アリスの味噌作り
本物の味噌作りの方がいましたらお手柔らかにお願いします…。
日曜の朝、私はこの一日で調味料の作製に入ろうと思う。
もちろん予習は済ませてある。
ちなみに大豆は夕食の支度中に洗って容器にクラー湖の水を入れて浸けてあるのだ。
そして大豆の他にも塩と麹の二つの材料が必要である。
塩については既に確保済みで、残り一つの材料である麹が問題だった。
しかしそこは料理倶楽部の情報から麦麹が売っているということは知っていた。
というか、彼らも麦麹を使って味噌を作っている最中である。
では私も麦麹を使って味噌を作ろうと思ったのだが、実は王都に米麹が売っているという情報をリンから得た私は、一回明け方の四時頃に起きてログインしたのだ。
そして米麹を王都で購入して再度ログアウトした。
もちろん向こうでは昼間なのでサイとリアの二人には出会ったが、眠かった私は多分うまく対応してなかっただろう。
この後ログインしたら謝ろう…。
「ご主人様、何をしているんですか?」
「今味噌を作るために豆を煮てるんだよ」
「お味噌…ですか?」
リアは味噌が何かは知っているが、作り方は知らないようだ。
まぁ普通調べなきゃ知らないんだけどね。
でも一先ず数時間は大豆を煮込んで柔らかくしないといけないからその間に詰める様の樽とカビ対策用のお酒買ってこないと。
「あのっ! リアもお手伝いしたいです!」
「んー…じゃあ私が帰ってくるまでに今煮ているお鍋に灰汁が出たらそれを取り除いておいてくれる?」
「がっ頑張りますっ!」
健気な子だなぁ…。
私はリアの頭を撫でて家を出て買い物に向かった。
なるべく急いで帰らなきゃ。
「ただいまー」
「お帰りなさいご主人様」
「リア、灰汁はどうだった?」
「まだ煮たばっかりだったのでそんなに出てませんけど、出た分は取っておきました!」
「ありがと、じゃあ引き続き灰汁の取り除きお願いね」
「はいっ!」
さてと、私はその間に麹と塩を混ぜておこうかな。
さぁ均一になぁーれー。
私が麹と塩を混ぜ終わり、大豆の煮込みも数時間が経過した頃になるとサイが畑仕事が終わったのか戻ってきた。
「リア、そろそろナンサさんのところに行かないと」
「えっ? お兄ちゃんもうそんな時間? でも今は…」
「リア、お手伝いありがと。後は私がやるから大丈夫だよ」
「ごめんなさいご主人様…」
「ううん、リアが手伝ってくれたから他の作業できたんだから。だから大丈夫だよ」
「じゃあ…すいませんが行ってきます…」
そんなに落ち込まなくても…。
ここは元気を付けるために言葉を掛けないと。
「リア、私はリアが調合できるようになってくれたらとっても助かるんだけどなぁー…」
「! 本当ですか!?」
「うん、だからしっかりとナンサおばあちゃんに教わってくるんだよ?」
「わかりましたっ!」
よしよし、これでリアの元気は戻った。
さてと、じゃあ味噌作りに戻ろっと。
鍋に掛けている大豆を一つ取って軽く力を入れる。
私が指に力を入れるとネチっと潰れたため、ちょうどいいぐらいだと判断する。
念のために更にいくつか潰してみるが、同様にネチっと潰れた。
ではこの煮汁を別の容器に移してっと。
「『グラビティゾーン』」
私は自分に重力魔法を掛ける。倍率は1.2倍だ。
さてさて大体一分ぐらい経ったかな?
私は更に魔法を唱える。
「『チェンジグラビティ』」
私は今煮込んだ大豆に対して魔法を発動させる。
すると大豆は通常の重みより更に重力がかかって次第に潰れていく。
更に私もその上から手で押してペースト状になるように大豆を潰す。
もっと重力の倍率を上げればいいかと思ったのだが、そうすると鍋が壊れるかと思って少し低めにしといたのである。
魔法の効果が解ける頃には大豆はすっかりと潰れたので次の作業に移る。
この後は少し冷やす必要があるので鍋に水が入らないように周りに水を当てて冷やす。
数分後、いい具合に温度が下がったので中の大豆を先程作った麹と塩を混ぜたボウルに移す。
さてと、ここからはコネコネタイムだ。
リアがいたらきっと楽しめたんだろうね。
混ぜてる最中に、冷ました煮汁をムラがないように混ぜる。
そしてペタペタと押し固めて味噌団子を作っていく。
この時に硬さの確認としてパキっと割れるぐらい硬い方がいいらしい。何故だかはわからないけど。
あとは先程購入した樽にお酒を周りに薄く塗るのと、詰めた味噌団子の表面に化粧塩?っていう処理をするらしい。
化粧塩は最後だから、先に中に味噌団子を詰めては潰して隙間を無くすのを繰り返して樽の中を満たす。
最後に化粧塩を表面に塗って、後は樽の上に重石を置いて終わりらしい。
後は数ヶ月保管というけど、たぶんそういう熟成は多少はやめてくれてることだから多分ゲーム内で一ヶ月ぐらいで完成するのかな?
リアル熟成時間になると多分長すぎて誰も作らなくなるから大丈夫だよね…?
ふぅ、とりあえずこれで完成かな?
あと調味料とかとしてはハチミツだけど、調べたところ遠心分離機や濾過機が必要らしいんだよね…。
少なくてもエアストで砂糖は使われてることからその機材はあるはず。
問題は値段だ。
現実では少なくても数万から数十万はする。
いくらこの世界の物価が低いかもしれないとしても、少なくても数万は持ってかれるはずだ。
あぅ…。でも先行投資と考えれば…いやでも今はちょっと十万は痛い…。
「ご主人様、何に悩んでるんだ?」
「んーちょっと遠心分離機とか濾過機が必要なんだけどお金がなぁーって…」
「それならさっき話してた料理倶楽部っていうところには置いてないのか?」
あっ。そうだね、あそこはギルドだから必要機材は一通り揃っているはず。
しかし…いきなり行って貸してもらえるのだろうか…?
その場で使わせてなら多分大丈夫だろうけど…とりあえず連絡してみよう…。
料理倶楽部はどうやらギルドホールをヒストリアに建てたらしく、現在余った資金で機材の購入を行っているとのことだ。
ではでは乗り込んでみる事にしよう。
あと何か珍しい食材知ってたら教えてもらおう。
百話達成ということで、以前活動報告で記載していた短編小説を書き上げました。
ジャンル:ハイファンタジー
タイトル:『ろくでなしの従者』
http://book1.adouzi.eu.org/n7692do/
もしよかったらご覧ください。




