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お飾りにされた方、お飾りの婚約者をお待ちしております  作者: ましろゆきな


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第十七章:聖地の扉と愛の鍵

 Ⅰ. 追跡の最終局面


 文献庫を後にしたアルティスとセレネアは、「聖地」が「二人の愛の成就によって出現する」場所、すなわち「誓約を交わした者だけが知る、魂の安寧の場所」であると確信した。


 しかし、文献庫での魔力の痕跡から、ユリウス王子は二人の居場所をほぼ特定していた。


「セレネア。追手が迫っています。この先、光の魔力が強くなるのを感じますか? ユリウス王子が、私たちを閉じ込める最終結界を張り始めた」アルティスは警戒を強めた。


「ええ、感じます。あの熱は……ユリウス様の焦りよ」セレネアの金色の瞳が、決意の光を宿す。


 アルティスは、セレネアの手を強く握った。


「急ぎましょう。聖地の鍵は、君と私の愛です。君の光を、私に最大限、集中させてください」


 Ⅱ. 鍵の発見とヤンデレのドヤ顔


 二人は、古代の巨木が立ち並ぶ、太古の誓約が交わされたと伝わる森の奥にたどり着いた。ここが、聖地が出現する場所だと直感した。


「アルティス、鍵は……どこに?」セレネアは不安げに尋ねた。


 アルティスは、優しくセレネアの頬に触れた。


「鍵は、私たちです、私の太陽。文献の通り、『真の愛の誓約』が、聖地を呼び出す。つまり、私たちが真に求め合えば、誓約の力が発動する」


 セレネアは、彼の言葉の意味を理解し、頬を赤く染めた。しかし、背後には、ユリウス王子の魔力が迫ってきている。


 アルティスは、「これこそが正解だ」と確信する得意満面な表情を隠そうともしなかった。


「心配いりません。何がどうなろうとも、私が責任取りますので!」


(アルティスの得意げな顔に突っ込みたいけれど、今は、この自信満々な彼を信じるしかないわ……!)


 Ⅲ. 鍵の解放と背徳的な覚悟


 ユリウス王子の最終結界が森全体を光で覆い、逃げ場は完全に断たれた。アルティスとセレネアは、太古の巨木の前に立つ。


「鍵は、私たちです、私の太陽。『真の愛の誓約』が、聖地を呼び出す」


 アルティスは、切迫した状況の中で、冷静さと情熱を混ぜた瞳でセレネアを見つめた。


 セレネアは、背後に迫るユリウスの魔力と、目の前のアルティスの覚悟に挟まれ、羞恥心を振り払った。


「アルティス……わたくしは、逃げません。この責任を、共に果たしましょう」


 アルティスの冷徹な仮面は、すでに存在しない。彼は、傲慢さではなく絶対的な愛の支配を込めて、セレネアを抱き寄せた。


 アルティスは、セレネアのフードを払い、唇を深く重ねる。この口付けは、魔力的な融合を目的とした、背徳的な愛の儀式だった。


 アルティスは、影の魔力で周囲の音を完全に遮断し、ユリウス王子の光の魔力を一時的に無力化する。


 二人の体が密着し、銀色の指輪と金色の指輪が触れ合うと、双律の誓約の共鳴が体内から爆発した。


 セレネアは、激しい快感と魔力の奔流に、理性を手放しそうになるのを感じる。アルティスは、唇をセレネアの顎、そして首筋へと移動させ、情熱的な印を刻みつけた。


「セレネア……君の光を、私に全て注ぎ込んでください。この愛こそが、私たちを自由にする」


 セレネアの太陽の魔力は、愛と熱情によって増幅され、アルティスの月魔法と皮膚の下で混ざり合い、融合していく。この肉体的・魔力的な接触は、二人の魂を完全に一つにし、太古の誓約を強制的に発動させた。


 彼らの愛の魔力が、極限に達したその瞬間、光と影の奔流が森全体を包み込み、ユリウス王子の光の最終結界を粉砕した。


 ドゴォォォン!!


 地面が割れ、黄金と銀の光を放つ螺旋階段が、目の前に出現した。


 アルティスは、乱れた息の中で、愛するセレネアを抱き上げた。


「行きますよ、私の女王。……この続きは、聖地で責任を取らせていただきます」


 アルティスは、追いついたユリウス王子を、傲慢な最後の宣言で打ちのめし、聖地の扉へと飛び込んだ。


 Ⅱ. 始祖返りの儀式:究極の融合


 二人がたどり着いた聖地は、太陽の祭壇と月の泉が向かい合う、愛の成就の空間だった。


 アルティスは、セレネアを祭壇の中央に優しく下ろすと、儀式の完了には、二人の肉体と魂の完全な調和が必要だと悟る。


 アルティスは、王配として、愛と献身を込めて、セレネアの太陽の光を受け入れ、セレネアも、女王として、彼の影に身を委ねるのだった。


 二人の体は、光と影の奔流に包まれ、黄金と銀の粒が、互いの肌を滑るように流れた。


 セレネアの白金の髪とアルティスの銀色の髪は、一つの光輪を形成し、魂の記憶が互いの内に流れ込む。


 アルティスの孤独、幼少からの「不吉な存在」としての苦悩、そして彼女を影から守り続けた、純粋で激しい愛の記憶が、彼女の魂に深く刻み込まれた。


 セレネアの真の純粋さ、「お飾り」の重圧、そして彼に向けられた、迷いのない、熱い恋慕の感情が、彼の魂を満たした。


 二人の魔力は、もはや対立する性質を失い、「一つの完全な力」となったのだった。


 アルティスの月魔法は、セレネアの太陽の光を増幅し、安定させる、絶対的な盾となり、セレネアの太陽魔法は、アルティスの影を温め、祝福する、真の希望の光となった。


「始祖返り」の儀式は、愛の成就と共に完了した。二人は、太古の始祖の力を手に入れ、王国の真の王権を継承したのだ。

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