悩みの種は尽きない
「ご主人様、新しく採れた蜂蜜入れておくよ」
「ありがとねサイ」
サイは新しく購入した、蜂用の防護服を纏った姿で私の前に現れた。
最初は二人であたふたしながら操作していた機器も、今ではサイ一人で操作できるようになっていた。
「ご主人様ー、レッドポーションの追加できましたー」
「リアもありがとね」
「えへへー!」
追加のレッドポーションを作ってきてくれたリアの頭を撫でてあげる。
するとリアは嬉しそうに喜ぶ。
その様子を見たサイが何か言いたそうだったので、防護服を脱いだサイの頭も撫でてあげる。
サイは恥ずかしそうにするが、満更でもないようだ。
「それにしても色々設備増えたよな」
「まぁお金一杯入ったからね」
ジャックから受け取った賠償金で家の借金も完済し、装備分の金額を残して設備を整えまくった。
おかげで賠償金は五十万ちょいぐらいになったが、これだけあればまた何かあった際にも使えるだろう。
今では養蜂に畜産に解体場、更に追加で畑も個人フィールドに作ることができた。
しかし機器よりも、畜産関係の動物や設備の方がお金掛かるとは思わなかった…。
でもおかげで卵やミルクなどは定期的に手に入れられるようになったし、動物たちも個人フィールドのためのびのびと動くことができる。
さすがに養蜂設備にはいけないようにしてるけどね。
「まぁ店だからカウンターはわかるんだけど、この席とかはなんなんだ?」
そう、実はお店の方も改装をしている。
今までは窓のようなお店だったが、きちんとお店の中に入れるようにした。
そして追加でカフェのようにくつろげる席も用意した。
これについては、私が作った食べ物を売るのもあるが、ここで食べれるようにするためだ。
むしろ知り合いと食事をする時というのが大きいかな?
そのことをサイに伝えると「なるほど」と言って理解したようだ。
「だから鶏とか牛を仕入れたのか」
「これでケーキとかそういったのも作れるようになるからね」
「それで何で高いところからわざと落ちる必要があるんだ? リアがすげえ心配してんだけど」
あれについては【落下耐性】スキルを上げる必要があるからやっているんだよね。
そうでもしないとあれを手に入れるのが無理そうなんだもん。
一回挑戦してみたら速攻で卵割られたし…。
いずれはあれも育てられたらいいんだけどなぁ…。
「それでなんで俺は仕事の時こんな服着るんだ?」
「嫌だった?」
「なんか恥ずかしいし…」
サイは今仕事着となる執事服を持っている。
もちろんこれはリーネさんに作ってもらった。
リアにはもちろんメイド服を着てもらう。
ウェイトレスと言ったらメイド服だよね。…偏見じゃないよ?
だってほら、リアは気に入ってもう着てるし。
「まぁオープンにはまだ品物が決まってないし、もう少し先になるかな?」
「どういった物出すんだ?」
「一応デザート系を基本にしようかなって思っているんだけど、やっぱり普通の食べ物もいるかな?」
「ならサンドイッチやパン系でいいんじゃないか? あれなら無難に売れるだろうし」
サンドイッチってなると具はやっぱり卵とかかな?
野菜も自分たちで栽培してるし、そういうので作りやすいもんね。
それに味噌と醤油も作れたから料理のバリエーションも増えたしね。
だからあとは米さえあれば…。
…レヴィに乗って南にずっと進めば何か見つかるかな…?
まぁそんなことしたら途端に強いMOBとか出てきそうだから行かないけどね。
強い敵といえば、私は火山と雪山に行ってないけど、少しずつ開拓が進んでいるようだ。
そして奥までたどり着いたプレイヤーの情報によると、最深部がダンジョンになっているということが判明した。
つまり火山と雪山ダンジョンの二つが存在しているということになる。
まぁだからと言って私が行くということにはならないんだけどね。
行くしても当分先かなとは思うけどね。
とはいえ、未だレッドポーションの需要は上がっているので販売する物は変わらない。
でもそろそろレッドポーションの上位ポーションの作製も視野に入れておくべきかな。
まぁ材料がわからないからどうしようもないんだけどね。
いつまでもナンサおばあちゃんに聞くっていうわけにもいかないし、自分で見つけないといけないもんね。
でもポーションに色が付いたってことは、上位ポーションも色が関係しているはずなんだよね。
問題は赤の次は何かっていうことなんだけど…。
大抵のゲームだと赤だとしたら次は青とかだけど、青っぽい薬草みたいなのあったっけ…?
一応サイとリアにも聞いてみたが、二人とも知らないと言っていた。まぁそうだよね。
「でも今以上にお客さん増えたら、リアちゃんと接客できるかな…?」
「んー…そんなに劇的に増えないと思うから大丈夫だと思うよ?」
「一応俺も接客やれるが、どうしても農場とかの方やらないといけないからな…」
「どうしてもきついようなら他に雇うけどどうする…?」
一応住み込みができるような部屋はいくつか余ってるし、資金も多少余裕はできてきたからもう一人ぐらいなら雇えそうだけど…。
でも雇うとしても、サイやリアと仲良くできる人がいいよね。
んー…なかなか難しい。
「アリス、いる?」
「ルカどうしたの?」
ルカが私を呼びながらドアをノックしたので、ドアを開けてルカに何があったかを尋ねる。
「ちょっと相談」
「相談?」
「家についてちょっと聞きたい」
どうやらルカも家を持ちたいようだが、設備や土地とかの代金がいくらぐらい掛かるのがわからなかったため、既に家を持ってて知り合いである私に聞きに来たらしい。
ギルドの人に聞かないのかな? と思ったけど、人見知りだから聞けないのか…。
「ルカも何かお店開くの?」
「一応。人見知り少しは直したい」
「そっか。とりあえず設備とかを後回しにして土地だけ購入すれば、大体二百万ぐらいあれば足りると思うよ」
「二百万…」
ルカが金額を聞いて見てわかるぐらいしょんぼりとした。
とはいえ資金はどうしようもないしなぁ…。
居候とかできればいいんだけど…。
「わかった…ありがと…」
「うっ…うん…」
そしてルカはしょんぼりとしながら去っていった。
どうにかしてあげられないかなぁ…。
って言っても資金は手伝えないし、できることとしたらルカの作った品物を置いてあげるぐらいだけど…。
でもルカがお店を開くのは、人見知りを治すためだから、私が代行するのは違うしなぁ…。
んー…どうしようか…。
今年初投稿ということで、遅くなりましたが明けましておめでとうございます。
今年もNostalgia world onlineをよろしくお願いします。




