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お姉ちゃん襲来



 それはある日曜日のことだった.

休日は基本家でゆっくりしているのだが、今日も例に漏れず詩織とのんびりしていた。

 今日は昨日買い物にも行ったので外出する用事もなく、課題も土曜日のうちに全て済ませているので、特にこれといってする事がなかった。


 ……の、はずだったのだが、この前詩織の実家、つまりあのお屋敷に行った際に日向さんに言われていたことを完全に忘れていた。


 そう、現在進行形でこの部屋の玄関前に日向さんが来ているのである。


「完全に忘れてた、今度休みの日に来るって言ってたな……せめて連絡をくれてたらもうちょっと片付けしてたんだけど……」

「……あっ」

「…….まさか、連絡貰ってたけど言い忘れてた、なんて言わないよな」

「流石誠ね、言わなくても伝わるなんて凄いわ」

「……はあ、連絡貰ってたならちゃんと伝えてくれよ。言ってくれたらちゃんとお菓子とか準備できてたのに」


 客を家に迎えるのに、何も出せないというのはいささか問題があるのではないだろうか、しかも相手は詩織のお姉さんなのだ、せっかくならちゃんともてなしたかった。


「でも、お姉ちゃんは気にしないと思うわ」

「そういうのは気持ちの問題じゃないんだよ……っと、待たせるのも悪いから話は後だ」


 幸い、そこまで部屋は汚れてないので、さっきまで読んでいた本を片付けてから玄関に向かう。


「すみません、お待たせしました」

「いいよ、いいよ、どうせしおりんが伝え忘れてて準備に手間取ったー、とかそんな感じでしょ?」

「……よく分かりましたね」

「そりゃあ、姉だからねっ」


 とりあえず、玄関先で話すのもあれなので、部屋に入ってもらう。


「なるほど、ここが二人の愛の巣か」

「そんなんじゃないです……」

「またまたー、そんなこと言って実はやる事やってたりするんじゃないの?」

「やってないですってば!」


 断じて俺と詩織の関係は健全なものである。


「……まさか、誠君は女の子に興味ない感じの子なの?」

「俺はノーマルですっ」

「あっ……もう、枯れちゃってるの?」


 日向さんはお気の毒に、というような感じの表情でこちらを見ている。


「枯れてもないですし、男好きでもないですからっ!」

「……じゃあ、どうして手を出してないの? 身内の贔屓目に見なくても、しおりんは相当かわいいと思うんだけど、誠君はそう思わないの?」


 本当に分からない、と言わんばかりに首を傾げて聞いてくる。


「そりゃあ、今まで出会ったことのある人の中でもダントツでかわいいと思いますよ? でも、信頼してくれて傍にいてくれるのに、欲望のままに手を出すのはどう考えてもダメだと思うんです……そういうのは、お互いの了承があってからだと思いますし」

「ふーん」

「何かおかしいことを言いましたか?」

「いやいや、しおりんは愛されてるなあと思ってたところだよ」


 にまにまとしながら喋ってくるので、こちらとしては非常にやりずらいのだが、どうやらさっきの質問には正解していたようでホッとする。


「ということで、お姉さんは誠君の手料理をご所望するよ」

「どういうことかはよく分かりませんが、何が食べたいんですか?」

「うーん、そうだなあしおりんは食べたいのある?」


 俺と日向さんが喋っていてさっきまでは少し退屈そうにしていた詩織だったのだが、今は何故かご機嫌になっている。


「なら、お姉ちゃんにもハンバーグを食べて欲しいわ」

「前聞いた絶品のハンバーグだねっ、じゃあそれをお願いしていいかな?」


 期待した眼差しを送ってくるが、勘弁してほしい……。


「ハードルを上げないでくださいよ……ハンバーグなら材料足りないので、急いでスーパーに行ってきますね」


 三人分のお肉は無いので、買ってこないと量が足りなくなってしまう。

 今から買ってきて作るとなると、少し遅くなってしまうがそこは許してほしい。


「なら、私としおりんはお話して待ってるねー」

「いってらっしゃい」


 



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