を少しはだけさせて噛みやすいように素肌を少し晒す。


「まだ飲み足りないんでしょ? いいよ」

「……」


 少女はゆっくりと私の右肩に口を近づけ、カプっと小さな牙を立てた。

 周りを見ると女王様やメアリちゃんたちは驚いており、近づくにも近づけない様子だった。

 って、結構がっつりHP減り始めてるけど…この子もこちらをチラッと見ながら吸ってる様子だし、ちゃんと気を使ってくれてるのだろう。


「アリスっ! ポーションっ!」

「大丈夫だからじっとしてて。この子も気を付けて吸ってるから」


 とは言ったものの、血を吸われる感覚ってもっと痛いかと思ったけどなんだか気持ちいい気が…。

 献血とは違う感じでなんか…こう…。

 って危ない危ない…変な扉開けるところだった…。

 少女も満足したのか、血を吸うのをやめて口を右肩から離す。

 HPはどうやら二割ほど残っているが、『貧血』と出ているので少し目が回る…。


「ごめんなさい…」


 突然抱えている少女が口を開いた。

 一瞬戸惑ったが、安心させるために話をする。


「大丈夫だよ。君もちゃんと私の事気にして血を吸ってたでしょ?」


 私が尋ねると少女は小さく頷く。

 私は何かを思い出したようにアイテムボックスから二つのアイテムを取り出す。


「これは…?」

「君のお父さんが残した物だよ」

「お父様が…?」


 私は少女にネックレスと指輪を渡す。

 そして私は少女の顔を見て話を続ける。


「女王様から聞いていると思うけど、私が君のお父さんを殺した異邦人だよ。何か言いたいこととかないの?」

「…ないと言ったら嘘になります…。でも、お父様は一族の未来のために戦うと言ってました。ですので、お父様が亡くなった事は悲しいですが、それであなたを恨むことはありません。…お父様は立派でしたか?」

「うん。自分の意思を曲げる事なく立派に戦ってたよ」

「お父様は強かったですか?」

「とても強かった。あらゆる手を使わなかったら勝てなかったぐらいに」

「お父様は…お父様に悔いはなかったですか…?」

「それについては私が答えます」


 涙目になりながら問いかけた質問に、女王様が口を開く。


「息を引き取るその時まで、娘のあなたの事を心配していました。できればあなたを一族の争いに巻き込まず、どこか遠い場所で何も知らず平穏に暮らしたかったと。あなたの無事を最後まで心配していました」

「お父様…お父様ぁ…」


 私は少女の強く抱きしめてあげる。

 少女が泣き止むまで…ずっと…。



 しばらくして少女は泣き止み、私の膝の上で大人しくしていた。


「それで、お礼の品はどれにしますか?」

「その…少し言いにくい事なんですが…」

「構いませんよ。遠慮なく言ってください」

「えっと、この子…ではいけませんか…?」


 女王様も吸血鬼の少女も「えっ?」と驚いた声を上げる。


「あっもちろんこの子が嫌でなければですけどっ!」

「いえ…それは構いませんが…」

「なんで私なんですか…? 良いアイテム一杯あるって言ってたのに…」


 なんでかって言われても…どう答えればいいか…。


「さっき私の血を吸ったよね?」

「はい…」

「それで私は危険じゃないってわかってくれた…らうれしいんだけど…」

「えっと…その…」

「女王様たちが信用できないっていうことじゃないけど、やっぱり不安なんだよね?」

「それは…」


 少女はチラッと女王様の方を見る。


「大丈夫ですよ。己の本心を言っていいですよ」

「その…やっぱりこの国の人はまだ…怖い…です…」

「だから一時的にでもいいんで、この子を預からせていただけませんか? 私これでも家持っているので住む場所には困りませんし」

「でもアリスさん、いいのですか? 本来なら私たちがその子のケアや面倒を見てあげなければならないのに…」

「はい、構いません」

「レアアイテムより困っている子優先。さすが私のアリス」


 そしてルカは何故そこでどや顔になるの…。

 って、その前にこの子に許可取らないと。


「えっと、勝手に話進めちゃってるけど、あなたはどうしたい? 嫌だったら嫌って言っていいよ」

「嫌じゃ…ないです…。お姉さん優しいし…」

「じゃあ!」

「はい…お願いします…。えっと…」

「私の名前はアリスだよ」

「ではご主人様…でいいですか?」


 おおぅ!?

