第十四章:影の守護と誓約の探求
「月の森」の奥の隠れ家で、アルティスは「影の騎士」として、これまでの抑制が嘘のように、セレネアを過剰なまでに守り始めました。
警戒体制の徹底:隠れ家の周囲に二重、三重の影の魔力による結界を張り、一睡もせずに夜通し監視を続ける(セレネアが寝静まった後、こっそり彼女の白金の髪に触れて魔力と体温を確認する)。
危険の排除:逃避行の準備中、セレネアが少しでも重い荷物を持とうとすると、「私の太陽に、そのような重労働は不要です」と即座に遮り、全て自身の影の魔力で運ぶ。
食事の監視:セレネアが口にするもの全てを、月魔法で毒見し、安全を徹底的に確認する。
体温管理:夜の森の冷気に備え、セレネアの周囲の空気だけを影の魔力で温め、彼女が寒がる隙を一切与えない。
(アルティスは、私を**『お飾り』ではなく『道具』として扱っていた時よりも、よほど過保護だわ。でも……この過剰なまでの守護が、私への愛の証明**なのね)
この過保護さは、セレネアにとっては愛の言葉であり、二人の関係をさらに親密なものにするのだった。
二人は、ユリウス王子の追跡が本格化する前に、「双律の誓約」の謎を解くことが、自由と安全を勝ち取る唯一の方法だと知っていた。
隠れ家で、アルティスはノクス家に伝わる古文書の写しと、セレネアはルーメン家に伝わる紋章学の知識を突き合わせるのだった。
アルティスは、ノクス家の情報網から得た情報と、古文書を照合し、王家の真の目的を突き止めた。
「セレネア。王家が最も恐れているのは、『始祖返り』です」
「なぜ?」セレネアは、金色の瞳に疑問を浮かべる。
「真の始祖が復活すれば、王家の権威は失われる。王家は、誓約を利用し、君の力を封印すると同時に、私の不吉な魔力を君のそばに置き、君の心を遠ざけ、愛が成就しないよう仕組んでいた」
ユリウス王子の行動は、「太陽の光を独占したい」という個人的な野心だけでなく、「始祖返り」を阻止したい王家の思惑にも沿っていたのだ。
謎が解けたことで、二人の旅の目的が明確になった。
「では、私たちが行くべきは、王家の力が及ばず、誓約を完全に成就させる場所……」
アルティスは、古文書に記された「双律の始祖が眠る、伝説の聖地」を指し示す。
「あそこへ行けば、君の封印は解かれ、私たちの双律の力は完全に融合する。その時、私たちは真の自由を得るでしょう」
この発見は、逃避行ロマンスに「使命」という新たな緊迫感を与えた。二人は、愛の成就と王国の真実を賭け、聖地を目指す旅に出ることを決意するのだった。




