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それでも彼女は俺のカノジョじゃないわけで。  作者: 遥風 かずら
第七章:鮫浜さんと池谷さん

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94.そして彼女は恋の段階を二つくらい上げたらしい。


 さよりを呼び出して、さよりを俺から奪えなどと指令を出した奴は誰なんだ? 考えても出てこない上に、さよりが予想以上にキレてしまったせいで、このまま学園内に留まるのは危険だった。


 ここはさよりに従って、二人で午後はさぼるしか解決策は無かった。昼休みの時間ギリギリだったが、カバンを手にして出て行っても、気にされることは無かったのは幸いだったかもしれない。


「お、高洲? 帰るの?」


「あ、あぁ、まぁな。適当に言っといてくれ。頼んだぞ、蟹沢」


「おk。奢りヨロ」


 こういう時、そこそこ親交を深めておいたダチがいて良かった。教室にはさよりを入れることが危険だと判断したので、廊下で待ってもらっていたが誰かれ構わず睨んでいたので、清楚な美少女像は消えてしまったかもしれない。


「お、お待たせ」


「遅い! 早く手を出せ!」


「へ? 手?」


「あぁもう! 手と言ったら手! わたくしを引っ張るのが湊の役目! 早く!」


「お、おぉ」


 なるほど。時間と共に元に戻って行くんだな。初期のあの暴力性は、鮫浜がいたからこその態度だったのだろう。それにまだ学園内にいるし、その辺は気を付けているようだ。


 そんなわけで、堂々とさぼり決定である。鮫浜にも浅海にも何も言えずに、学園を後にした。直後に俺の携帯は自己主張をしていたが、怖くて見ることが出来なかった。後でじっくり見るので許してください。


「湊ぉ……おんぶ」


「え? お前、あれ? さっきまでの狂暴性はどこへ?」


 学園を出た途端、我に返ったのかあるいは、俺と二人だけになったせいか、さよりの甘え度合いがレベルアップしていた。昼休みを終えたらしいチャイムが聞こえる中、俺たちは外へと歩き出した。


 それは良かったが、昼間から制服姿の俺たちは目立ちまくりである。それもおんぶとか言い訳しづらい。


「湊の部屋に行きたい」


「お前、それはさすがに……」


「お願い……ぐすっ湊、湊……ううっ――」


「さより、お前……」


 そうか、やはりそうか。そりゃあ泣くよな。あのキスは間違いなくさよりにとってのファーストキスだった。俺と何度もしたなんて嘘を吐きまくって、おまけに初期のさよりに戻っていたけどそうじゃなかった。


 恐らく、賢いさよりのことだ。あの場で弱さを浮間に見せれば、そのままどうでもよくなって浮間の強引さに頷いていたかもしれない。それを切り抜けるために、自分の悪い部分を晒したのだろう。俺はコイツの初期を知っているからこそだったが、浮間の奴は心底がっかりしていたからある意味で成功だ。


 浮間の奴をさぼりから呼び出して、さよりを呼び出すとか誰なのかは分からないが、俺とさよりの関係をよく思っていない奴の仕業だろう。そうなると候補としては鮫浜になるわけだが……いくら闇天使でもそんな面倒なことまでするのかどうかが謎だ。鮫浜なら直接手を下しそうだしな。


 それにしても泣きながら俺の背中で寝息を立てているさよりなわけだが、浮間の野郎は気になることを言っていた。俺は庶民で間違いが無いが、さよりは金の山のお嬢様なんじゃ無かったのか? 担任の紹介もされていたくらいのお嬢様のはずなのに、浮間の奴は偽とか言っていたのが気になった。


「……んん、好き」


 俺の背中恐るべし。泣いていた女子を一瞬にして眠らせるとか、最強ですね分かります。寝言で告白されても微妙だけど、何となくコイツの気持ちは理解している。俺も決めなきゃ行けないんだろうな。


 だが、さよりとそうなるにしても確かめたいことがあるし、鮫浜とはハッキリさせておく必要がある。鮫浜の家族も見たことが無ければ、挨拶もしたことがない。それに浅海を護衛にしているとか、それはよほどの家柄ということが予想出来る。出来るけど、あんなに人を使うのに慣れてる辺りが何とも分からないことばかりだ。


「ほら、着いたぞ。さより」


「部屋。部屋に連れていって」


「分かったよ、部屋な」


 幸いにして親は家にいない時間だ。まぁ、いたとしてもさよりは親公認の仲だから、あれこれと言って来ないと思うが、さぼりはさすがにマズイだろう。


「ほれ、俺の部屋だぞ。さすがに降りてくれ」


「ベッド、ベッドに降ろして……」


「何だ、まだ寝足りないのかよ。仕方ない奴だな」


「うううっ、バカッ……何で顔を背けるの?」


「それは……」


「わぁぁぁぁ……! ううっ……どうしてあんな男にひどい、ひどいよ――」


 さよりは俺のベッドに降ろされたと同時に、悲しみに溢れた喉を振り絞って声を上げて泣き続けた。これにはさすがに立ち尽くすしか出来なかった。しかも自分のベッドにさよりが思いきり涙をダムのごとく、流しまくっている状況にどうすることも出来なかった。


 これはもう子供のそれと似ていたので、思いきり泣かせるしかなかった。まして、顔は俺の布団に埋めている状態。しばらく放置するしかないだろう。


「ぐずっ……ぐすっ……うぅっ――」


「さより、落ち着いたか?」


「湊……キスして――」


「……え」

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