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Nostalgia world online  作者: naginagi
第四章
156/370

大団円?

「ふぅー…」


 私は作り立てのアップルジュースを飲んで一息つく。


 あのトラップ満載イベントが終了し、早二時間が経過しようとしていた。

 結果から言えば、私たちは入賞できなかった。

 いや、正確に言えば入賞できたがしなかったが正しい。


 いじめっ子兄たちをぶっころ…倒してから、色々あってウィルといじめっ子たちと一緒にゴールを目指す事になった。

 そして、私たちの引率もあったためか、無事に誰も死に戻りすることなくゴールへ辿り着けた。

 更に驚くことに、私たちがゴールする時には98組がゴールしていた。


 また、途中でクオをウィルのPTに編入させようとしたが、今回のイベントの関係上、途中でPTを編成させることができなかった。

 そのため、私たち三人がゴールすると、ウィルかクオのどちらかが入賞できない状況だった。

 そこで私たち三人は相談した結果、ウィルとクオの所属しているいじめっ子PTを入賞させる事にした。

 どちらのPTも遠慮したが、そこは先行組の実力行使で無理矢理二組をゴールさせた。

 ゴールさせた後、ウィルが文句を言ってたが、そこは師匠命令という事で静かにさせた。


 まぁ今回の景品としては、私たちにとってはそこまで魅力ある物ではなかったのが大きかったのもあったけどね。

 そんなわけで、入賞できたはずの二人に私からしょぼいけどポーションや食べ物を渡そうと思っているわけだ。

 なので。二人が来るまで一息ついている最中である。


 カランっとお店のベルが鳴り、扉が開く。

 来たかなーと思ってそちらを見ると、そこにいたのは私の待ち人ではなかった。


「しっ師匠、こんにちは」

「こんにちは…」

「ウィルとクオ、どうしたの?」


 そこには弟子のウィルと、そのウィルの手を握っているクオがいた。

 一体どうしたのだろう?


「えっと…その…一言お礼が言いたくて来ました!」

「お礼?」

「はいっ! 今回の事、ありがとうございました!」


 ウィルは勢いよく頭を下げる。

 クオもウィルに続いて頭を下げる。

 私はというと、目をぱちくりとさせ、頭を下げている二人を見ている。

 数秒すると、ウィルは頭を上げてこちらを見る。


「今回、師匠のおかげでクオと一緒にいれるようになったし、あいつらともちゃんと和解できた。だから、ありがとうございました!」


 再度二人は頭を下げる。

 そこで私は、一つ気になったことを聞いてみる。


「和解したってことは、PTも一緒なの?」

「いえ! 別々のPTですけど、お互い(わだかま)りなくこのゲームを楽しもうということになりました!」

「じゃあ二人は二人でPT組んでるって事?」

「はいっ!」


 二人の部分にクオが反応し、少し顔を赤くしてウィルにしがみついて顔を隠す。

 おー、随分イチャイチャしちゃって。


「それで師匠…」

「なに?」


 今度はウィルが気まずそうに喋り始めた。


「あいつらも…店の前にいるんだけどさ…」

「うん」

「一言師匠に言いたいんだけどさ…店に入れてもいい…?」

「別にいいけど…」


 出禁にしているわけじゃないから、入ってきてもいいんだけどなぁ…。


 ウィルはお店の外に顔を出して声を掛けると、ぞろぞろと四人がお店の中に入ってきた。

 そしていじめっ子が代表として一人前へ出てきた。

 気のせいか、体が震えている気がするけど…。

 そして次の瞬間、四人は一斉に頭を下げた。


「姐さん! 今回の件、申し訳ありませんでした!」

「「「申し訳ありませんでした!」」」

「えっ?」


 突然の事に私の頭が追いつかない。

 そんな私の状態など気にせず、いじめっ子たちの謝罪は続いた。


「この度は姐さんたちにご迷惑をおかけして、大変申し訳ありませんでした!」

「「「すいませんでした!」」」

「ウィルのやつ…ウィルとはちゃんと話し合って謝罪して、お互い蟠りがなくなりました! だから…勘弁してください!」

「「「許してください!」」」


 頭を下げていたはずのいじめっ子たちが、いつの間にか土下座をしていた。

 何を言っているかわからないが、私も何を言っているのかわからない。

 えーっととりあえず、いじめっ子たちは反省したので、私のところにも謝罪をしにきたって感じ?

