今後の予定
畑仕事を終えて家に帰ってきた。
扉を開けた瞬間、肉の焼ける良い匂いが漂ってきた。こ、これは!?
「ただいま。」
「ケイン、お帰りなさい。夕食が出来ているから手を洗ってきなさい。」
「うん!」
俺は早く夕食を食べたいため、急いで手を洗い、台所へと向かう。
テーブルに着いたが、夕食はまだ置かれていなかった。
そこに母さんが笑いながら夕食を持ってやってきた。
「そんなに急いちゃって、それほどまでにお肉が楽しみだったみたいね。」
「もちろんだよ! だってお肉だよ! お肉!」
「はいはい。」
母さんはそう言って、テーブルに料理を並べていく。
黒パンに豆のスープは同じだが、何と今日は、ホーンラビットのステーキが追加されていたのだ!!
「うっひょ~! 旨そう!!」
「それじゃ、食べましょうか。」
「「いただきます。」」
俺は楽しみだったお肉に齧り付く! こ、これは!?
「旨めぇ! 何だこれ!! 俺の知ってるお肉じゃない!!」
「本当ね、こんなに美味しいお肉は初めてだわ。」
見た感じウサギみたいな感じの肉なのだが、食べ応えは全然違かったのだ。
ウサギの肉って柔らかくて淡泊な感じのイメージしか無かったのだが、この肉はしっかりと噛み応えがあり、油が乗っていてかつ、味が濃かったのだ。
だから、噛めば噛むほど肉汁が溢れてくるのだった。
「最高だ。」
あっという間にホーンラビットのステーキは無くなってしまったが、残った黒パンと豆のスープを見て後悔するのだった。
「後で食べれば良かった……」
折角、旨い肉を食った余韻が、微妙な黒パンと豆のスープで無くなってしまったからだ。
俺はがっくりと項垂れるのだった。いや、別に母さんの料理が悪いって訳じゃないからな?
食事も終わり、お茶を飲みながら食休みをしているところで報告することにした。
「今日、ジャックにも冒険者になることを話したんだ。」
「そう。なることに決めたのね。」
「うん。それで領主へ畑仕事を辞めることを伝えなきゃいけないんだけど、どうすれば良いの?」
「仕事を始めるときと一緒よ、取りまとめ役のゲイルさんに言えば良いのよ。」
「そっか。なら、明日ゲイルさんのところに行ってみるよ。」
「分かったわ。」
この世界では、領主の下働きと言う形で働くのが基本で、給料と言う形で支払われる。
母さんは裁縫、俺は畑仕事と言う感じだな。まぁ、サボったり、あまりにも態度が酷い場合は給料が出なくなるけどね。
でも、俺やジャックみたいな自然の影響がモロに出る仕事の場合でも、出来の良し悪しで金額が変わらないのはある意味助かっている。
ちなみに冒険者になると、完全に自己責任だ。もちろん給料なんてものは無いし、成果に対しての報酬のみだ。その代わり成功すれば大金が手に入る。
逆に領主の下働きの場合は、仕事による怪我で働けない時期が有っても、恩賞で給料は出るし、場合によってはお金も貸してくれるので、安定した生活を望む人はこっちの方が良いだろう。それに母さんやジャックみたいに内職が出来る人は、追加で稼げるしね。……ふと、俺のスキルもある意味内職に当たるのかもしれない。
あれ? そう考えると、別にこっちの世界で冒険者にならなくて良いのでは無かろうか。冒険だったらリンルージュ・オンラインで出来るし、こっちはあくまで安定した仕事をすれば良いんじゃね?
「母さん、やっぱり俺、畑仕事を頑張るよ。」
「そう? 別に私はどちらでも構わないわよ。」
母さんは、すました顔でそういったが、口元が喜んでいた。やっぱり危険な冒険者になるのは止めてほしかったんだな。
なら俺のがやることが決まった。冒険はあくまで向こうの世界で、こっちは安定した生活を目指すぞ!




