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Nostalgia world online  作者: naginagi
第三章
136/370

言葉は力となる

 ルカと海花の二人と別れ、私はシルクハットの男と場所を移動していた。

 まぁルカと海花の事だし多分大丈夫でしょう。

 しばらく歩いたため、他の戦闘音とかも聞こえない場所に来たようだ。


「さて、ここら辺にしましょうか」

「別に私は構わないよ」

「そういえば自己紹介がまだでしたね。私は七つの大罪、色欲のルクスリアと申します」

「知ってると思うけど一応言っておく。私はアリス」

「正直なところ、私は直接戦闘型ではなく後方支援型なのですよ」

「だから?」

「はっきり言って見逃してほしいなと思ってます」

「随分都合がいい事言うんだね」


 人を襲っといて見逃してほしいとかふざけてるよね。

 私は脇差を抜いて構える。


「まぁそういう事になるとは予想していましたがね」


 ルクスリアはステッキを出して地面をコツンと鳴らす。


 私は地面を蹴ってルクスリアに斬りかかる。

 ルクスリアはステッキで私の脇差とつば競り合いをする。


「いやぁホントに残念ですよ。見逃してほしかったのに」

「上辺だけの発言はやめたほうがいい…よっ!」


 私の方がSTRが高かったため、押し勝ち脇差を振るが、ルクスリアは後ろに下がって回避する。

 そして手に持ったステッキを地面に何回か当てる動作をする。


「『イリュージョンファントム』」


 ルクスリアが何かを呟くと、突如ルクスリア側から植物の蔦が迫ってきた。

 私は咄嗟に脇差に【紅蓮魔法】を付加して向かってきた蔦を切り裂く。

 しかし、そこで違和感に気付いた。


「手ごたえが…ない…!?」


 そしてその瞬間、今度は黒い球体の弾に攻撃された。

 なんとか反応して脇差の刃で受けることができたが、今度は衝撃があった。


「さっきのは…」


 蔦には手ごたえがなく、弾には衝撃があった。

 ということは…。


「幻覚使い…」

「おや、気付きましたか。まぁ先程食らってたので気づいてはいたでしょうけどね」


 ってことはあの時の幻覚空間を作ったのはこいつってことか。

 でも幻覚を混ぜて攻撃してくるってのは厄介だね。


「あなたも【幻魔法】を使うから知っていますでしょ?」


 そう、【幻魔法】は相手がそれを実体と認識する程、効果が上がっていく魔法だ。

 逆に幻覚だと分かれば効果は下がっていくけど、実体を混ぜられるとそれは難しくなる。


「ではどんどん行きますよ!」

「っ!」


 すると【漆黒魔法】で作られたであろう槍が次々に飛んでくる。

 私は木の陰に隠れつつ攻撃を回避する。

 さすがにあの量でどれが幻覚かなんて判断できない。

 だからあの槍は全て実体と思って対処するしかない。


「嫌な感じで嵌ったなぁ…」


 あれを実体と認識してしまった以上、これからの攻撃も全部実体となってしまうだろう。

 となると、最初の蔦での攻撃も私が疑ってしまうと実体になる。

【植物魔法】を持っている『かもしれない』。

 あれは実体『かもしれない』。

 そういった疑心が【幻魔法】の脅威なんだよね。


「さぁどうしますか!」


 まったく面倒だなぁ…。

 …仕方ないね。

 使えるようになったばかりだけど、今なら周りに誰もいないから巻き込む心配はないよね。

 私はスキルを入れ替えて立ち上がる。


「おや、観念しましたか?」

「…『昔者(むかし)荘周(そうしゅう)夢に胡蝶と為る…』」

「何の真似ですか?」


 ルクスリアが疑問を聞くが、私は無視して言葉を続かせる。


「『栩栩然(くくぜん)として胡蝶なり…。自ら(たの)しみて志に適えるかな。(しゅう)たるを知らざるなり』」

「これは…」


 何かに気付いたようだが、ルクスリアは私に近づくと首を斬られる恐れがあるため近づけずにいる。


「『にわかにして覚むれば、則ち蘧々然きょきょぜんとして周なり』」

「確かこの詩は…」

「『知らず、周の夢に胡蝶と為れるか、胡蝶の夢に周と為れるかを』」


 そして私は最後の一文を発する。


「『周と胡蝶とは、則ち必ず分有らん。此れをこれ物化ぶっかと謂う!』」


 次の瞬間、ルクスリアが展開していたはずの漆黒の槍はそのほとんどの姿を消した。


「なっ!?」

「どうやらうまくいったようだね」

「一体何をしたのですか!?」

「特に変わった事はしてないよ。ただ私は言葉を紡いだだけ」

「言葉を…紡ぐ…?」

「言葉には魂が宿る。そしてそれは言霊となり事象に様々な影響を与える」

「だがあなたは童謡といった昔話物しかできなかったはず!」

「以前ならね」


 今の私は、童謡以外にも戯曲や詩といったものにも効果を付けることができる。

 その種は【童歌】と【山彦】の派生の【言霊】スキルから出てきた【詩人】スキルのおかげなんだけどね。

