人の温かさ
―とあるチャットルーム―
傲慢:皆集まっているな
怠惰:暴食さんいないよー…?
憤怒:あいつ返り討ちにされたって聞いたがなんで来ねえんだ?
色欲:私は何も聞いていませんが、何かありましたか?
嫉妬:首狩り姫…妬ましい…
傲慢:暴食はNWOをやめるからギルドを抜けると連絡が来た。他にも数人脱退申請が来たため承認した。
強欲:あいつに何があったんだ? 返り討ちに会った程度でやめるやつじゃねえだろ
色欲:そうですね。一体何があったのですか?
傲慢:理由は話そうとしなかった。ただ首狩り姫の逆鱗に触れるな という事だけを言っていた
怠惰:んー…なんだろうねー…
憤怒:首狩り姫が怒ったぐらいでやめるような奴じゃないと思うがな
色欲:事情はわかりませんが、彼女の逆鱗とはなんでしょうね?
強欲;大方NPCや友人の事だろ あいつは自分の事より他人の事を気にするタイプだろ
怠惰:じゃあNPCやその友人には手を出さない方がいいねー…
色欲:では次は彼女だけをターゲットとして複数人で掛かりますか
嫉妬:なら僕も行く…
憤怒:複数でいいなら俺にも行かせろよ! いいだろ!
傲慢:まぁ良いだろう。ただし、監視として色欲も付いていけ。
色欲:わかりました
色欲さんがログアウトしました。
嫉妬さんがログアウトしました。
憤怒さんがログアウトしました。
傲慢:話は以上だ。
強欲:傲慢
傲慢:どうした。
強欲:このままでいいのか
傲慢:…そろそろ引き時かもしれないな。
怠惰:NPCに手を出したのはまずかったねー…
強欲:少し大きくなりすぎたな
傲慢:そこは私のミスだ。けじめは付ける。
強欲:変なところ真面目ぶりやがって
傲慢:別に二人とも抜けてもいいんだぞ? 今なら名前も顔も知られていないだろう。
強欲:怠惰はともかく俺は知られているから今更だな
怠惰:僕はめんどくさいから動いてないだけだしー…
傲慢:それで? スパイ活動はもう終わりにするのか?
強欲:何のことだ?
怠惰:んー…?
傲慢:いや、他のギルドのスパイならお前ら二人の内どちらかと思っただけだ。違うなら違うでいい。まぁ後でこのログは消しておくから心配しなくていい。
強欲:要はNPCの事件がきっかけで、うちらに制裁を仕掛けるためのスパイが俺か怠惰ってことか?
怠惰:スパイしたからって何か変わるのー?
傲慢:ターゲットを選ぶ事は出来ただろ? あとは今回NPCを狙わないっていうところか。
怠惰:それに何か違和感あったっけー…?
傲慢:いや、私が気になっただけだ。言っただろう? 違うなら違うでいいと。まぁ私としては最高戦力がスパイだとしたら頭が痛いがな。
怠惰:僕が最高戦力とかないないー…強欲さんと傲慢さんの二強だってー…
強欲:怠惰のそういう所が食えねえよ この昼行燈が
傲慢:っふ、そういうことにしておこう。ではログを消す作業があるから二人は先に落ちててくれ。
怠惰:うんー…お疲れー…
強欲:おう
怠惰さんがログアウトしました。
強欲さんがログアウトしました。
メッセージを削除しました。
傲慢さんがログアウトしました。
チャットルームには誰もいません。
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「うーん…」
私は自分のステータスを見て喉を鳴らしながら唸る。
―ステータス―
SP:14
【刀Lv7】【AGI上昇+Lv13】【MP上昇+Lv8】【STR上昇+Lv1】【感知Lv8】【隠密Lv6】【解体士Lv3】【切断術Lv4】【大地魔法Lv7】【重力魔法Lv6】
特殊スキル
【狩人】
控え
