かかった獲物はテンプレでした
エレナさん乙ゲーよりギャルゲーの方がお好みの様子。
寮母さんの部屋を出たわたしは、にんまりと笑みを浮かべました。
そうです。
そうなのですよ。
焦っても悲観的に考えても無駄ですし、駄目なのですよ。
私の心の友と書いて心友が現れるまでは、せいぜい妄想ワールドで楽しむのですよ。
うん、どんな娘がいいですかね。
「エレナちゃん、おっはよ!」
と、朝から元気よく挨拶してくれる少女マンガの典型的な主人公タイプもいいですねー。
「ふふ、本当にエレナさんって、面白いのだから……」
と、口元に手を当てて微笑む大和撫子タイプも捨てがたい。
「たくさんお菓子作ったの。食べてくれる?」
と、料理上手な母性本能くすぐりまくりなボインなお姉さん属性もアリですな。
「ふ、ふん。別にあんたの為を想ってのことなんかじゃないんだから!」
と、腕を組みつつそっぽを向くけどこっちの様子が気になってチラチラ見てくるツンデレタイプもおいしいですし。
「もう! こんなに面倒ばかり焼かせないで。きちんとなさい、きちんと!」
と、叱りつけてくるような委員長タイプも友人としては頼もしいですよ。
「ああ、面倒事はわたしにまかせな!」
と、姉御系も良いですなー。
「ふわあ、よくわかんないけど、よかったねえ」
と、いう天然ぽやぽやもそれはそれで、うん。
「……ずっと見てたの。わたし以外と仲良くしてたら……、くす」
と、呪ってきそうなヤンデレさんはちょっと無理かもです。傍から見てるだけならオッケーなんですけど、対象自分はちときつい。
でも、うん、こう考えてみると、わたし基本どんなタイプでもオッケーですな。
ヤンデレさんも軽度なら、可!
わたしはいつでもウエルカムなのです。
どんとこないのですよ、マイベストフレンド!
などと考えながら、自室へ戻るため寮の廊下を歩いていたわたしに。
「ちょっとよろしいかしら、エレナ・クラウン」
と、後ろから声がかかったのですよ。
こ、これは、もしや!
まさかの。
捕獲チャーンス!
声のトーンと話しかけられ方から察するに、これはお嬢様系ですな!
まあ不思議ではないですが。
基本ここはお嬢様を集めてる学校なのですし。
ふー、とわたしは息を吐き、ぐっと心を落ち着けました。
失敗は許されません。
やっとかかった獲物なのです。
では、いざ勝負!
わたしは笑顔でくるりと振り返った。
「はい、もちろんです! 何の御用でしょ……」
うか、と続けようとして、私は思わずかたまりました。
そこに立っていたのは。
金髪ロールで。
深いサファイヤの輝きを持つ瞳はキリッと吊り上っていて。
スラリとした鼻のライン。
薄い唇は綺麗な口角を描き。
その美貌は他者を圧倒するような威圧感。
そう、まるでその姿はまるで。
テ、テンプレ悪役令嬢きたのですよ――――――――!
ではまた次回よろしくお願い致します。




