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第51話 忠告



 ところで、あの決闘の日以来、私の周りに集まってくれてる子達に変化があった。


 まず、人数が減った。

 何だか知らないけど遠巻きに眺められてる感が否めない。明らかにあの決闘が原因である。

 いや、まあ多分、というか絶対エレナちゃんの権力に惹かれて来てた子が大多数だろうから、友達になれる見込みは限りなく低かったんだけどさ、それにしたって、いつまで私は嫌煙される存在になってればいいんだろう……。これもまた、エレナ・グレイフォードの宿命なのか。


 そして、このことを一番喜んだのはミザエラだった。


「権力に群がるうるさいご令嬢方がいなくなって清々しましたね! これでエレナ様のお歩きになる道も見通しが良くなるというもの」


 ニコニコ可愛いご機嫌顔で、今日も今日とて私のバックを持ってくれてる。もうなにも言うまい。


「学院一の秀才サイラス様に、この王国で五指に入るのではないかと噂されているジール様を兄に持ち、テレーネ屈指の大貴族グレイフォード家のお嬢様、そしてそして王家と今最も関わりの深いご令嬢、それがエレナ様ですもの。誰もが憧れますわ」


 その調子でペラペラと話しはじめた、その肩書きの恐ろしいこと恐ろしいこと!

 私そんなたいそうなもの背負えるほどの度量持ち合わせてないんですけど!怖い、エレナちゃんが怖くて仕方ない!


「つまらない嫉妬心で、大変な過ちを犯したわたくしですが、こうしてお側に居ることを許していただけて、本当に感激ですわ。頑張りますから、わたくし、エレナ様のために」


 え、なにどうしたの?今日ちょっと変じゃない?テンション上がりすぎてる?


「ミザエラ?」

「なんでもありません。さ、参りましょう」


 ニコッと笑うとオレンジ色の大きな目がとろけるように細められて本当に可愛い。だけど、今はなんだかいい気分はしなかった。なんていうの?不吉な予感?

 なんか、そのうち笑顔恐怖症とかになりそうだな……。

 なんでこの世界の人たちって無表情かよくわかんない笑顔浮かべる人しかいないんだろう。




 #



 

「…………はあ?」


 私の品のない声に眉をしかめるのはマルガレータお嬢様。

 取り巻きを置いてひとり、放課後温室へ向かおうとしていた私の目の前に立っていらっしゃる。珍しいこともあるものだ。

 珍しいついでに、彼女の先ほどの言葉。


「もう一度、おっしゃっていただけます?」


 すると、「バカなのかしら」とでも言うかのように目を眇めた後、仕方なさそうにその豪奢な髪を払って腕を組んできた。わあ、すごい態度。


「ですから、貴女のそばにいるあのニュールの娘。虎視眈々とフレデリク殿下の婚約者の座を狙ってますわよ、と忠告にし来て差し上げたのです。このわたくしが、親切にも、エレナ様に」


 なにを言ってるんだかさっぱりわからない。ミザエラが、なんだって?

 というか、マルガレータ様が忠告?私に?目の敵にしてるエレナちゃんに?

 明日はひょうでも降るかな……。

 いやもう正直、天変地異でもなんでも起きて、元の世界に戻してくれないかなぁ。そろそろ疲れたんですけど。

 エレナちゃんあなたまだ十歳でしょう?波乱万丈その他バッドエンドを迎えるまでに少なくともあと五年はあるっていうのに、人生ハードモードすぎやしないか。

 

「聞いてらっしゃるの!?」

「え、はあ、まあ……。……あの、どうしてマルガレータ様があたくしに忠告などするんですの?」


 率先して私の悪い噂を流して貶めようとしてたご令嬢が、ついに改心してくださったのね!なーんて言えるほど頭お花畑でも人生無駄に長くも生きていないもので。

 さっき十歳って言ったけど、実際エレナちゃんの中身ただの三十路近いおばさんだからね。サバ読みもいいとこ。

 ……言ってて自分でダメージ受けたわ。


「ふん。まあ、信じるも信じないのも勝手ですわ。あとで無様な女王様気取りの侯爵令嬢を高みの見物できることは変わりないですもの」


 つまらなそうに鼻で笑ったあと、さっさと踵を返してしまった。一言言わせてもらうと、私よりあなたの方が女王様役には向いてると思います。

 一体なんのつもりなの?結局私をバカにしにきた?それにしたって威力もなにもないし、何よりひとりって。私みたく取り巻きいなくなったのかな?ないか。

 少し考えたあと、まあいいかとまた温室を目指す。

 馬車を待つついでにロベルト殿下のご機嫌とりでもしとこうかと思ったんだよね。特に理由もないけど、あれ以来よく温室にいるっていうし、待ち時間ぐらいならいっかなって。一応私のこと考えてくれてるみたいだし。決してひどいこと言った罪悪感からくるものではない。うん。

 温室は、並び立つ木々と大きな薔薇の生垣の向こう側に隠されるように建っている。自然にできたような薔薇のアーチをくぐればすぐ目の前に温室が見え──、


「では、あとはこちらでどうにでもする。この天才に任せておればおぬしが案ずることはなにもない」

「はい!」


 楽しげに笑う第三王子と頬をピンクに染めたミザエラがいた。






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