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それでも彼女は俺のカノジョじゃないわけで。  作者: 遥風 かずら
第七章:鮫浜さんと池谷さん

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90.鮫浜は男子をモブ化させられるらしい件。


 これはハーレム? 否、さよりはともかく、鮫浜はよく分からない感情をお持ちだからそうと言い切れないと思われる。しかし周りの奴らはそうは思わないわけで、朝の登校時はクラス連中の、特に野郎どもはショックを覚えていた。中には泣き出す奴までいたし、俺に睨みを利かす奴もいたことはいた。まぁ、その後ソイツは浅海の笑顔で大人しくなっていたけど。浅海も鮫浜側の人間であると分かった以上、想像に難くない。


 さよりはというと、教室まではくっついてきたものの、鮫浜のように堂々とは腕を絡められずにさっさと自分の席へと進んでしまった。クラスの中では鮫浜は恐れられているが、さよりは避けられている存在。それだけに分が悪すぎた。見かねた俺はさよりに声をかけてやろうとした。だが、鮫浜は俺を離してはくれなかった。


「さよ――」

「私から離れる? 離れたらどうなると思う?」

「分からないけど、今日は何でそんな感じに? いつもは我関せず状態だろ。鮫浜らしくないな」

「そう……かな? 放課後にまた会えると思ったら浮かれたのかも……?」


 相変わらず突発的に動く彼女に少しだけ、ほんの少しだけ苦手意識が再び芽生えてしまう。そしてこういう時に分かってしまったのが、放っておけないのは間違いなくさよりの方であると俺自身が分かった。あれだけ甘えてくる彼女には優しくしてやりたい、放っておきたくない。そんな気持ちが俺には生まれていた。


 ただし、さよりは几帳面かつ規律に厳しい。厳しすぎる所がどうにも理解出来ない。逆に鮫浜はそういう所に口うるさいことがなく放置状態だ。ただし鮫浜は略。好きになってもそういう両極端な部分があるのが、俺の決断を鈍らせてしまっている。


 あのさよりが俺を好きと言ってくれているのは素直に嬉しい。だけど、鮫浜のことをよく知らないままの自分が駄目だと感じてさえいる。これだけ二人の美少女が俺に攻勢をかけてきているにも拘らずにだ。優柔不断と言えばそれまでだが、どうにもどちらの美少女にも何かの引っ掛かりがあって踏み込んでいけない。


「高洲、モテモテだなー」


「いや、非モテだ。色々言われるけど、どっちとも俺の彼女じゃないぞ」

 

 教室に入った直後はザワザワしていて落ち着かなかったが、ホームルームを終えるとすぐに落ち着きを見せた。鮫浜とのことに関しては一部を除いて、何だまた高洲か。などと陰口を言われただけだった。さよりに関してはそもそもクラスの野郎どもは、さよりに話しかけられる勇気を持った奴がいないこともあり、至って平和そのものだ。何せさよりにとってのお楽しみは俺のバイト先に来ることであって、学園で会うことじゃないからである。


「そういや、あいつは今頃どこに高飛びを? ダチなら知ってるだろ? 貝塚」


「んー……実は海外には行ってない。舟渡はなんつうか、身動きが取れない場所にいる。俺からはそれしか言えない。ごめん」


「何だ、引きこもりか? 鮫浜に触れてしまったことで何かの毒性に中てられてしまったのかな?」


「今なんて言った?」


「舟渡の奴、俺のバイト先で鮫浜に触れたんだよな。そこから謎の失踪を……」


「そ、そうか。そういうことか……高洲、鮫浜にはあまり深入りするなよ? いくら好かれていても……」


「ん? 何で? 確かに闇と病みが強い子だけど、悪い子じゃないぞ。それとも俺の知らない鮫浜を知ってたりするのか? だったら教えて――」

「――高洲君」


 うおっ? 真後ろから鮫浜が現れた! というか、いつもよりも声が低いから寒気がやばいぞ。貝塚はすぐに俺から離れていたから、今の会話は聞かれていなかったはず。そう思っていたのに、貝塚の姿が徐々にモブ化になっていた。そういうことも出来るのか、鮫浜は。


「ど、どうした?」


「私の何を知りたい? 全て知る?」


「もしかして他の奴とうわさ話っぽいことをしてたから怒ってるのか?」


「違う」


「え? というか、舟渡ってイケメンのことを何か知ってたりする? 舟渡は嫌な奴だったけど、バイト仲間になる予定だったし気になるんだよ。代わりに鮫浜が入って来たのは嬉しいけど、アイツの代わりに鮫浜がバイトしてるんだとしたら、何かごめん」


「何故キミが謝る?」


「まぁ、俺が情けなさ過ぎて鮫浜の肩に手を触れさせてしまったし、あの時のアイツの凄みに何も言えなかったわけだしさ。それで鮫浜がアイツのことを店長か何かにクレーム入れて来れなくしたんだろ? それだと何となくお店に悪いって思って、バイトすることにした。どうよ? 違う?」


「……クスッ。高洲君はいい子だね。私のことを疑わない……探ろうともしない。だからキミを選んだ。私を知ったうえで、私を選んでくれるならキミは守る。守るからね?」


「へ? 疑うも何も知らないしな。いつも鮫浜から俺に近づいて来てるわけだし、俺が近づいて深入りしてもいいならそうするけど、いい……のかな?」


「そう……だね。その一部は今日のバイトの時に見せてあげる。それを見て、さよりもキミもこれからの付き合いを決めていいよ。私もさよりも、高洲君が思い描くような彼女になれるか分からない……分からないよ」


 鮫浜のこの感覚には覚えがある。創立記念日ということで俺を迎えに来て、別人のようにふるまって意外な姿を見せた時に似ている。その時、見事に二人きりだったわけだが……その答えでも教えてくれるのかな?


 それにしてもたかだか休み時間の一コマなのに、貝塚がモブ化しかけていたのは驚いた。俺は鮫浜を怖いと思っていてもそこまでじゃないわけだが、恐怖がピークを越えすぎるとモブ化するなんて中々怖いな。


「――昼はさよりに譲ってあげる……」


「お、おぉ、ありがとう?」


 微笑の鮫浜はいつもよりも迫力がある気がするが、気のせいだろう。そんな呑気なことを思いながら授業に集中することにした。



脱字修正しました。

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