わたしはすっかりヒロインの……に魅了されたのです
お待たせしました。
わたしはアニーにすすめられるまま、ちょんまりとソファに腰を下ろしました。
おお、座り心地は大変よろしいのです。
アニーはやはり見た目より実用面を優先させるタイプのようですな。
やはりヒロインはそこらの女の子とは一味違うのです。
さすが、わたしのヒロイン!
だけど、やっぱりちょっと寒々しいのですよ。
特にあの寝室は。
ここは、このエレナさんが奮起して素敵なクッションやベッドカバーなどをつくってプレゼントするべきでしょう!
手作りなのがキモなのです。
刺繡の授業血まみれ事件から一度もしたことないですが、人間やればできるもんなのですよ、きっと。
エレナさんはあのころよりもだいぶ大人になったですしね、えっへん。
「はい、どうぞ。夕食にしましょう。わたしがつくったのだけど、味は保証するわ」
そう言いながらアニーはテーブルの上に皿とカップを置いてくれました。
「アニーがつくったのですか!」
ヒロインの手料理ゲットなのです! と意気込んでそれを見て、わたしははて、と首を傾げました。
「どうかした?」
「サンドイッチ、なのですね」
「ええ、これなら片手で食べながら書類仕事もできるでしょう? だからよく作るのよ。ああ、もしかして嫌いだった?」
「いえ、大好きなのです。……そこではなく、んー、いえ、うんと、あの、これだけなのですか?」
そこには、チキンを挟んだものと、卵のサンドイッチが二つあるだけです。
パンは普通のものより厚さはありますが、しょせんパン。
あとは紅茶。
ぐるるるる…………。
わたしのおなかも訴えます。
これじゃ、足りない、と。
こう、他にスープとかサラダとか肉とか魚とかデザートとか。
「ああ、ごめんなさい。足りないのね? 小柄だから勝手に少食かと思ってたわ」
「あう、そうなのです。わたし、たくさん食べるのです……」
「はい、じゃあこれも」
トントントン。
サンドイッチの皿が三セット追加されました。
「……ずいぶん作ってあったのですね?」
「ええ。夜食や朝食や昼食にもできるし。食堂へ行くのも時間がもったいないから」
三食プラス夜食までサンドイッチ?
それは栄養偏らないのでしょうか?
わたしはテーブルの上に積み上げられたサンドイッチを眺めました。
……単品増量をして欲しかったわけではないのですが……。
ただ量だけは十分なものになったので、これ以上わがままを言っても仕方ないとわたしはまずはチキンのサンドイッチをぱくりと口にしました。
「!?」
チキンの照り焼き加減が絶妙なのです。
ソースも甘さと辛さがこれ以上にないほどのバランスで。
もきゅもきゅとあっという間にチキンのサンドイッチを平らげると、次は卵です。
「!」
なんてしっとり。
卵とマヨネーズの組み合わせって、こんなにおいしかったのですねと再認識です。
所どころに舌にピリリとくるマスタードも、最高なのです。
むぐむぐもぐもぐむきゅむきゅふにゅふにゅ……。
わたしは一心不乱でサンドイッチを食べ続けました。
やっぱり、ヒロインは最高なのです!
アニーさんは料理上手だったもよう。




