エレナ・クラウン、十四歳です
エレナさん、成長しました。
花も恥じらうお年頃。
こんにちは、エレナ・クラウンです。
わたし、十四歳になる年になったので学校へ行くことになりました。
ジェレミーとラスティーも一緒です。
ニールは一年早く学校に行っていたですよ。
ニールはわたし達より一年年長者ですからね。
何ごともなければ五年は通うことになる学校ですよ。
わくわくどきどきが止まりません!
夢と希望と期待でいっぱいなのですよ。
それにやっと会えるのですね、わたしのヒロイン!
夢にまで見た、わたしの最高の美少女!
可愛くて、美しくて、綺麗で、可憐で、儚くて、華奢で、麗しくて、心が美しくて、繊細で、それでいて芯が強く、時に大胆で、優しくて、明るくて、思い遣りがあって、優雅で、透き通るような肌の、絹のようにサラサラの髪の、鈴を転がすような声で、頭がよくて、知性があって、機転がきいて、身のこなしも軽く、ダンスはパーフェクトで、音楽の才もあって、絵を描かせれば画家並みにうまく、ドレスの選択は最先端で……エトセトラエトセトラ。
そんなわたしのリアルヒロインに!
「姉様、そんな妄言言ってないで準備をしないと。間に合わなくなっちゃうよ」
「はうっ、わたし口に出してましたか!」
「うん、全部。だけど昔から思ってたけど、何その超人少女。姉様の理想? なりたい自分? 求める友達像? どっちにしてもそんなのあり得ないから、無理だから」
「いえ! 彼女は実在するのですよ! これから行く学校にいるはずなのです! 会ったらびっくり、きっとジェレミーも惚れてしまうこと間違いなしなのです!」
「はいはい、惚れるは別にしても本当に実在してたらびっくりはするだろうね。それより、姉様。準備準備。ニール兄様が迎えに来るのは明日だよ。それまでには準備終わらせとかないと」
「は、はいなのです」
「あと姉様、その喋り方、学校行ったら気をつけてね」
「あ、そうでした。気をつけます」
「うん、姉様が侮られるのは僕らは良しとしないから。でもその姉様の喋り方可愛いから、僕の前では今まで通りでいいけどね?」
「むー、ジェレミー。義姉をからかうのではないのですよ。とんだプレイボーイになってしまったのですね、義姉はかなしいのです」
「心外だな。僕がこういうこと言うのは姉様にだけだよ」
むーとわたしが膨れると、今ではわたしよりだいぶ背が高くなったジェレミーがわたしの髪に触れながら笑った。
エレナさん、成長……?
いや、中身ほとんどそのままでした。
ただ外見は成長してますよ。だって子供の約十年は大きいです。