 まさかのご主人様呼びだと!?

 これはリアと仲良くできるかも!


「あの…嫌でしたか…?」

「ううん! 嫌じゃないよ!」

「ではご主人様、これからよろしくお願いします」

「うん、よろしくね。えーっと…」

「あっ私に名前はありません。吸血鬼にはそのような風習がなかったので…。お父様は潜入のために名を付けてましたが…。ですのでご主人様がつけてください」

「えっ? そうなの? じゃあ…」


 名前ないってお父さんからどう呼ばれてたんだろう…。

 吸血鬼の少女だし、カーミラ…は安直すぎるから…。


「じゃああなたの名前はこれからミラね。よろしくね、ミラ」

「はい、ご主人様!」


 次の瞬間、抱き抱えていたミラが光に包まれ、その姿が消えた。

 代わりに私の手の上には赤黒い石が収まっていた。


「…えっ…?」

「なっ何が…」

「ミラちゃん消えちゃった…!?」


 メアリちゃんがミラが消えた事に驚いてキョロキョロと周りを探し始めた。

 女王様もいきなりの事で驚いたのか、近衛兵や侍女たちに捜索を命じた。

 そして私は手の中に納まっている赤黒い石をじっと見つめる。


「まさか…ね…?」


 念のために鑑定を行うと…。



 ミラの召喚石【非売品】

 契約者:アリス

 このアイテムは売ることが出来ず、また奪われる事も壊れる事もない。



 実はミラは召喚獣でした!?

 イベントNPCと思ったら実はペットでしたってどういうこと!?


「アリス、とりあえずミラ出そう」


 後ろから見ていたルカが冷静に状況を判断し、私にアドバイスをする。

 そそそそそうだ!

 とりあえずミラを召喚してこの場を収めないと!

 私は慌ててミラを呼ぶ。


「お呼びですか、ご主人様」

「えっ!? ミラちゃん!? どこに行っていたの!?」

「はい。こちらの石の中にいました」

「石? えっ!?」


 私は慌ててこの場の全員に現在のミラの状態を説明した。

 異邦人がモンスターなどをペット―使い魔として石に封じ込めることができる。ということにしてなんとか納得してもらえた。


「それにしてもさすがに驚きました」

「正直私が驚きました…。まさかミラが召喚獣になるとは予想もしていませんでした…」


 普通に家でお手伝いさんとして、いてもらうつもりだったからね。


「でもミラ、なんか緊張しなくなったね」

「その…あの光に包まれてからご主人様の気持ちが伝わってきたようで、なんだか平気になりました」


 えっと…そういうものなのかな…?


「しかし、無事話がまとまってよかったわ。これからもミラの事をお願いしますね」

「はい、その内こちらに来れるようになったらミラに顔を見させてあげてください」

「そういえば異邦人の方々はこちらにはまだ交通網がないんでしたね」

「はい。ですのでいつになるかは分かりませんが、来れるようになったら伺います」

「ふふっ、楽しみにしていますね」


 女王様やメアリちゃんたちに挨拶をした後、私たちは城下で行っている宴に参加した。

 どうやらプレイヤーは24:00に強制的に転移させられるか、帰還用の転移装置に乗るかで元の場所に帰れるらしい。

 私はせっかくなので、夜遅くまで宴に参加することにした。

 ミラにとってはしばらく住んでいた国だし、ぱぱっと帰るのも悪いと思ったからだ。

 その内この国がどこら辺にあるのか見つけないといけないなぁ。

 そのためにも街の情報は集めないと!


 こうして私の吸血鬼イベントは終了し、平穏な日々へと戻っていくのであった。

締めようとしたら8000文字超えていた。

何を言ってるかわからないが(ry


ミラのステータスは次回! のはず。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 王女もミラも救えて良かった… まさか召喚石なるとは予想外でした普通にNPCとして住み着くものかと。 [気になる点] 過去にこの国から逃れた吸血鬼の一族の内、復讐を誓う過激派と旧政権が倒れ、…
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