レニー・カーティス視点
お待たせ致しました。
理解不能な双子の姉のアニー。
その思考・行動まったく予測も予想もできない。
いつの間にかやることなすことがすべて人間離れしていた優秀すぎるほど優秀な僕の片割れ。
そんな姉は、長いこと誰にも何事にも特別な関心など持たないでいるようだった。
ただひたすら落ちぶれかけていたカーティス家の再興と、そのついでのように僕への指導にのみ没頭していたそんな彼女が、最近興味を示している人達がいる。
いずれもこの国の中心にいるような人物達。
王子や公爵・侯爵・伯爵の子女達。
そしてその中心にあるのが、エレナ・クラウン。
誰もが一目置き、仕えているレフィル殿下以外は一顧だにしない、あの孤高のニール・エルハランが誰の目にも明らかなほど大事にしている伯爵令嬢。
……彼は少し姉に近いものを感じて苦手に感じているのだが。
姉の興味も、彼女中心に向けられているように思える。
彼女なら、幼い頃からずっと僕の胸のうちにあるモヤモヤしたものに、回答をくれるのだろうか……。
あの、姉は何なのか。
どうしてあんな、化け物染みた存在になったのか。
その姉に特別視される君は何なのか。
君という存在は姉にとってどういう意味を持つのか。
君にとってアニーはどういう存在なのか。
君は、何か知っているのか。
僕は、その答えが欲しい。
エレナ・クラウン。
君は、その答えを持っているのだろうか。
もし持っているのであれば、どうしてもそれを知りたい。
知ったら、何かが変わるだろうか。
この焦りのような、苛立ちのような、不安なような、わけのわからない感情から抜け出せるだろうか。
抜け出せたら、何かが変わるのだろうか。
わからない。
わからないからこそ、どうか。
答えて欲しい。
教えて欲しい。
この、僕に。
どうか。
そんな衝動に突き動かされるように、思い切って声をかけたのだが……。
「……………………アニーはわたしのとってもとっても大切な親友なのですよ。わたしはアニーが大大大大大大大大大大大っっっっっっ好き! なのです!!!」
エレナの回答は期待していたようなものとは方向違いなもので、ものすごい情熱が入ったもので、しかも結局何を言っているのかわからないもので返ってきた。
思わずその勢いに押され反応できずにいた僕だったが、こちらをきょとんとして見ているエレナにハッと我に返った。
「……ええと、一言でまとめてもらうと?」
「ヒロインなのです!」
…………。
「……ええと、ヒロインとは?」
「ヒロインはヒロインなのです!」
……………………。
どうしよう。
アニーとは別の意味でこの子と会話が成り立つ気がしない。
エレナさんとの付き合いに必要なものはスルー技術です。またレニーは気づいていませんが(気づけるはずがない)、アニーの関心は転生発覚後は生存戦略その一点のみ、でした。