 とりあえずこんなところをルカと海花に見られたら何を言われるかわからないので、私は急いで四人に土下座をやめるように言う。


 何度か説得して、なんとか土下座はやめてくれた。

 その間、ウィルは苦笑いをしながらこっちを見てた。

 くそぅ…。

 そんなウィルも、一回咳払いをして再度私に頭を下げる。


「師匠、今後もお世話になると思うけど、よろしくお願いします」

「まったく、ウィルは仕方ない弟子だなぁ」

「俺、師匠が師匠でよかったよ」


 おっ、嬉しい事言うね。


「まぁ特訓方法の選択とかは少しおかしかったけど…」

「えっ?」


 その発言に、クオもいじめっ子たちも頷く。


「でもそのおかげで強くなれたし、感謝してるよ。師匠」

「お、おう?」


 感謝…されているの…だろうか…?


「じゃあ俺ら狩りに行ってくるから、またな師匠」

「う、うん…」


 そういってウィルたちはお店から出て行った。


「…なんだろうこのやるせない気持ちは…」

「何が?」

「いや、ウィルのあのお礼…ってうわぁっ!?」


 尋ねられたので答えようと声がする方を向くと、ちょこんとしゃがんでいたルカがいた。


「そんなに驚かれると傷つく」

「ごめん…」

「じゃあこれで許す」


 そう言うとルカは立ち上がり、私に抱き着いてきた。


「こんなのでいいの?」

「むしろこれがいい。入賞の代わりの景品もこれで」

「ルカがいいならいいけど…」


 抱き着くのが景品って…。

 まぁルカもまんざらでもないからいいのかな?


「でも、どうせならベッドで寝っ転がっての方がいいかも」

「確かにゴロゴロできた方がいいかもね」


 さすがにお店の床で寝っ転がるなんてことはしたくないからね。


「そんな勘違いするアリスも可愛い」

「なにか言った?」

「言ってない」

「そう? それで海花はどうする?」

「来たらポーションとかあげればいい。来るまで部屋にいよう」


 そう言ってルカは私の服を掴んで催促する。

 すると、お店の扉が勢いよく開き、大きな声が聞こえてきた。


「ルカっ! 抜け駆けは許しませんよ!」

「っち…」


 えっ?

 今ルカ舌打ちした?

 気のせいだよね?


「何あからさまに嫌そうな顔してるのよ!」

「いいところだったのに、海花が来たから」

「いいところってどういう事よ!」

「いいからポーション貰って帰って」

「あたしだってお姉様とイチャイチャできるなら、ポーションなんていらないわよ!」

「っち…」

「貴女また舌打ちしたわね! 聞こえてないとでも思った!?」


 なんか…急にやかましくなったなぁ…。


「…女にモテる女と、女にモテる男の違いってなんだろうな…」

「サイ? 何か言った?」

「別に、何も言ってないよご主人様」

「そう…?」


 すっと後ろを通り過ぎたサイが何かを呟いた気がするけど、何も言っていないっていうなら追及はしないでおこう。

 それにしても…。


「やっぱり二人って仲悪いのかな…?」


 二人の相性悪いようならベッドでゴロゴロとかまとめてできそうにないしなぁ…。


「やっぱり無しにした方がいいかなぁ…」


 軽く呟いただけなのだが、その言葉に二人が反応した。


「なっ仲良くしますからどうかお慈悲をっ!」

「喧嘩しないから、お願い」

「わっわかったから…。でも喧嘩したら本当に無しにするからね?」

「はい…」

「わかった、仲良くする」


 ふー…。

 何か戦闘より疲れた気がするなぁ…。



 この後、部屋で二人が満足するまで抱き着かれ、抱き枕の気分になったのはまた別のお話。

昨日はお楽しみでしたね(意味深

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