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本当にごめん



 朝ご飯を全員が食べ終えればこの後はもう帰るだけなのだが、その帰りに水族館に寄ってから学校に行くらしい。



「水族館なんて小学生の時に家族と行って以来だな」

「俺も確かにそうだな、なかなか一人で行くような場所でもないし、かと言って友達と行くかって言われても微妙だもんな」

「そうかしら? 私は結構好きだから一人でも行くのだけど……」

「そういやそうだったな、陽彩はイルカとか小っちゃい頃からかなり好きだったから行ってるのも分かるわ」


 柊さんは、意外とそういった可愛い物とかが好きなのかもしれないな、カバンにもクマのキーホルダーとかつけてるし。



「ゴホンっ……とりあえず私の話は置いておいて、早くバスに乗らないと遅れるわよ」

「っと、そうだな話は後だ、誠達も早くバスに乗りに行くぞ」

「はいよ、詩織も行くぞ」

「水族館楽しみね」

「――そうだな」


 少し駆け足で旅館に目の前にと待っているバスに乗り込んで、来た時と同じ位置の座席に座る。


 委員長はというと、少し青ざめた顔で前の方の座席に座っていたので、軽く会釈だけしておいて詩織の横に座る。

 乗り物酔いがなくて良かったなあと、しみじみ思う。


 先生が点呼をして全員が乗ったことを確認すると、さっそくバスが出発する。



「――誠って幽霊とか信じるタイプか?」

「ん? いきなりなんだよ」

「昨日誠達は休んでたからあれだけど、肝試しってあっただろ?」

「……ああ」


 ああ、これはマズい。

 たらりと冷や汗が頬を伝う。


「それで、ほぼ最後までは生徒たちが驚かせに来る別に何ともない、ただの肝試しだったんだけどな」

「……」

「最後の何もないはずの木の陰に……いたんだよ」

「……」

「さては信じてないな? ほんとにいたんだよ! 白い服を着た幽霊が! しかも二人! 思い出したらまた怖くなってきた、マジで俺呪われたりしないよな……」

「……ほんとごめん」

「え?」


 本当に申し訳ないことをしたなと思う、まさかあんなに怖がられるとは思ってもみなかったし、ここまで引きずっているとも思わなかった。

 次から悪ふざけもほどほどにしようと思う……


「あれを見てからは、今まで信じてなかった幽霊も信じるようになっちまったよ」

「……そっか」

「ありゃ? 乗り悪いな、もしかして幽霊とか苦手だったか? 悪いな、なら別の話にするか」

「ごめん」

「いいって、じゃあ好きなゲームの話でもするか!」


 申し訳なくて目を合わせて会話できていなかったのだが、それが怖いのが苦手だと取られたのか、話を変えてくれたので、食い違ってはいるのだがそれに乗らせてもらう事にした。


 お詫びに、今度遊びに来るときには頑張って料理を作ることにしよう……



「ていうか、そもそも誠ってゲームとかするのか?」

「そんなにガチでやってるわけじゃないけど、スマホゲームとかはまあまあやってるかな、テレビゲームは気が向いた時くらいにはって感じ」


 詩織と一緒に生活するようになってからは、テレビゲームは全くやっていないのだが、スマホゲームも頻度は低くなったとはいえ触ってはいる。

 完全にエンジョイ勢なので、特に上手いとかはないが。


「ちょっと意外だな、学校だと全然スマホ触ってないし、そういうのあんまりやってないかと思ってた」

「学校は勉強するところだからそういうメリハリはやってるってだけだよ、それにさっきも言ったけどガチではやってないからな」

「偉いな、って言っても俺も親に言われて学校では触らないようにしてるんだけどさ」


 勉強する場でも触っていたら成績が落ちてしまいそうなので、一定の成績を条件に一人暮らしをしている俺はちゃんと我慢している。



 そんなこんなで、水族館に着くまで他愛もない話をしていたのだが、ふと右の方に温かな重みが寄りかかってきたのでそちらを向くと、詩織がスヤスヤと気持ちよさそうな寝息を立てていた。


 やはり朝うなされていたように、きちんと眠れていなかったのだろう。

 寝不足になって、バスの揺れも相まって眠気に耐え切れなくなって今に至るというわけだ。


 でも今の表情を見ると、とても穏やかな表情で気持ちよさそうに眠っているので、心配はいらなさそうだ。

 肩に頭を乗せているので、後で首が痛くならないか心配だが、離そうにも起こしてしまってはかわいそうだし、なにより左手で俺の腕をギュッと捕まえられているのでどうしようもない。


 そっと起こさないように、頭を撫でてあげると少し嬉しそうにしていたので、俺はしばらくの間その頭を撫で続けた。

 





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