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十四

「お逢いしたかった...!」

「俺もだ...!」

薔薇園の端。

誰の目にもつかないような場所で、

抱き合う二人。

「すまない。中々仕事が進まなかったのだ...」

男が女の髪を撫でる。

「いいんです。お仕事大変なんでしょう?」

「そうなんだ。技術師の反抗にあってな...」

女の手が男の背に周る。

親密な雰囲気を醸し出す二人。

「マリアンヌの婚約披露宴もその影響を受けてますの...」

女の目に涙が光る。

「なんだと、マリアンヌの!?」

「ドレスのデザインをして頂けないみたいで...鍵盤機まで使えないんですって。」

男は納得したように頷いた。

「一番人気の技術師か。あれには俺も中々手を出せん。通称は分かっているのだが、権利を譲渡しているらしい...」

製作者である技術師に権利がないため、使用には権利を譲渡された者の許可が必要となる。この一番人気の技術師は、過去に演算機と鍵盤機の設計も行っていた。

「あと、マリアンヌのことなのだけど...」



「...なに?そうか、そんなことを...」

「私があの子を産んだのよ?それなのに..」

男は女を抱きしめた。

「そろそろマリアンヌにも言うべき時が来たな...」

「私ね、気づいたの。」

マリアンヌを王族でいさせるためにしたこと。そして、マリアンヌが王子と結婚するため、どっちにしろ王族となり、必要がなくなること。

「そうか。これなら俺たちが本当の両親だと明らかになり、褒美も貰えるな。」

王族と婚姻関係を結んだ家には、爵位などの褒美が与えられる習わしがある。

二人はこれを狙っていた。王から直々に褒美が与えられるということは、その後の生活を保証されたようなものだからだ。


「だが、これを明らかにして、怒られたりはしないのか?」

「ディオゲネス公に?ないわよ。あの方は私が他の男と会っていても全く気にしないの。」

「他の男?」

「あ、あなたのことよ。あなたと会っていることを気づかれているかもしれないわ。」

男が怪訝な顔をしたのを見て、女は慌てて言い直した。

「そうか、それなら簡単に離縁できそうだな。」

その言葉に、女はきょとんとした顔をした。

まるで、離縁してこの男と再婚することなど、微塵も考えていないかのように。自分が王族から外れることなど、想像だにしないように。

「り、離縁?でも...」

女の頭では今の生活と男との生活が天秤にかけられていた。

パーティーやお茶会、今の地位と名誉は離縁してしまえばもう手に入らない。

しかし、女としての幸せを手に入れるなら、男の手を取るべきだ。今の旦那は、義務感以外で女に振り向いたことはなかった。

この計画を取るなら、そのまま男の手を取る流れになってしまう。

でも王族としての地位と、お金は手放せない。

女の中で葛藤が生まれていた。

「俺のことは心配するな。三人くらい養う余裕はある。マリアンヌが王子と結婚すれば、ハイドローザ家は王族と同じこと。褒美も与えられる。結局全て同じだ。」

男には、女の表情が不安気なものに見えていた。マリアンヌのことを考えて、王族として育てることにしたが、マリアンヌと王子の結婚が決まった以上、行き着く先は同じ。

その説明に、女をパッと顔をあげた。

「そうね!」

女は結局今と同じだけの生活が手に入ると知り、男の手を取ることに決めた。

正直、今の屋敷と旦那の地位、そして顔は手放すには惜しいものがあったが、いくら努力しても自分を愛してくれない男より、この男の方がマシだと思ったのである。


女の機嫌は途端に良くなり、

二人は遅くまで、秘密の花園で話し合った。



...この計画が、一体どんな結果を生むか気づかずに...

ほら!マリアンヌって、あの人とあの人の子供じゃん!ってなった方...ふぁいなるあんさー?

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