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ただいま



 その後もしばらくバスに揺られて、そろそろ水族館に着く頃になったのだが未だに詩織はスヤスヤと横で眠っていた。


 ぐっすりと眠っているので起こすのは気が引けたのだが、流石に起こさないといけないので、そっと肩を揺らして起こすことにする。



「そろそろ目的地に着くから起きないとおいてかれるぞ?」

「……ん?」


 詩織は眠たそうに目をこすった後、俺の顔を見てそのままもう一度元の場所に頭を戻して二度寝をし始めた。


「こら、目開いただろ?」

「……やだ」

「やだじゃない、水族館にみんなで行くんだから起きないとおいてかれるぞ」

「……むぅ」


 そう言いながらも、起きないといけないことは分かっているので渋々頭を上げる。


「まあでも、水族館から学校までそんなには離れてないから、そんなに長い時間は寝てられないとは思うけど、水族館から出てまだ寝たかったらその時は肩貸すぞ」

「頭も撫でてくれる?」

「……気づいてたのか」

「もちろんよ、気持ちよくて最高だったわ」

「……それはよかったけど、まだバスの中だからもうちょっと声のボリュームを落とそうか」

「どうして?」


 どうしてって……そりゃあ生暖かい目でこちらを見てくる二人が前の座席に座ってるだよ……


「あ、俺らのことはお構いなくどうぞ」

「いや、やらねーよ?」

「してくれないの?」

「詩織は話がややこしくなるからマジで一旦黙っててくれ……」



 そんなこんなで水族館に着いた訳だが、二人からの視線が辛い。


「頼むからその目をやめてくれ……」

「あら? バスでなにかあったの?」


 合流した中野さんは、前の方に座っていて何があったのか分からないので首を傾げている。

 ついでに、詩織も首を傾げていた。


「まあ、微笑ましいというか何というか、口の中が砂糖でいっぱいになるような、そんな感じのことがあったのよ」

「そう? まあ少し気になるところではあるけれど、上崎君もあまり嬉しそうな顔をしてないし、ほどほどでやめてあげなさいよ?」

「ありがとう、委員長だけが味方だよ……」


 委員長にもそう言われて、二人がやっと元に戻ってくれたが、俺もこれからは気を付けようと思う。

 最近、というより今朝から詩織との距離がかなり近くなってるし、このままだとまたやらかしてしまいそうだ。




 当初の予定通り、五人グループで水族館をぐるっと回ったのだが、当初思っていたより楽しむことができた。

 というのも、柊さんが魚にかなり詳しく、色々説明してもらいながら見て回れたのがかなり大きいと思う。

 お昼ご飯もその水族館で食べたのだが、水族館でシーフードカレーを食べるのはなんだか複雑な気持ちになった……


 残念ながら、時間的にイルカショーを見ることはかなわなかったのだが、それはどうしようもないだろうということで、時間ギリギリでバスに戻った。



「水族館もなかなか悪くないでしょ?」

「ああ、思ってたより楽しめたよ。イルカショー見れなかったのはちょっと残念だったけど」

「確かにそうね、ここのイルカショーは結構見ごたえがあるからみんなにも見て欲しかったわ」

「今度みんなで見に行けたらいいな」


 柊さんがそこまで言うのなら、かなりのものだろうし余計に気になってきた。



 あとは学校に帰るだけなので、水族館に着くまでと同じように右肩に少し重みをを感じながらバスに揺られてのんびりした。



 学校に戻ってきて林間学校の感想をまとめたり、その他いろいろをしたりしていたら、マンションに帰ってくる頃には、すっかり日が落ちかけるような時間になってしまった。



「さっさと晩ご飯の準備をするか。今日は遅くなったし、簡単なものになっちゃうけどいいか?」

「誠が作ってくれるなら何でもいいわ」

「了解」


 さて、何を作ろうか。

 冷蔵庫の中身はそう多くないので、作れる物は限られそうなのだが――主食にできそうなのは中華麵くらいか……他のものも合わせれば、焼きそばなら作れそうだ。


 そういえば今まで詩織には焼きそばを作って来なかったな、と思いつつエプロンをつけて台所に立つ。


 具材を切りながら、詩織は何をしてるかなと思いそちらにチラッと目を向けると、詩織がジッとこちらを見ていたので二人の目がばっちり合う。

 目が合った瞬間、詩織が少し嬉しそうな表情をするものだから、こちらとしては少し恥ずかしくて視線を下に下げてしまう。


 今日は、目が合うたびに嬉しそうにするものだからこちらとしては、たまったものではない。



 幸い、焼きそばは直ぐにできたので、長い間詩織がお腹を空かせて待たせるなんて事にはならなかった。


「なんだか家で食べるのが久しぶりな感じだけど、たった二日しか経ってないもんな」

「確かにそうね」

「まあ、林間学校中にあった内容が濃すぎたからだけど……」

「嫌だった?」

「そんな訳ないだろ? 確かにいろいろあったけど、嫌だったことなんてひとつもなかったよ……まあ、優斗たちに散々いじられたのはちょっとあれだったけど……」


 あの目でずっと見られるのは、今後勘弁して欲しいところではある。


「私も楽しかった……誠とももっと仲良くなれたし」

「……そりゃあよかったよ――っと、とりあえず冷めないうちに食べるか!」

「ん」

「それじゃあ、いただきます「いただきます」」

 






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