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林間学校についてお話をしようか 後編



「今詩織が一緒にお風呂って言ったきがするんだけど気のせいかな? 手を出してないって言ってたよね?」


 義さんがすごい形相でこちらを睨んでくる。


「ええ、毎日一緒に入ってるわ」

「……そうなんだ、そう詩織は言ってるけど間違いないかい? 誠君」

「……はい」

「そうか、君には期待してたんだけどね……」


 人生が終わったかもしれない、というか詰んだ。どれだけ考えても、ここから助かる未来が見えない。


「どうして誠はそんなに暗い顔をしてるの?」

 

 本当にどうしてか分からないというような表情で詩織が聞いてくる。


「へ? いやどうしてって、そりゃこれからどうなるんだろうって」

「ん? どうして一緒にお風呂に入っただけでそうなるの? 我慢して水着だって着ているのに」

「確かにそうだけども」


 傍から見れば結構まずいことをしているかもしれないが、やましいことをしている訳ではないし、水着を着て事故が起こらないようにちゃんと警戒はしている。

 ……ということは、俺は無実なのでは?

 

「それに、パパやママだっていつも一緒にお風呂に入ってるじゃない。なにもおかしくないわ」

「……」


 詩織、それ多分俺が聞いたらだめだったやつなのでは……

 でも、夫婦の仲がいいのはとてもいいことですよね義さん。


「その微笑ましいものを見る目はやめてくれないかな、流石に恥ずかしいんだけれども」

「す、すみません、つい……」

「はぁ、でも私と美緒さんは夫婦で君たちはそうではない、いくら水着を着ていても間違いが起きてはいけないそれは分かっているよね?」

「それはもちろんです」


 そりゃそうだ、だからこそ最初詩織が一緒に入ろうと言ったときはもちろん断ろうとした。


「一緒に入りたいといったのは詩織なのかい?」

「うん」

「変なことはされてないだろうね?」

「変なことって?」

「……その様子ならされてないっぽいけど」


 その後も義さんがしばらく思い悩んでいると、今まで喋っていなかった美緒さんが口を開いた。


「まあいいんじゃない? 何もしてないっぽいしそれに仲がいいのは何よりじゃない」

「それはそうだけど、でもやっぱり男女で一緒にっていうのは……」

「私たちだって高校生の頃一緒に入ったりしたじゃない」

「それは付き合ってたからだろう? ていうかそんな話を子供の前でしないでくれ……」

「それに誠君だって手を出したらどうなるか分かっているからこそ、一か月もの間何も起こってないってことでしょう? もし何かたくらんでいるならもう手を出しているはずよ」


 少し意外だな、いくら俺が手を出していないからとはいっても、これからも大丈夫だっていう保証もないのに賛成するなんて。

 勿論俺が同意もなく手を出すなんてことは絶対にしないけど。


「うーむ、だがしかし……」

「パパ、ダメ?」

「うぐっ」

「ウルウル」

「……詩織がそんなに言うなら、これまで通り水着を着て一切手を出さないと誓えるなら考えなくはない」

「パパ、ありがとう!」


 あぁ、やっぱり娘のウルウル攻撃には勝てなかったか……

 ていうか前よりも演技が上手くなっているような……俺もそれをやられてしまったら何かしらを承諾してしまう気がする。


「はぁ、話が脱線しすぎてしまったね。とりあえずこの話はまた今度ということにして、林間学校の話の戻そうか」

「そうですね」

「とりあえずはさっき話したように、料理以外は基本的にいつも通り詩織の手伝いをしてもらう、夜は仕方ないけどけど一緒の部屋に行ってもらう。ちゃんと二つベッドを用意するから、別々に寝るようにするんだよ? 詩織も分かってくれよ?」

「うん」

「分かってますよ」

「それならいいんだ、せっかくの林間学校なんだからしっかり楽しんできて来るんだよ」


 義さんは俺を信用してくれた……というより、娘と妻の二人に負けて諦めたという方が正しい気はするが……

 ともかくなんとか林間学校での動きを決めることができた。

 少し不安もあるが、後は林間学校に行った後の俺に任せるしかないだろう。













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