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それでも彼女は俺のカノジョじゃないわけで。  作者: 遥風 かずら
第六章:美少女と日常

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83.A.S……お前もか? いえ、お前だなんてイワナイヨー。 前編


 何だか平和とは程遠くなってきたのは気のせいなのか。季節的にはもうすぐ秋が見えてきそうなのに、そして冬が来てしまえば、一年なんてよく分かんないままに過ぎ去ってしまいそうになる。とはいうものの、俺のファミレスバイトは改装オープンしてからまだそれほど経ってはいない。彼女たちにとって邪魔なイケメンが姿をくらましたくらいであって、ほんの数日が経過したに過ぎない。


 岬先輩から聞かされていたのは、浮間の穴を埋めてくれる週二の美少女が入ってくれるということらしいが、もしやそれはほたると名がつく女子なのではないかと、気が気じゃない。しずの友人? である彼女は見た目こそツインテなロリっ娘だが、中身は数ある女子たちの中でもっとも会いたくない悪女だった。彼女であって欲しくない。そう思いながら、まさに水曜である今日から週二の美少女が入って来るらしい。


 放課後になり、バイトに直行するとすでに彼女は来ていたらしく、いつになくスタッフ同士で騒めき合っているようだった。美少女……もうそれだけで普通は心がウキウキになるはずなのに、さよりで耐性がついてしまったこともあり、あまりワクワクしない。まさに平常心のままで、賑やかすぎる事務室兼休憩室に突入した。


「――えっ?」


「あ、これで揃ったね。高洲君がお待ちかねの美少女だよ。ほら、彼女に自己紹介をして」


「え、あ、う……」


「んん? あまりに可愛いから言葉にならないとか? でも君ってすでに指名の美少女を相手してるのに、それでも緊張するものなのかな?」


「い、いえ、えと……僕は、高洲たかすみなとです。は、初めてかもしれなくもないですけど、ホールの先輩として何でも教えますので、お手柔らかにお願いします……」


「クスッ……()()()()()高洲センパイ。私のことは、あゆと呼んでくださいね?」


 ええええ? 鮫浜だよな? こんなまともに見たの初めてかもなんだけど? いつも見ているようで、密かにまともに全身隈なく見ているわけでもなかったし、恐れ多すぎたってのもあったのに……何この可愛い子。というか、話し方もまるで違うし、雰囲気も闇じゃない。いくつ人格持ってるんだ、この子。


「それじゃあ、高洲君に張り付いてもらおうかな。この子、鮫浜さんは働くのが初めてみたいだしね」


「わ、分かりました」


 そういや、しずはどういう表情を……と思っていたら、石化していた。それもそうか、イトコなのに怖れをなしている彼女が働きに来るだなんて、まさに寝耳に水。姉御肌のあの口調は影をひそめてしまうのか。


「それでは、よろしくお願いしますね、高洲センパイ?」


「は、はい」


 週二の美少女がロリっ娘じゃなくて良かったが、まさか鮫浜とか聞いてないぞ。まぁ、彼女自身も話しかけても来ないわけだが。でも、ここにいる鮫浜は、まるで別人だ。嘘だろ、惚れてしまうぞ。現に、他の男子スタッフは鮫浜の見た目やら態度に虜である。まさに天使。それこそ俺が一番初めに印象を抱いた天使そのものだ。それは好きになっても仕方ない。


「高洲センパイ、私に手取り足取り……全身で教えてくださいね? 何なら、私のカラダを全て差し上げても……」


「いやっ、あの……そんな全身も使わないので、だ、大丈夫です」


 彼女の息遣い、仕草、視線……全てが俺を夢中にさせている。まさに石化。動けないぞ。月曜じゃないから助かってはいるが、水曜と木曜の俺は耐えられるのか? あゆちゃん、キミのことがもっと知りたい。

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