あの彼女は誰なのですか
お待たせ致しました。
ふと視線を横にずらすと、よく見覚えのある後ろ姿が目に入りました。
ちょっと距離はありますが、あれは。
「ラスティ、もいたんですね」
わたしの言葉に、ジェレミーも後ろを振り返り、ああ、と頷きました。
「そうだね、あいつも今日打ち合わせだったんだ」
「打ち合わせ? ですか?」
「うん、ダンスパーティーの。姉様がレニーとパートナーを組んだからね。あの馬鹿、灰になったようでまともに機能してなかったけど、今回のダンスパーティーは課題ということもあるし、参加しませんというわけにもいかないしね。結局候補者を自分で決められなかった人同士で組み合わされたらしいけど。お相手は……、シルリー子爵令嬢だよ」
ほう。
シルリー子爵令嬢とな。
……うーん、イマイチ記憶にありませんなあ。
わたしはまじまじとそのシルリー子爵令嬢を見てみました。
視線は俯きがちで、距離もあるのでよく見えませんが、小柄で可愛らしい感じの子なのです。
ウサギさんとか、そんなイメージ?
何か、アニーとは別タイプの乙ゲーのヒロインタイプ、ですかね。
ほら、よくあるではないですか。
ヒロイン設定が地味で普通と銘打っているやつ。
でも実際は地味で普通ではなくて、普通に可愛いのですよ。
確かにアニーのような清楚な美人さんとかフィル様のようなゴージャス美女さんとかではないですがね。
こう、小動物的可愛らしさとか。
これで普通とか言うなら、じゃあそれ以下の容姿は不細工? または地球外生物とでもいいたいのですか、とか突っ込みたくなるような。
「…………気になる?」
黙ったままシルリー子爵令嬢をガン見していたわたしに、ジェレミーは覗き込むようにしてそう尋ねてきました。
はっ!
ち、違うのです!
わたしは別に、こちらが正統派ヒロインかなとか、大衆向けヒロインかなとか、王道的ヒロインかなとか思っていたわけではなく!
「勘違いしないで欲しいのです! わたしのヒロインは何て言ってもやっぱりアニーで決まりなのですよ! 決して浮気心などおこしてはいないのです!」
「……うん。何のことだかよくわからないけど、姉様が相変わらず残念なことだけはよくわかったよ」
む? 残念とは何のことですかな?
お義姉ちゃんを残念呼ばわりとは、何事なのですか。
「……安心した」
聞き捨てならないと問い詰めようと思ったのですが、ジェレミーがとても良い笑顔で笑ったので、わたしはまあいいかと笑い返したのでした。
次回もお願い致します。