 これにより、私が使えるものの幅が一気に広がった。

【詩人】スキルはある意味吟遊詩人のような事が出来るスキルで、戯曲や詩に効果を付ける以外に、詩曲を作ることが出来るって能力なんだよね。

 でもこの詩曲を作るって言っても、人々の認知度で効果の強さが変わるんだよね。

 だからどんな詩曲を作っても、誰も知らなければ何も効果がないとかもある。


 そして今回歌ったのは『胡蝶の夢』で、これは現在の幻覚効果の打消しと幻覚耐性を得るものだ。

 まぁこれ使うと周囲にも効果あるから、【幻魔法】使ってる人いたら迷惑になっちゃうんだよね。

 てかまだ全然詩の効果を全部把握してないんだよね。

 だから色々調べないといけないのよね。


「くっ! 『イリュージョンファントム!』」


 おそらくまた幻覚を作り出したのだろうけど、私には何も見えない。

 この幻覚耐性って【幻魔法】使いからしたら天敵だよね。

 私はそのままルクスリアに近づいていく。


「何故避けないっ!? 『ダークランス!』」


 今度は実体も混ぜて攻撃するつもりだろう。

 でも私には一本しか見えないのでそれを避ける。

 そして私はルクスリアにあと数歩の距離まで近づいた。


「なっ何故だ!? 何故幻覚が判断できた!?」


 ってそうか、私が幻覚耐性になってることに気付いていないのか。

 まぁ教えてあげる必要もないけどね。


「さぁなんでだろうね?」

「ぎゃぁぁぁ!?」


 私は怖気づいて尻もちを付いたルクスリアのステッキを持っていた右腕を切断した。

 ルクスリアは悲鳴を上げるが、私は構わず左腕、右足、左足と切断していった。


「もっもうやめてくださいっ! 降参しますからっ!」


 降参?

 私は少しため息を付いてルクスリアの顔を掴む。


「降参してそんな簡単に済むと思った?」

「ひっ!」

「あなたたちはもっと人の痛みを知るべきだよ」


 私はルクスリアの顔を掴んだまま言葉を発す。


「『私の望みの品…それを今すぐ銀の皿に乗せてほしい…』」

「やっやめっ!」

「『そう…それはヨカナーンの首…』」

「やめてくれぇぇぇ!」

「『私は彼の首が欲しい…だから早く…早く…』」


 ルクスリアは逃げようと身体を動かそうとするが、四肢がない今、私に顔を掴まれた状態では逃げることができないでいた。


「『あぁ…私はあなたの口に口づけをしました…。あなたの唇は苦い味がしました…。あれは血の味だったのでしょうか…?』」

「それ以上はやめてくれぇ!」

「『いいえ…あれは恋の味かもしれません…。恋は苦い味がするしね…。でも…それがなんだというの…?』」

「誰かっ! 誰か助けてくれぇぇ!」


 ルクスリアは恥も外聞も捨てて必死に助けを呼ぶ。

 そして最後の一節を私は口ずさむ。


「『私はあなたの口に口づけしたのよ…ヨカナーン…』」


 その瞬間、触れていたルクスリアの首が切断され、私が掴んでいた頭部の切断面から血を流し、支えのなくなった身体はそのまま地面に倒れていった。

 私はその頭部をそこら辺に投げ捨てて手を叩いて軽く背伸びをする。


 やっぱりお仕置きにはサロメみたいなやつが有効だね。

 他にも色々調べて試さなきゃ。

 でもサロメの接触相手の首切断っていう効果はいいんだけど、なんか台詞がヤンデレみたいでちょっと恥ずかしい…。

 まぁ、これで私の相手は終わりっと。

 んー…ルカと海花のどっちに向かうべきか…。


「わー…凄いなー…」

「っ!?」


 二人の元へ向かおうと後ろを向いた瞬間、後ろの方から声が聞こえた。

 ぱっと後ろを向くと、木に寄りかかっている男がいた。


「誰…」

「えーっと僕は……あー…やっぱりめんどくさい…」


 えぇ…。

 そこで止めるのはちょっと…。


「ちょっと頑張って名乗ってよ…」

「んー…」


 木に寄りかかってる男は私をじーっと見つめる。


「噂以上に君可愛かったから頑張ろうかなぁ…」

「なんか頑張る基準が気になるけど…頑張って…?」

「うん…」


 なんか調子狂うなぁ…。


「えっと…。僕は七つの大罪の…怠惰の…アケディア…。あー…疲れた…」


 七つの大罪!?

 私は咄嗟に脇差を構えた。

 しかし、アケディアは構えずそのまま木に寄りかかったままだ。


「あー…僕は戦いに来たんじゃないから…」

「……」


 一体彼は何をしに来たんだろう…?

戯曲や詩とかをどうやって使わせようと考えた結果、詩人にすればいいんじゃないかという結論になりました。

これで色々使えるようになったぞー(考える内容は増えた)。



2016/12/19/12:00追記

ルクスリアの殺害方法があっさりしていたので修正加筆を行います。

修正は2016/12/20/08:00までには完了させる予定です。


2016/12/19/23:00追記

加筆修正完了しました。

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