【刀剣Lv1】【童謡Lv1】【ATK上昇+Lv2】【料理Lv25】【調合士Lv2】【栽培Lv17】【錬金Lv1】【鑑定士Lv6】【採取士Lv9】【梟の目Lv6】【童歌Lv6】【漆黒魔法Lv5】【DEX上昇+Lv3】【収納術Lv7】【山彦Lv23】【成長促進Lv4】【急激成長Lv4】【水泳Lv28】【操術Lv3】【変換Lv7】【付加Lv15】【取引Lv14】【集中Lv3】【紺碧魔法Lv1】【紅蓮魔法Lv2】【霧魔法Lv1】【溶魔法Lv2】【植物魔法Lv1】【幻魔法Lv2】
「まぁそういうことなんだよね…」
【刀剣】と【童謡】のスキルレベルが1になっているということは、この二つが対価だったのは間違いない。
レヴィの封印解除時に一度見た記憶はあるんだけど、正直あまり覚えてなかった。
なので落ち着いた今、再度確認をしている。
レヴィの対価についてはおおよその見当は付いた。
おそらくだが、スキルレベルがカンストしているものが対価となるのではないかと考える。
あの時私は全部持っていっていいとレヴィに言っていたので、ランダムだとしたらその二つだけが選ばれたのはおかしいからだ。
となると、先程の考えが正しいのではと考えた。
しかし…。
「でもそうすると、レヴィの封印を解除するのは当分できないってことなんだよね…?」
もう対価となるカンストスキルがないため、レヴィの封印を解除する手段がないのだ。
「まぁそれもあるけどこれもだよねぇ…」
私は掲示板を見て失敗したなと思った。
それは私がグラたちに襲われた時に、レヴィの封印が解除されたため、近隣の街に色々と影響があったのだ。
そして掲示板では謎の怪獣が出現! といった具合に色々な憶測が飛び交っていた。
しかもその怪獣はドラゴンではないかとも言われていた。
「レヴィどうしよっか…?」
「キュゥゥ…?」
まぁ言われても困るよね。
てかさ…。
「二人とも離れない…?」
「やっ」
「そうです! 嫌です!」
今私は、ルカと海花に挟まれる形でくっつかれていた。
ルカはジャックのお仕置きが終わってこっちに戻ってきた途端、私にしがみ付いて離れようとせず、海花は海花でルカがしがみ付いたのに対抗して私にしがみ付いて来た。
「それでジャックは?」
「今頃はレオーネ辺りにやられてる」
話を聞いてみると、どうやらジャックは銀翼のギルドホームの訓練場で皆からぼこられているようだ。
しかもその数は一人五回では済んでいないらしい。
ルカは七回で切り上げたので、このぐらいの時間になったとのことだ。
「でも二人ともいつまでもこうしてるわけにはいかないでしょ…?」
「やっ…」
「嫌です…」
どうしようかなと考えていると、しがみついている二人の身体が震えていた事に気付いた。
「二人ともどうしたの…?」
「…アリスが傷付くの、見たくない…」
「あたしも同じ気持ちです…ですから離さないようにしているんです…」
「私はどこにも行かないよ…?」
「そういうことじゃないっ!」
「「っ!?」」
普段大人しいルカが突然大きな声を出した事に私たちは驚いた。
ルカの方を見てみると、ルカは目に涙を浮かべていた。
「ルカ…」
「そういう…ことじゃない…」
ルカの様子を見て海花が腕を離してくれたので、私はルカを慰めるために正面に抱き寄せる。
何でルカが泣いてるのかわからないけど、少なくとも私の事で泣いているんだろう。
私はそんなルカをそのまま放置することはできなかった。
「ルカも…海花もありがと…」
「お姉様は優しいですね…。…そんなお姉様だからあたしたちは…」
「海花…?」
「なっなんでもありません! ともかくあたしたちはお姉様の味方ですから!」
「うん…ありがと…。…海花も来る…?」
なんだか仲間外れは可哀想だなと思ったので、海花も来るか聞いてみた。
私が提案すると、海花は少し躊躇ったが、少し照れながらゆっくりと抱き着いて来た。
まったく…仕方ない友人たちだなぁ…。
でも…なんだか暖かいね…。




