表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界ハーフの仕立て士見習いですが、なぜか若君の胃袋を掴んだようです  作者: 相内 充希
本編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

71/89

第71話 SS 第52話戦闘と第53話日本の間 テイバー視点

日本に二人を移動させ、まずは菜々の手当てをするテイバー。

ウィルはその辺に放置です(男だし、無傷だし、自分だし)。

 頭の中がぐらぐらと揺れる。体が引きちぎれそうに痛い。

 ネアーガが外に出ようとしてるのだろうか。

 今日は封印が安定しない。


「菜々……」

 タオルを水で濡らし、丁寧に彼女の血をぬぐっていく。

 見る見るうちにレシュールにやられた傷はふさがっていくが、それでもかなりの出血で顔が青白い。

 タオルを何度も洗い直し、丁寧に傷をキレイに拭っていく。

「ごめんな。すぐに助けられなくて」

 体の痛みより、胸の痛みが強い。


 菜々の顔にまで傷がついている。

 僕はその傷に口づけ、額に口づけ、最後に唇に口づけ、もう一度彼女の名前を呼んだ。

 穏やかに眠っている顔が、少し幼くてかわいらしい。

「僕を見て」

 彼女は僕を見ることが出来ない。この気持ちを自覚して以来、一度だって彼女が僕の姿を見たことはない。でもウィルをこちらに連れてくることが出来た今なら、多分……

「うっ!」


 一瞬タキに戻り、もう一度テイバーに戻る。

 荒く息をついたあと、深呼吸をした。

 この子を守ること以外では、僕は人の手で菜々に触れることはほぼできないのだ。


「ウィル」

 側に倒れたままの半身、ウィルフレッドに呼びかけたが、全く反応がない。

 日本のほうが暑いから、上着を脱がせて健人のベッドに寝かせ、エアコンをつけた。

 ウィルにも僕にも傷一つないのは、ナナが僕らの盾になったからだ。ちくしょう!


 もう一人の自分とはいえ、今日はこいつに腹が立ってる。

 やっと、やっと想いが通じそうなのに、今朝はなんてことをしやがったんだ。

 菜々を泣かせるなんて、一番したくないことなのに!


 ウィルを覆う呪いの力は、今はない。

 もしあのまま菜々に助けてもらえなかったら、ウィルは消えていたかもしれない。

 そう思うと、無事でよかったこと、でも菜々が犠牲になったこと、そんな諸々のことが頭の中をぐるぐると渦巻く。でも今は、自分の体が不安定で考えがまとまらない。

 気を抜くとあっという間に猫の姿になる。

 体が砕け散りそうだ。


 もうすぐ美鈴が来てくれる。

 そしたら、僕のことは適当にごまかしてもらって向こうで休もう。

 明日。

 そう。明日になったらきっと何もかも打ち明けられるはずだ。


「菜々。愛してるよ」


 もう人の手で君に触れられないことも、僕の言葉を伝えられないことも、全てが限界を超えてるんだ。僕を見て、菜々。


 明日にはきっと、君に直接言えることを信じてる。

二年ぶりにナナの前で人の姿に戻れ、その手で彼女に触れることが叶ったテイバー。

想いが強すぎて、限界ギリギリでした。

次は62話の裏、二人でワンピースを買いに行った時の若君視点です。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